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2話 魔女と要塞都市

ラヴェルナたちを乗せた馬車は、キャロスダンド領の関所前に無事辿り着いた。


サイラスの手を借りて、ラヴェルナは優雅な足取りでタラップを降りる。


「ありがとうございます」


ラヴェルナはサイラスに微笑みかけた。


「いえ」


目を伏せながら、サイラスは短く返す。


「サイラス様!」


呼びかけに、二人は同時に視線を向けた。

一人の検問官が、小走りで駆け寄ってくる。


「お待ちしておりました」


「ああ」


「正午前に来られると伺っていたのですが……道中、何かございましたか?」


すでに空は夕陽色に染まっていた。


「いや、問題ない」


「左様でございますか。それは安心致しました」


検問官は胸を撫で下ろした。


「では、こちらへ」


促されるまま、検問を済ませる。




   ―――   ―――




「――ここからは、歩いて参りますわ」


驚く一同を尻目に、ラヴェルナは淀みない足取りで門をくぐる。


「ラヴェルナ様、馬車で向かいましょう」


サイラスはラヴェルナの横に並びながら、静かな声で諌めた。


「いえ、歩きますわ」


ラヴェルナは前を向いたまま、きっぱりと応える。


「……しかし」


尚も食い下がるサイラス。

二人の後ろに付いていたカルロッタが、小さく息をつく。


「言っても無駄です」


それが日常茶飯事なのだろう。カルロッタは諦めたようにそう告げた。


「……」


言葉を失うサイラスだったが、次の瞬間には意を決したように歩調をラヴェルナに合わせる。


「まぁ…」


門を完全に抜け、ラヴェルナは感嘆の声を漏らした。


真っ先に目に入ったのは、高台にそびえ立つ城だった。

小さな尖塔を備えた石造りの建物。

さながら修道院のような、厳かな雰囲気を漂わせている。


「あれが、キャロスダンドの城です」


「素敵ですわね!」


サイラスの言葉に、ラヴェルナは手を合わせて、弾んだ声を上げた。


「……いえ、ただ古いだけです」


城を見上げながら、サイラスはぽつりと呟く。

その微かな声は、カンカン、と銅鑼(どら)を打つような金属音にかき消された。


「あら」


その音に引かれ、ラヴェルナは門近くの店先に歩み寄る。


店の奥では、職人が炉の前に立ち、(つち)を振り上げては、赤く熱された鉄を打ち据えていた。

火花が散り、鈍い音が辺りに響く。

ラヴェルナは興味深そうに、その光景をじっと見つめる。


「キャロスダンド領は鉱業が盛んです。ですので、鉄の加工が主な産業となっております」


「なるほど。金鉱山もありますものね」


ラヴェルナは、王城の広間に広がる絢爛たる装飾を思い出した。


「はい」


ルクチェコード王国は、周辺国に『西の黄金郷』と呼ばれるほど、金鉱山に恵まれている。

中でもキャロスダンド家の領地に、その多くが集中していた。

それゆえに、隣国から常に狙われている。


ラヴェルナたちは城に向かうため、大通りを進んでいた。

夕空は次第に夜の帳が下り、店々に明かりが灯り始める。

ちょうど仕事を終えた坑夫たちで、通りはたちまち騒がしいほどの賑わいを見せた。

彼らは吸い込まれるように酒場へと入っていく。


サイラスはラヴェルナよりわずかに前へと歩み出るように、歩調を速めた。

自然とラヴェルナは、その背に隠れる形となる。


「ふふ……」


その背を見つめ、ラヴェルナは微笑みを深めた。



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