第20話 中央への道標
ヤマトに到着し、街の灯がちらほらと点り始めていた。
工場の煙突からは火花が散り、遠くで職人たちの槌音が響いている。
ノラは一人、紹介所の前に立っていた。
掲示板には新たな依頼が貼り出されている。
その中に、目を引く一文があった。
――「統一政府への納品依頼」
――「報告先:中央議事堂」
ノラは低く呟いた。
「……結局、行くことになるんだな。中央へ」
背後から足音。
振り向くと、クロがいた。制服の上着を肩に掛け、疲れを隠さない顔をしていノラに問う。
「決めたのか」
「決めたさ。シロの死の真実を知るために……そしてトヒの答えを探すために」
ノラは曇りなく答えた。
クロはしばし無言でノラを見つめた。
二人の間には、まだ埋まらぬ溝があった。
だが、その奥にある“同じ目的”を否定することはできない。
「……ならば俺も行く。司法警察の任務として、そして……弟として」
ノラは頷き、西の空へ視線を向けた。
ヤマトの外れから伸びる街道。
その先に広がるのは、大陸中央に位置する
統一政府の本拠地でナナシの中枢。
「クロ。俺たちの道は交わらないかもしれない。
けど……同じ答えに辿り着けると信じたい」
クロは短く笑みを浮かべ、肩を並べた。
「答えが何であろうと、俺は最後まで見届ける」
夜空には満月が浮かび、街道を淡く照らしていた。
二人の影は並び、西へと伸びていく。
統一戦争から十年。
再び世界が揺らぎ始めるその時代に、二つの信念を抱えた旅人が歩み出した。
その先に待つのは、統一政府。
そして、さらに深まる真実と影だった。




