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4.

 出勤して来た騎士団長に、スチュアートは真っ先に報告書を手渡した。

「指示も受けずに勝手に動くとは!お前は何をやっている!?」

「王都の治安を守っておりますよ。子供の様に褒めて欲しいとは言いませんが」

非難される謂れは無い、と言う言葉は省略した。


 本来、騎士団長としては本件の追跡調査は甘くするつもりだったのだろう。第一騎士団長は貴族派閥の力関係でその座に就いた男で、背後の勢力に融通する事を求められる立場だ。


「取り調べ係には朝一で取り調べを始める様に依頼済ですが、何か追加のご指示があれば私から伝えますが」

「それは組織として検討する!都内警ら担当のお前が口を出す問題では無い!」

「犯人の殆どは拘束しております。これで背後関係が分からない様では、第一騎士団の沽券に関わりますな」

「だから、もうお前の手は離れたと言っている!四の五の言うな!」

「了解しました」


(まあ、モントローズ家の次男が占い師に興味を持っていると知らしめただけでも牽制になるか…)


 王弟であるモントローズ公は金儲けばかり考える拝金貴族達を毛嫌いしていた。貴族と言うのはあたえられた権限で政治を行う者である。その本分は自分の領域で忠勤を尽くす事で国家の繁栄・継続に寄与する事である。それが自分の父や兄である国王であっても、国に仇なす者は普通に批判する男だ。その息子が占い師周りの不正に関心がある…と知らしめたところで、これ以上何かをする義理も無い筈だった。


 占い師は午前中は王都近郊の孤児院で過ごし、午後一に近所の女性に夕飯の支度の指示をした後に王都に入る。午後3時頃に助手の少女を伴い占い師の館に着くと、扉に背もたれた騎士が待っていた。


「昨晩、ここを襲った賊がいた。ほぼ全員拘束した」

「それはありがとうございます」


「男達は一旦逃げたが、全員、誰かに付けられた切り傷から体内に入った痺れ薬で動けなくなっていたよ」

「それは周到な事ですね」


「君には毒の知識があるのか?」

「何の力もなく、占い師の真似事をやっているだけの女にその様な知識がある筈がないでしょう?」

「闇に潜み、闇を駆ける賊を切り刻める者は、相当な手練れと思うが?」

「か弱き女にその様な力がある筈がないでしょう」


「まあ、良い。今後は困った事があれば相談に乗ろう。私は第一騎士団のスチュアート・モントローズだ」

「占い師のナイトジャーと申します」


 スチュアートの見るところ、この情報を初めて聞いたにしては、占い師の口元に変化がなかった。同様に彼女の纏う魔力にも、感情の揺らぎに基づく揺らぎは無かった。そもそも、既存の権力に抗うには、ただの少女には無理だった。


(その真意がどこにあるのか、もう少し見てみる必要がある)

スチュアートはそう判断した。自身は自分の左脳でそう判断したつもりだった。

 と言う事で、明日からの中編に続きます。ナイトジャー、はヨタカの事です。いわゆる夜鷹の意味はないです。一方、ヨタカのことをナイトホークとも言いますが、こちらは夜遊びをする人の意味があります。


 お暇な時にでも、続きをお楽しみいただければ幸いです。

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