それでも季節は廻っている!
さらに半年後、何故か、久方ぶりに休みを与えられた。というかどうやら使用人なども含めてあらゆる人が屋敷から遠ざけられたようだ。
「粗茶です。」
「有難い」
「ありがとなぁ、姉ちゃん!」
「久々に時間がもらえると何をすればいいのか悩むなぁ…」
それ故に奴隷であるデイダラさんやピーター氏は住む家も何もあの屋敷に住み込みの奴隷なので俺とジェシカさんの住む倉庫に遊びに来ることになった。というか一ヶ月近く屋敷をほぼ無人にしろというお達しなので居候である。
とりあえず適当にでも彼らの寝られる寝床を作成するために1日使っておが屑や乾いた草を天日に干して木枠に詰め、大きな布で覆うというかなりざっくりとした寝床を作ったが、意外と気に入ってもらえたみたいで、一月だが本格的に斧術や体術を教えてもらえる事になった。
そして時間があるということは、つまり、魔石と魔法の研究の再開が出来るということ、というかほんと冬になってから人間全員放り出すとか何考えているんだろうか?
ひどく乾燥し肌寒い空は病的な青さで彩られ、太陽は紫外線やらなんやらを遠慮なく叩きつけてきている。最近知ったが一応暦はあるらしく。十六ヶ月で一巡、それぞれ水、土、火、風で四ヶ月毎、前世で言えば春夏秋冬なのだが、この世界では大気の流れや星の回転、恒星との距離など問題で春秋夏冬とかなり極端になっている。
というかそう置き換えると変なだけで肌寒く湿潤な期間があり、そこから動植物の豊かな陽気が起こり、その陽気が乾いた熱に変わり、熱はいつしか引き始め乾燥した草木を残し徐々に肌寒く。しかし吹く風がいつしか湿潤な雲を運んでくる…という感じに季節は回っている。属性や魔力がある関係上その力が強くなる季節がありその季節に発生する生物などもいて作物や家畜もきちんと育つ。不思議なように見えて意外ときちんと世界は回っているのだ。
それらを踏まえて今日から日付をつけるとすれば…
風の月、初期
というのが今の季節の表し方となる。
一応数値的な表し方もあるが、そちらは建築学や天文学などを王宮が抑えているために研究者が希少で閏日が多くなるので面倒なのだ。というか前世のマヤとか、そこらへんがおかしいだけで暦というのは元来凄まじく高度な数学と天文学、いわゆる数秘術の叡智の結晶だ。今では占いとかに使われているが、これを作った人々はまじめに暦を作成するために心血を注いできたのだ。感謝せねばな!
ちなみに天文学や建築学を王宮が抑えているのは天文学と算術が出会うだけで観測と正確な作図によって戦略的に重要な地図などが不特定の人物に作られるのを防ぐため、建築学は簡単な数学と経験則によるものならば職人技で片がつくのだが、物理学と出会うだけで重心や中心、重要な柱などを割り出され城塞や城を簡易な爆発物や土魔法などで簡単に壊されかねないからである。
まぁ、それでもある程度は民草に知られている以上、この国もいつの日か共和国になるのか…それとも賢者を血祭りにあげ、書物を焼く野蛮な集団になるのか、それは未だ見たこともないこの国の王の采配によるだろう。
それでだ。とりあえず俺は赤子の期間をかけて漸く感じられるようになってきた魔力と更にそこから一年かけて漸く蛇口を捻るように入出力や濃淡を変えられるようになった魔力操作を使い、再び魔石の研究を始めた。
勿論、斧術や体術もきちんと習っているし、座学もジェシカさんや元上位冒険者のデイダラさん、森で生き森と共にあらんとしてきたピーター氏の三人からビシバシ叩き込まれているが、それでも俺はこの魔石というものに魅力と微かな予感を感じているのだ。
何故そんな予感を感じているのか、それは一重にあの時の出来事、あの一瞬の現象、あの時ヒトデを切り裂いた非実体の魔石の刃、アレである。
ジェシカさんは気絶していたので知らないが、少なくともその後の爆発については証言してもらっている。
いや、というよりはそれは当たり前のように最初に習った魔石の使い方の一つ。自爆だった。そう、あの時ヒトデを切り裂いた後俺は魔力の流れを乱したというより元どおりにしようとして目の前が真っ白になるような爆発を起こしたのだ。
だが実際の爆発はそんな規模のものではなく。せいぜい俺の魔力障壁が粉砕され、身体中に傷ができた程度、実際の俺の魔力で魔力暴走が起こればジェシカさんも巻き込んでここがグラウンドゼロになることもありえたのだ。俺はその時、どうしようとしていたのかを確認してみた。
地下室はこの小屋の中で最も頑丈な部分であり、最高峰の土魔法が生み出す最高密度の石材を使用した実験場だ。この前ここに逃げ込まなかったのは、一重に上部が破壊されると生き埋めになる可能性があったのと、ここを見つけたのが床に空いた穴を修理する時だったからである。
…まぁ、うん、有り体に言って半年かちょっと少ないかくらいしか過ごしてなかったので意外と大きいこの小屋の全てなど知らなかったのだ。知っている風に言い訳してみたが、実際最近見つけた場所なのである。
それで、だ。俺はあの時魔石に金平糖化、魔力過充填をしようとした。その為に魔力を魔石の中に流し込んでいた。この時魔石一つ一つの癖を感じながらゆっくりと染み込ませるようにしていた。
その隙にあのクソヒトデが飛んできたかと思うと…俺は手を伸ばすのと連動して魔力をうっかりまっすぐに、直線に魔石の中の構造や魔力の流れる道筋をガン無視して後先考えず流し込んでしまったのだ。
それを人為的に起こせば…
「っく!」
出来た!半実体の魔石のヤイバ、どうやら金平糖化するのと同じように魔石内部で魔力が様々な方向に反射する時にできるトゲトゲと同じ構造だが、その方向を無理やり一方向に絞っている為にヤイバのように尖り、しかも凄まじい勢いで魔力が失われるし、少しでも魔力操作に迷いが出れば今にも爆発しそうだ。
「っ!」
不味い!
そう思った次の瞬間、魔石はパラパラと砂のようになってしまい、俺はあまりに大量の魔力、体感的に言えば半分ほどを一気に放出したせいでクラクラする頭を抑える羽目になった。




