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四話「嫁と姑! ガブリエルママ対ピピ!」

ある休日の朝。

おばけ達は今日も今日とて自由奔放。

トランプで七並べをしたり、ぷかぷかと浮いたり、

線香を勝手に焚いて香りを食べたりとやりたい放題。


「…………」


一方のあゆむは、このように死んだ魚のような目で、

テーブルに突っ伏していました。

おばけ達の勝手気ままに呆れてる? いいえ、違います。

その理由は他でもありません。ガブリエルママです。


今彼女は、ベージュのセーターに黒いロングスカートという出で立ちで、

銀色の髪はお下げにし、

ハローは黒メガネに変えてかけています。


どうやらこれがガブリエルママのイメージする、

家庭での完璧ママ像なようです。


その姿だけ見れば、家庭的で優しそう、まさしく理想に近いママ像ですが、

あゆむは、ガブリエルという天使がどういう天使か知っています。


彼女はウリエル様が呆れるほど、超が1ダースほど付く親バカです。

この姿とて、トリエルにいい姿を見せたくてとった擬態に過ぎず、

彼女の心はトリエルにしかありません。


そんなガブリエルママはつかつかと、ゆっくり窓際まで歩くと……


スゥ……「フッ」


指で窓の埃をすくって息を吹き付ける。

そんなステレオタイプの姑ムーブをかましています。


どうやらガブリエルママは、

これまでトリエルと暮らしていたピピが……というよりは、

トリエルから慕われていた全てが、

小憎たらしくて仕方がないようです。


トリエルの愛情が自分以外に向くのが我慢ならないのでしょう。

くどいようですが、一柱の天使としての名誉のために申し上げますと、

彼女はトリエルさえ関わらなければ、

真面目で責任感が強い立派な天使様です。


伊達に序列三位の大天使様ではありません。

しかし、愛は盲目と言います。


彼女の場合、その盲目度合いが馬鹿でかいのです。

それこそ、マンモス級に。


「ピピさん、なんです? この窓の埃は。

 これでは可愛いトリエルが、病気になってしまうではないですか」


ガブリエルママは虫けらを見る目でピピを蔑みますが、

これで負けるピピではありません。


彼女はその言葉に超反応で最適な言葉を演算し、

ガブリエルママに反撃を開始します。


「お言葉ですが、わたくしはトリエルさんの従者ではなく、

 この人の守護霊(怨霊)ですので……気になるならどうぞご自分で」


口調こそ丁寧ですが、その目は同じく虫けらを見る目です。

あゆむの首に手を回すと、堂々と頬に唇を寄せます。


どうやら怒りで羞恥心が小さくなっているようです。

しかしガブリエルママも黙ってはいません。


「まあいやらしい……子供の見ている前で……

 まさか……肌を触れ合ったりなどしていませんね?」


ピピは拳を強く握り抗議しますが、

心当たりがありすぎて声に力がありません。


なにせピピにとってあゆむはこの世の全て。

あゆむの全てを独占したくて仕方がないのです。

隙さえあればイチャイチャしたい! イチャイチャしたーい!


声にこそ出しませんが、ピピの思考回路は今や単純明快なのです。

そういう意味ではガブリエルママとある意味似たもの同士であると、

そう言えなくもないでしょう。


要するに、極振り同士なんです。好感度の。

ピピの場合はそれが病み、ガブリエルママはバカに、そういうことです。


けれども、ガブリエルママの言葉は

ピピにとっては耳が痛い……まるで見られているようで気恥しいのです。


これにはガブリエルママは勝ち誇った表情を浮かべます。


「いつもベタベタしようとして、みんなに邪魔されてるよー」

トリエルが後ろから撃ってきました。


「夜もモゾモゾしてるよー」とアッチもケラケラと適当に続きます。


「汚らわしい……このまま浄化しましょうか……!!」


ガブリエルママは風の剣を取り出しますが、

トリエルにむーっと睨まれてそれを下げます。


「ダメだよー! ピピいないと困るもん」


トリエルの可愛いその抗議に、

ガブリエルママ、手のひらドリルです。ギュイィィィン!


「そうねー! 困っちゃうわねー! 

 優しいトリエル、ママ大好き!! ちゅっちゅ」ほっぺにちゅっちゅ!


「…………」


ピピのジト目が光りますが、これにガブリエルママは即反応。


「なんですか? 言いたいことでもあるのですか?」

「まるで小姑ですね……」


二人はバチバチを火花を散らし……


カーン!


「まあまあ……天使に対する礼も知らぬとは……

 日本の霊の程度がしれますねえ。生前もきっと汚らわしい女だったのでしょうね」


まずはガブリエルママが軽いジャブをかまします。シュッシュ!


カーン!


「人間に限らず天使も、長く生きるとシワだけでなく、

 性格まで歪むものなのですね……ああ怖い」


ここでピピのフックが入ります。ズドン!


カーン!


「滅ぼしますよ? 小娘霊」

「貴女の『可愛い』トリエルが困ると言ったばかりですよ?

 ボケたのですか? 年増天使」


ガブリエルママのストレートを、

ピピはクロスカウンターで撃墜します。バーン!


(スチャ)


「おおーーーっと!? ここで両者にらみ合い!!

 ガブリエル選手からは風が舞い、ピピ選手からはヤンデレオーラが出てるぞ!!

 これは一触即発かー!?」


「実況なんぞすんな! アンポンタン!!」


あゆむのツッコミも虚しく空を切り、

二人のやり取りにアッチが面白がって実況開始!


ポンポとタンタがポップコーンとコーラを売ってますね。

周囲のおばけ達は面白がって賭けをはじめました。


ああ、コーラ売り切れましたね。


…………


ポカ!


おっと、ここでトリエルがガブリエルママにチョップを入れましたね。

あゆむもピピの肩を抱いて止めに入ります。


「ケンカするなら、ガブリエルママのこと嫌いになるよ!!」

「ピピがいなくなったら、悲しいからやめてくれ」


あゆむのその言葉を聞いて、ピピはすぐ冷静さを取り戻し、

顔を赤らめてあゆむに抱きつきますが……

問題はガブリエルママの方でした。


…………


「ふええええ!!! ヤダヤダヤダヤダ!!! 嫌いやだー!!」

と、子供のように座り込んで大号泣!


「ふえええええん!!! 嫌いやだーーーーー!!! ヤダーーーーー!!!」


両手を顔に当ててわんわん泣く姿は、とても大人の天使には見えません。


「じゃあもうケンカしない?」

「しないしない!! ママケンカしない!!」


「ホントにしない?」

「しないしない!! ホントのホント!!」


これにはポカーン。どうやらガブリエルママの親バカ天使っぷりは、

あゆむの想像の遥か上をいくようです。

これではどちらが親なのかわかりません。


「ママもうケンカしないから、仲直りのちゅっちゅしよー!」


そういうとガブリエルママは

口をアヒル口にして、トリエルにちゅーを要求しています。


仕方ないのでトリエルは、ガブリエルママのほっぺにちゅーをすると、

ガブリエルママ大喜びです!


「もうトリエルちゃん大好き!! ちゅっちゅ!!」


…………


「なるほど、これはトリエルが自由奔放になるわけだ」


あゆむは現状のトリエルの破壊神っぷりは、

間違いなくガブリエルママのせいだと、そう確信するのでした。


ひとまずこの場は収まりましたが、問題はまだまだ続きます……


――――


次はお昼の時間です。


「おっひるーおっひるー!!」


トリエルはルンルンモードでテーブル前の椅子に腰掛け、

両手で箸を持って催促します。

ここまではよくある光景なのですが…


「今日はうどんを作りま……」


ガッ!!


ガブリエルママはそのうどんを

トンビの如くピューっとかっさらうと、姑温度チェーック!!


ピピピピピピピ……チーン!! 90度!!


「熱い!! これでは可愛い可愛いトリエルが火傷します!! なんてことを!!」


ガブリエルママはピピを睨みますが、ケンカしないと言った手前、

舌の根が乾く前にそれを破るわけにもいかず、グッと我慢。


その代わりメガネを外してハロー出現!

天使の権能でうどんを急速で冷まします。


「さあ、トリエルー、ママがフーフーして冷ましてあげましたからねー?」

そう、ニコニコ顔でうどんをどーん!


トリエルはズルズルと食べますが……


「ちゅめたい!」と一言。


これにはガブリエルママガーン!


「そんな! ママはトリエルのためを思って……」

ガブリエルママはしょんぼりとしますが、それを見たピピは……


「……フッ!!!」と虫けらを見るような目でガブリエルママを眺めるのでした。


しかし、これで負けるガブリエルママではありません……


――――


おやつの時間の時です。

トリエルは好物のポテチとコーラでキメてる最中……

おばけ達もお線香に寄って香りを食べています。


人目はない!!


ピピはあゆむにすり寄ると、

どら焼きを差し出し「あーーーーーん……」と甘々モード。


あゆむは久々の甘々ピピにあーーーんで返しどら焼きを堪能。

その様子にピピも熱くなったのか「どら焼きの香りをヒミにください……」

そんな甘い囁きで顔を近づけるのですが……


ズイっとガブリエルママがタンタのお尻をピピの口に……

ぶちゅー!


「イヤーン!」


「……フッ!!!!」

早速蔑み返しを決めてきます。


「おのれ、茄子霊!!」

怒ったピピは怨霊(ヤンデレ)モードでタンタをぶん投げますが……

壁にぶつかりポーン! ポンポが跳ね返ったタンタをキーーック!!


タンタは勢いを増して、あゆむの後頭部にズツーッキ!!


「ぐぎゃ!?」


あゆむは顔からどてーん!!

そこをアッチが爆速カウントを取り……


「321!! カンカンカーン!!」

アンポンタンはクスクスとあゆむの頭を踏み踏み。


「貴様らいい加減にせえーーー!!! ここは俺の家じゃあああ!!!!」


怒ったあゆむはポンポをアッチに投げつけますが、

アッチがぐにーんと伸びて、ポンポをパチンコのようにビューーーン!!


あゆむの顔面にガキーン!!

あゆむは後ろからばたーん!!


「……おのれ……必ず始末(強制地獄送りに)してくれるわ……」


……ガク。

あゆむはそうして気を失うのでしたとさ。

あー! スッキリしたー!


――――


その日の夜のことです。


「さあ、トリエルー! ママとお風呂に入りましょうねー!」


ガブリエルママはニコニコでトリエルをお風呂に誘い、

トリエルも「入るー!」とバンザイで返事をします。


これだけなら本当の母娘のようで実に微笑ましい光景です。


浴室からはカポポーンという音が聞こえ、

ジャボジャボとトリエルが遊ぶ音も聞こえてきます。


え? 浴室を映せ?

それが出来りゃわけねーわ! んなもん、こっちが見てーわ!

……失礼しました。


さて、あゆむはソファでくつろぐと、

ピピはお線香でおばけ達を釣り……あゆむの隣へ。


「……鬼もトリエル様もいない今のうちに……」


ピピがまたしても甘々モードに突入します。

ピピはあゆむの肩にもたれ掛かると唇をあゆむの唇へ……触れる寸前の時でした。


ドゴーーーン!!!


突如お風呂から轟音が鳴り響くと、

そこから大量のアヒルちゃんがグアグアグアーと大行進!!


「やりやがった……!!!」


そう……天使の権能発動(いつものショータイム)です。


アヒルちゃん達はゾロゾロと行進するとポピー! と口から温水を発射!

「あちー!!」


これにはおばけ達大興奮! 次々と真似をしてあゆむにプシュー!


あゆむあちー!

おばけ達ケラケラー!

お風呂場からはバカ親が「トリエルすごいすごーい!」


これにはあゆむもカチーン、


「おのれ!! ここは俺の家だと言うとろうにー!!!」


そうアヒルをむんず! と掴みますが……


「えっちー!!」とアヒルが温水発射!!

おばけ達も「スケッチー!!」と悪ノリ!


最後はアンポンタンが……「ワンタッチー!!!」

とピピ顔であゆむをスコーン!!!


あゆむバターン!!


こうして、あゆむの云うところ、

彼らの除霊(しまつ)は今日も果たせず、

夜は更けていくのでした……


「む……無念……ピクピク」


へっ! ざまーみろ! リア充が!



――――


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