一話「落ちてきた天使と同居することになってる件」
【本作の読み方☆】
はーーーーい、本作は語り部小説でーす!
このように、全ての地の文・描写は、
わたくし、スーパーイケメンのナレーターが勝手に語ってまーす!
ナレーターが物語に首を突っ込みながら実況する、
ちょっとメタで遊び心たっぷりなコメディでーす!
コメディパートではこんなノリだよー!
一方、シリアスシーンではこのように、しっとりとお届け致します。
わたくしは、シーンに応じてテンションが変えられるナレーターです。
わたくしの実況を垂れ流しながら、
一緒に遠目で楽しむと没入感があるかと思います。
なお普段のわたくしは高い声のイケボですが、
お好みに合わせて下部の『つまみ』で声のトーンが変更できます。
物語のシーンに応じてナレーターのテンションは上下しますが、
終始、こういうノリで進みます。
それでは本編を――
どうぞお楽しみください。
あ、高評価もお願いしまーす!
……ん?
ナレーターはチビデブハゲのおっさん……
おい!! 原稿に落書きしたやつ誰だ!! 出てこい!!
《笑い声》
桜色の天使には、二つの顔があります。
一つは、神様のカツラに接着剤を塗って落とされた、無邪気な駄天使。
もう一つは――名前も、過去もわからない、誰かの面影。
けれど、ただ一つだけ、どちらの顔も変わらないことがあります。
その『笑み』が、誰かの世界を変えてしまうということです。
――第一話だけど、前回までのあらすじ☆――
《以下男の裏声で》
いっけなーい! 天使天使!
主人公【筒見 歩】19歳は日本某所に住む、ごく普通の男の子!
ある日、仲間と一緒に、噂の廃ホテルへ肝試しに行ったあゆむは、
その途中、天使っぽい女の子と複数のおばけに出会っちゃう!
無我夢中で逃げるけど――
うそー!? 廃墟で出会った女の子が、ソファに座ってポテチを食べてるの!
それでそのまま取り憑かれて、ふざけた共同生活が始まっちゃった!
ちょっと待ってよー!
花も恥らう、うら若き男の子の部屋に、
女の子とおばけが一緒とか、ありえなーい!
これからあゆむの生活、どうなっちゃうのー!?
さらにたーいへーん!
朝食のスクランブルエッグが、三次元的な抵抗を始めて動かないの!
どーゆーことー!?
……ナレーターって、辛いっすね。
そんな目で見ないでよー!
――――
あゆむは激怒した。
目の前の玉子がストライキを起こしたのだ。
必ずや、この憎き玉子を食さねばならぬと思った。
――駄材治『食せあゆむ』より抜粋。
「おのれい! タマゴの分際で……! 人間様に楯突くか!」
爽やかな朝の陽光が差し込む狭い7畳の部屋、
そこに彼――筒見歩19歳は声を大にして叫びます。
黒いガラステーブルには彼の指紋が浮かびあがり、
もしここが事件現場ならば、さぞや鑑識作業がしやすいことでしょう。
いえ、事件現場という大雑把な括りならば、今まさにここは事件現場です。
何故か?
本来ならば、食欲を唆る匂いが漂うはずの朝食タイム。
それが今は、地獄絵図。
原因は――そう、テーブルの上で跳ね回る、
三匹の白いオタマジャクシみたいなヤツら。
ご覧下さい、お客様。
さあ、見えてきたでしょうか、彼ら――通称『白ナスビ』が!
あゆむが後日
『アンポンタン・トリオ』と名付ける、史上最悪の宿敵達でーす!
ナレーションしていて実に愉快……へへっ。
コホン。実に痛快な宿敵ですね!!
「オレはタマゴじゃねえ」
「それはわたしのおタマゴさんだ」
「イヤーン! ばかーん!」
三匹は彼、あゆむの皿の上でピョンピョン跳ねながら、
好き放題に喚き散らしやがります!
料理だったはずのモノが、勝手に『生物』化して、あゆむをからかっています。
味付けもされず、スクランブルエッグが暴れてるだけの構図。
見る分には楽しいですが、彼的には、それはもう、息付く暇もないでしょう。
ですが、ここで終わるあゆむではありません!
朝の楽しみを奪われ、あゆむの怒りは限界突破! 復讐心MAXです!
(おのれい! 俺の飯を!)
腸が煮えくり返るとはこのこととばかりに、あゆむは絶叫します。
「畜生のクソナスめが! どうせなら味付けまでして三途の川まで行けい!」
するとあゆむは食卓塩の瓶を掴み、
「おーっと!? 手が滑ったー!」
と、わざと手が滑ったフリで振りかけます!
けれどもー? 先頭のナスビが仰け反った瞬間、後ろの二匹が連鎖反応。
『びよよ~ん!』と伸びて、あゆむの頭へゴムパッチンのように跳ね返ってきます。
バチーン!!
「ほげっ!?」
あゆむは後ろにすっ転び、尻もちをぺったん。
その隙に、最後のナスビが熱々のスクランブルエッグ。
本当のそれをスプーンで掬い上げました!
「あゆむーん! 食べてーん!」
ナス共は、そんな気持ち悪く甘ったるい声で、あゆむの口内を爆撃します。
あゆむの顔は、普段であれば清潔感のある整ったスポーツ刈りの日本男児ですが、
それが熱で溶けるようなひっどい顔です(笑)
スクランブルの粒があゆむの深緑のミリタリーシャツを汚し、
まるで絵の具をこぼしたかのよう。
(熱い! 熱すぎる! 舌が溶ける!)
「ぐおっ……!」
あゆむがもがいていると、そこに部屋の隅から幼い爆笑が響きます。
「あははっ! みんな楽しいね!」
(俺は楽しくねえ!!)
桜色の髪をなびかせ、
ゴスロリ服にシルクハットをかぶった美少女――トリエル。
神様のお気に入りのカツラに接着剤を塗ってガチギレされ、
空からポイッと落とされた駄天使らしいです。
出会ってからずっと、彼女はこの調子。
彼女が指をパチンと鳴らすと、背中の小さな翼が広がり、
光り輝く『天使の粉』がキラキラと舞います。
すると冷蔵庫が勝手に開き、ケチャップと牛乳がふわふわ飛んできて――
「もー、甘えんぼさんねぇ」などと、変声期のようなふざけた声で喋ります。
(待て、喋るな来るな近寄るな!)
あゆむの願いも虚しく、調味料達は次々とあゆむの口にシュートイン。
「あははっ、おもしろーい! ケチャップが喋ってるよ!」
「ヒャッハー!!」
(どこも面白くねーーーー!!)
「よく噛んで食べてーん!」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
(し、死ぬーーーー!!)
一つの問題が終わったら、始まりに過ぎなかった地獄絵図。
最後はケチャップが、キャップを彼の口内に突っ込んで……
「ゴックン!」と無理やり飲み込ませました。
「あははっ! 面白かったね!」
――まだ笑ってやがる。この駄天使は。
(殴りてえ、この笑顔)
あゆむは床に突っ伏し、震える声で呟きます。
「神様……この天使、今すぐ連れ戻してくれ……」
無駄です。神様は今頃きっとタバコとビールに大忙しでしょう。
そんなことも知らないあゆむが、無駄な祈りを捧げてた――その時です。
――つん、つん。
後ろから肩を突かれます。
(なんだよ……ほっといてくれよ)
そう思いつつも振り返ろうとした瞬間――
ぷにーーーー。
彼の硬いほっぺに、柔らかい指が突き刺さります。
眼前には、深紅の瞳を輝かせ、
桜色の髪をさらりと揺らすトリエルの笑みが広がります。
彼女は頰を桜色に染め、にこり。
その瞬間――
彼の胸の奥で燃えていた怒りが、雪のように溶けていくのです。
(……なんでだ? さっきまで殺意しかなかったのに)
「えへへっ! ビックリしたー?」
陽だまりみたいな笑顔で、彼女はあゆむの顔を覗き込んできます。
桜色のツーサイドアップの髪がふわりとなびき、
その髪色を象徴する香りが彼の頰をくすぐります。
「少しだけ、な……」
あゆむはボソッと答え、視線を逸らします。
(無駄に可愛いのが、余計腹立つんだよ)
「やっぱり笑ってる方がカッコイイよ」
(クソッ……なんで怒れないんだよ。腹は立つのに)
もう一度、彼女はあゆむに微笑みかけます。
その笑みを見た途端、彼の脳裏に一瞬、
別の誰かの顔が重なるような……そんな気がします。
「トリエル……お前、本当に何なんだ?」
あゆむがそう尋ねても、彼女はただ「えへへっ!」と笑うだけです。
まるで、笑顔そのものが『天使としての使命』であるかのようです。
でもその笑顔の奥に、儚げなもう一つの影が過ぎったような……
そんな予感が、彼、あゆむをつつみます。
「あゆむ様」
あゆむがトリエルの中に『誰か』を見ていると、
背後のキッチンから風鈴のような心地よい声が聞こえてきます。
振り返ると、そこには雪のような白い肌に、
透き通った水のような青色の髪を揺らす美女――
正確には『美女霊』――ピピが手招きをします。
「聞いてくれよ、ピピ」
あゆむがピピに愚痴ろうと、後頭部を掻きながらのそのそと歩み寄ると、
ピピは全てを察していたのか、
塩おにぎり二つを皿に盛ってそっと差し出してくれました。
「塩ですから、『ナスビ』は手出しできませんよ」
そう言ってピピは、柔らかな冬のような微笑みをあゆむに差し向けます。
「見てたなら助けてくれよ」
「すみません、つい観戦したくなってしまって」
あゆむの皮肉を、ピピは苦笑いを浮かべつつ流し、
あゆむの手元へ視線を泳がせます。
「いただくよ」
その視線に気付いたあゆむが、おにぎりを一つ手に取り眼前まで持ち上げると、
ピピは安心したように目を細め、
白いワンピースの裾を広げると、シンクで洗い物を済ませます。
(美味いな……)
塩で味付けされただけの質素な白い握り飯、
ですが、それはあゆむの舌を満たします。
(こういうのを、おふくろの味って言うのかな)
ピピは振り返りません。しかし、その横顔は淡い母性を覗かせます。
「……アハァ」
一瞬、ピピの口角が三日月のように上がった気がしましたが、
おそらく、気のせいでしょう。
「何食べてるのー?」
さて、あゆむが戻ってこないから気になったのか、あるいは食べ物センサーか、
ここでトリエルが顔を出し、
残ったおにぎりをまじまじと見つめます。
「食うか?」
あゆむがそれを手に取ると、
トリエルは「うん」とうなずき、両手で受け取ります。
「いただきまーす!」
トリエルはそれを一口で頬張ると、
ハムスターのように頬を膨らませたと思ったら――
『むしゃ』――と、一度だけ噛んで、『ごく』とひと呑み。
「せめて噛めよ……」
「噛んだよ?」
「そういう意味じゃないんだわ……」
(全く、コイツは……)
「えへへ、美味しかったね?」
「まあな……」
(なんで、コイツの笑顔を見ると感情が消えるんだ……)
あゆむはそう、心の中で呟きます。
その答えに、彼が辿り着くのは――まだ、ずっと先の話です。
――――
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