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無能の烙印を押された俺はバニー先輩の夢を見ない


半年ほどたち、温暖な気候ながら乾燥した。いわゆる冬のような時期がまた来た。

赤子の頃は気温の変化が身を刺すようだったが、幼児になって少しは皮膚が厚くなったのか、それとも魔力障壁などのせいなのか、不思議と気温変化を感じずらかった。


日中の殆どを魔力充填、伐採、薪割り、フレイアール邸での奴隷労働に当てざる得なくなった俺はそれでも自らを高め、俺を生み出した彼らの元から逃げ出さんと努力することをやめなかった。

たとえそれが彼女の筋書きの上だろうと、ガラフの鼻さえあかせればそれでいいと、ひとまずそう思うしかなかった。

俺には時間がない、そして時は容赦なく流れて行くものだ。魔石や魔法についての考察やさまざまなこの世界、貴族や国の知識で彩られた日誌をこのような雑記、日記めいた愚痴を書くのに使うにはなかなか心が痛んだが、これを読むのも読めるのも俺だけだ。法則性も何もなく。ただただ日本語、英語、ドイツ語、共通語、大陸北方語、少なくとも6個のさまざまな国や異世界の言語を文法入れ替えまくって書いているのだ。ちなみに一番多いのは日本語と英語と共通語である。


共通語はこの大陸内でのみ通じるかなり大雑把な意味での公用語、前世における英語のような立ち位置の言語である。


まぁ、記憶喪失にでもならない限り、もしくは試験やテストなんていう世界に飛び込まない限りこんな教科書的な表記はいらないだろうが、後々というのはわからないものだ。



でだ。俺は最近デイダラさんに斧術を、もう1人だけしか無いがウサギの獣人であるピーター(男)(腹筋バキバキ筋肉モリモリのナイスガイ)(うさ耳の生えたニイサン)(…なぜ、なぜ女の子じゃ無いんだァァァ!)に、体術を教えてもらっている。

対価は酒、勿論自作の密造品だ。

図鑑や標本などから得た知識、というとあれだがいわゆる山菜、山の幸を備え付けの実験器具で蒸留した酒に浸けて砂糖を少々とこれまたそこらへんからとってきたハーブなどを突っ込んだエセ果実酒である。

ちなみに中身はヤマモモに似ているがかなり大ぶりなアカモ、桑の実に似ているが軽く火を通さないと毒性のあるモギの実、他にも謎の柑橘系植物やミントのような清涼感のあるハーブなどである。ピーターさんは果実酒が好きでデイダラさんは強い酒が好きらしいので作成してみたが、意外と好評だ。

「深く腰を落として、摺り足で歩けば下半身の筋肉がより効率的に鍛えられる。」

「上半身を…意識するのは忘れずにな?」

「うぐぐぐ…」

先ず身体が資本である。幸いにして荷物運びや井戸からの水汲みなど肉体労働には事欠かないため肉体強化を若干弱めながら、しかし骨や成長に負荷がかかるようなレベルまでは下げずに絶妙な魔力の操作という訓練もしながら鍛えてもらう。

この時遅くても速くても屋敷の人に文句めいた小言を言われるので程々に、時たま飛んでくる長兄殿の魔法は障壁でレジストしておきましょうねー?

そんときに母上殿の目が怪しくなるのでさっさと別の業務に…

「待ちなさい?」

「うげ」

移れませんでしたー、一体この100ほどあった距離をどういう風にして音もなく詰めたのか聞きたいことはいろいろあるが、爛々と知的好奇心に輝く彼女の瞳を見るとそちらの方が聞きたいことがあるらしかった。


「なるほどねー、虫を参考に…たしかに生理学的にも物理的にもあなたの肉体でそのキャパシティを超える出力を、無理なく出すには肉体強化だけではなく強化される肉体の外装を作るしか無いのね…構造的には骨のある生物がそれを纏うにはかなりの負荷が…いえ、魔力で非実体、不定形で流動したスライムみたいなものを創りだせば…ええ、ええ!参考になったわ、ふふ!やっぱりあなたは最高ね?本当は虫ではなく魔導鎧みたいなものを想像していたんでしょうけどあえて濁した辺りも好みよ?」

そう言って彼女は去っていき、俺は凄まじく不機嫌そうな長兄の鋭い視線から逃げるように作業にもどった。

結局魔力障壁について色々ゲロらされた。まぁ、実際、俺がやっているこれは身体から漏れ出る魔力をより効率的に、より圧縮して身に纏うようにイメージしながら現実を改変した結果流動性のある魔力に鎧のようなものを纏う感じになっている。漏れ出た魔力がもったいないし、そうしないと動けないのでやっているが、それ故に意図的、つまり魔法的にやるのは非常に燃費が悪いのだ。

より正確にいうならば、俺みたいに明らかに異常な量の魔力を持ち、そのために漏れ出す魔力も膨大な場合でなければ、ワザワザ体内魔力を使って発動せざる得ず。そうであればちゃんと肉体を鍛えて、知識を深め、より深度のある肉体強化をした方が全然生産的なのだ。

「おーい」

「ていうか魔導鎧ってなんだ?資料にもなかったし…最新鋭の軍備か何かか?」

「グラジオラス」

「グラジオラスっ!」

そんなことを考えていると俺は凄まじい業火に包まれることになったが、魔力障壁くんのお陰で簡単にレジストできましたとさ…ってアレ?この前まで母上殿のお腹、膨れてなかったっけ?

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