第21話 中央への道
ヤマトを後にしたノラとクロは、西へと続く街道を歩んでいた。
遠くには連なる山脈、その向こうに広がるのは――統一政府の都、中央。
街道には多種多様な影があった。
荷車を引くリーフラ族の農夫。
空を飛び交う空族の伝令。
湖から引き揚げた物資を運ぶ海族の一団。
それぞれが中央へと向かい、この世界の“心臓部”に吸い寄せられるように集まっていた。
クロが歩きながら、懐かしむように呟いた。
「……やはり中央は特別だ。
俺は長くあの地で過ごしたが、あそこにはすべての種族の目と耳が集まる。
栄光を夢見る者も、恐れに囚われる者も、皆、中央を頼らざるを得ない」
ノラは周囲を眺め、眉をひそめる。
「……だからこそ、どの目も同じに見える。
中央を恐れ、同時に縋っている」
街道脇には、柵に繋がれたトヒの姿もあった。
リーフラ族の従者に連れられ、荷を背負って黙々と歩く。
その瞳は虚ろで、夢も言葉も感じられなかった。
ノラの胸にざわめきが走る。
(……これが、“平和の代償”なのか)
クロはその視線に気づき、静かに言った。
「ノラ、秩序は美しいものじゃない。
俺は中央で、それを嫌というほど見てきた。
だが……それでも秩序がなければ、この大陸はもう一度崩れる」
ノラは黙って頷いた。だが心の奥では――
(それでも、答えを探さなきゃならない)
と噛みしめていた。
やがて、地平線の向こうに巨大な影が現れた。
城塞のような高い壁、そして天を突く尖塔。
それは統一政府の都――中央大陸の中心都市。
風が二人の頬を撫でる。
旅の新たな舞台が、そこに待ち受けていた。




