第21話『光と闇の評議会』
王都の評議会の場は、緊張に包まれていた。ランダ村からやってきた灯りの旅団──晃志、エミリア、村の子どもたち──が壇上に立つ。対する商会側も、肩に威厳を込めた代表を送り込んでいた。
議長が槌を打ち、「ではまず、ランダ村側から発言を開始してください」と宣言した。
子ども代表の一人が声を震わせながら話す。
「村の川で遊んでいたら、水が濁り、魚が減りました。茶の木も枯れて、提灯の火も消えそうでした。お願いです、ランダ村の灯りを絶やさないでください」
子どもたちの眼差しは真剣だった。小さな手が、畳に並んだ“語る提灯”のひとつをぎゅっと握った。
次に晃志が静かに前へ進む。
「文化とは、土地に根ざす命です。技術とは、自然に寄り添うもの。提灯も茶も和紙も、全部この地と生きてきたけんあの光を灯せるんです」
晃志の言葉が議場に深く響く。その声は穏やかだが、揺るがない意志を持っていた。
商会の代表が立ち上がり、声を荒げる。
「この地には鉱脈が眠っています! 採掘すれば王国の経済は活性化し、村にも富がもたらされます。文化と発展は両立できるはずです」
だが、評議員の一人が手を上げた。
「ですが商会は、ランダ村の水質汚染、職人工房の焼失の真相は明らかになっていません。経済とはいったい、何でしょうか?」
議場にざわめきが起きる。商会代表は眉根を寄せる。
「それは……事故に過ぎず、我々の管理下にある。補償もいたします」
しかし、晃志が背筋を伸ばす。
「技術が生むのは、光だけじゃありません。力には責任がついて回ります。過去に何が起きたか、村人にも、皆さんにも知って欲しかです」
評議員たちの表情が揺れる。そこに、城門前で集まった民衆の声が届く。市民たちは提灯を手に掲げながら、こう叫んでいた。
「ランダ村の灯りを守れ!」
「文化と自然を奪うな!」
その声は、城の壁を越え、評議員たちに届いていった。
一方、議会内部では文化保護派の貴族や役人たちが水面下で協力し始めていた。「これは文化弾圧だ」「伝統を守るべき時だ」と議題を強く支持する動きが活発になっている。
議長が最後の発言を促す。
晃志は提灯の淡い火を見つめながら、こう言った。
「闇に飲まれる光があるなら、私はその灯りになりたい。誰かの心に、小さくとも火を灯す。それが技術の本当の役目です」
場内に静かな拍手が起きる。一度とどまっていた空気は、確かな変化を迎えていた。
その日、評議会は結論を翌日に持ち越すことを決定した。商会も、村も、王都も、すべてが暗闇と光の狭間にあった。
晃志と旅団は、提灯を抱えながら王都の夜道を歩いた。その火は小さいが、確かに民衆の支持と共に揺れていた。
「私達の灯りが、道を照らし始めたね」
エミリアがささやき、子どもたちがうなずく。
明朝、新たな光が評議会を導こうとしていた。




