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雑事雑務


ヒトデ騒動から三日、俺は一日寝込んでしまったもののその翌日からは家の修理やいつも通りの魔力充填に樵、薪割り、それが終われば実験や研究やお勉強など充実した日々を過ごしていた。

…そういえば最近、魔石への魔力注入の他に魔石や井戸から水汲みなどが仕事として割り当てられるようになった。もちろん、フレイアール邸からである。

それもこれも資材確保、主に小屋の修理用品の為である。木材は確保できるが、鋸がヒトデにぶち壊され、釘やトンカチも散々な状態にされてしまった為、流石にやばいと道具の買い出しに行きたい旨を伝えると、アナスタシア様は承認してくれたようで色々と買いあさってくれたみたいなのだが、ガラフにそれを差し押さえられ無償ではなく労働でもって対価を払うことになった。

「いやー、重い重い」

「…普通は、持ち上がるはずもないんだがね?」

まぁ、扱い的には奴隷だが、賃金も出るし、ずっと斧を振り回しているよりも人と関わった方が知識も入る。よく喋るのは一番最初に出会ったアナスタシアさんの所有奴隷であるデイダラさん、彼は元上位冒険者で土属性の魔法を使う。盾と斧が得意で籠手や小楯で攻撃を逸らし、もしくは受け止め両手斧で敵を粉砕するのが基本スタイルだったそうだ。ちなみに今の仕事で得意なのは荷運びと薪割り、うん、見た目通りって感じだ!

だって大男が斧を担いでるんだぜ?樵さんに決まってるんだよなぁ?

「…まだ生まれて1つと半年ほどだろう。今の暮らしに不満はないのか?」

俺が背負っていた甕を厨房裏に下ろし、大きく伸びをして次の仕事に取り掛かろうとすると彼はそんなことを言い始めた。

何事かとその視線の先を見ると高価そうな服に身を包み、父親譲りの茶色い髪を短く切りそろえた少年が魔法の練習をしていた。確か…俺の兄だったような気もするが、あの家族会議にいたということくらいしか印象にない、というか最近よく感じれるようになってきた魔力の大雑把な大きさで彼を見てみても良くて中の中、デイダラさんの方が魔力が大きいし、彼がアナスタシアさんとガラフの間に生まれたのにその程度なことに少し驚いた。

「ええ、別に、好きに研究する時間が減りましたけど、将来を考えればこうして体を鍛えるのも悪くないですし」

デイダラさんにそう返しながら、俺は魔力と属性の遺伝について考えていた。



基本的に魔法貴族は世襲制であり、養子は滅多なことがなければ取らない、何故なら今まで積み重ねてきた血統が、血と口伝によってのみ受け渡されてきた秘された魔法と何より親譲りの高い魔力とより純粋な属性を子が持っているからだ。

故に赤子は大事にされ、魔力が多ければよし、少なくとも純度が高ければよし、前世における品種改良や家畜の交配のように魔法使いは進化してきた。

だがガラフとアナスタシア、主にアナスタシアの方が禁忌を犯した。より正確にいうのならば彼女の家の思想はこの純化思想ともいうべき貴族の規則のその全てに唾をかけるような、より貪欲に、より強力に、より興味と知的好奇心を持って踏み絵を踏み抜いた。

それが反属性の魔力を持つ者との結婚、本来ならば血に流れる穢れ、おそらくは近親相姦などの方法で極めて濃縮された血を薄めるための最悪の手段なのだろうが、彼女の家の目指す至高の魔法使い像はあらゆる属性を操り、無尽の魔力で神の代行を行なったという人類の祖、その再現であるらしい…


ジェシカさんは元々アナスタシアさんの家に使えており実を言うと彼女もまた純粋な土魔法使いではなく。水の属性の混じったに属性持ち、基本的には土の方が強く出るので問題ないが、意識すればどうにか水鉄砲くらいは出せるらしい…いや、そうじゃなくてだ。

ついこのあいだの騒動で色々と可笑しくなっていたというか錯乱していた彼女から隙を見て色々…まぁ、色々聞かせてもらった。本音とか、彼女のもともと仕えていた家の目的とか、なんかもう色々と聞かせてもらった。面白いぞ?ヒトデの死体一つで機密情報までなんでもペラペラしてくれた。…彼女に何か重要なこと教えるのは控えるようにすると心に誓うことになったがね?

でだ。これらの話の通り彼女の家が、血統がそれを作ろうとしていたのであれば問題があるとすれば俺だ。

むしろ俺がかなり問題だ。

なにせ話だけでももうわかったかもしれないが、次男である俺は長兄が火属性を持ったのをいいことに恐らくスペアどころか実験体として作成された。

そう思うのは早計かもしれないし、実際ただの被害妄想かもしれないが、ジェシカさんの話を聞く限り彼女の仕えていた家のメイドや執事、奴隷に至るまでその全員が魔法使いでいう混色、混ざり物、純粋な魔力を持たずに生まれてきた者であったという事、時たま実験のためと血をとられていたという事、聞けば聞くほど出てきた情報をまとめればまとめるほど、整理すれば整理するほどに、つい昨日から俺の頭はこんなことで支配されていた。



俺は…『造られた』のだとっ!

無属性を持つことは想定外だったのかもしれないが、膨大な魔力と全ての属性を備えた神の如きナニカであれと、彼女がどうやったのか知らないし、知りたくもないし、考えうる限りか、それ以上の悍ましい何かが行われ、その末に生まれた『失敗作』であると、そう強く意識せざる得なかった。


少なくとも、俺は長兄が一生懸命に魔力を振り絞り、魔法の練習をしているその姿とそれに寄り添うようにコチラを見てゆるふわなアルカイックスマイルを浮かべて考えを読めない彼女の姿を見て、そう思わざる得なかった。

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