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ナナシのトヒ 〜ナチュラビスト〜  作者: 大地アキ
2章 統一政府(1)

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22/201

第22話 統一政府の門

街道を進むにつれ、その威容はますます大きくなった。

大地に根を張る巨壁、統一政府の都を守る外壁だ。

高さは山岳に迫り、古代の遺跡を思わせる重厚な石材で築かれている。

壁面には無数の文様と刻印が施され、それぞれが「ルーン石」を象徴していた。


門前には長い行列ができていた。

リーフラ族の商人、空族の伝令、海族の輸送隊。

そしてその隙間には、首輪をつけたトヒの姿も混じっている。

荷物を背負い、呻き声を漏らしながら歩くその姿は――人であった痕跡を残しながら、もはや言葉を持たぬ存在だった。


ノラは思わず足を止め、拳を震わせた。

「……これが、“中央の現実”か」


クロが隣で静かに答える。

「秩序だ。誰も逆らわない。だから戦は起きない。

 ……俺も長くここにいた。そうして保たれる“平和”を、嫌というほど見てきた」


ノラは視線を外し、空を仰ぐ。

巨大な壁の上には、翼を広げた空族の兵が見張り、鋭い眼差しで往来を監視していた。

門の両脇には、リーフラ族の巨兵が槍を構え、威圧的に立っている。


やがて、二人の前に門番が現れた。

鎧を纏ったリーフラ族の兵。

その目は鋭く、威厳をもって問いかける。


「名と目的を」


クロが一歩前に出る。

「司法警察本部所属、クロ。任務のため統一政府への入都を申請する」


門番は目を細め、クロの胸の徽章を確認した。

「……確かに。同行者は?」


クロはノラに視線を向けた。

「猫族の戦士、ノラ。退役軍人であり、現・遺物研究者だ」


門番の目がわずかに鋭さを増す。

「……遺物研究者、か。中央では無用な探りを入れるなよ」


ノラは無言で頷いた。

だが胸の奥では――(必ず探る。ここに答えがあるはずだ)と誓っていた。


やがて門がゆっくりと開く。

石と鉄が軋む重低音が響き、光の筋が街の中から溢れ出す。


その先に広がるのは、ナナシ世界の中枢。

統一政府の都、すべての種族と歴史が交わる場所だった。

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