外界からの脅威 5
シャルチフ会長は迷う事なく、突き刺したレヴァレ・ケルムの破片で空間を切り始める。まるでカッターで紙を切っていくように。
「神誕計画においてうまく行かなかったのは肉体と脳の強度、耐性だ。体内へと入れたエネルギーに耐え切れず死ぬか、耐えても脳が正常な思考出来ず発狂するかの二択だった。だが、アナトを用いた実験で大きく私の理論は進んだ!今、俺の足元には外界に満ちる莫大なエネルギーが溢れている!」
そう叫んだ瞬間、レヴァレ・ケルムの破片を中心に世界が崩壊し、部屋全体が漆黒へと変化する。それは決して脳の錯覚や、幻などではない。この世界に穴が空いてしまったのだ。
空いた場所からは凄まじい熱風が吹き荒れる。それはまるで部屋の熱気が冷たい外の空間へ出ていくように、真空だった空間に空気が一気に流れ込むように、外界に満ちる未知のエネルギーが溢れようとしている。
まずい。
そう判断した二人は捕まえるべき標的であるシャルチフ会長を置いて、走り出す。何も話し合ったわけでもないのに、同時に二人は逃げ出していた。まさに動物の本能、咄嗟の行動であった。
今すぐこの場から離れなければ……!
早くこの部屋から出なければ……!
そうして廊下へと出て、それでも足を止めることなく、逃げ続ける。
部屋にたった一人残ったシャルチフ会長は流れ出す外界エネルギーを魔法陣を通して魔力へと変換。どんどん体内へと流し込んでいく。シャルチフ会長の魔力量もまたどんどん膨れ上がっていく。それは普段の数倍、数十倍へと。
(このまま肉体を外界へと接続し、エネルギーを補充し続ける!そうすれば、ダイモンを越え、神と同等の力を得られるだろう!)
そして、得られたエネルギーを用いてすぐさま肉体の治癒を同時に行い始める。細胞を活性化。すぐさま分裂を行い、傷口を塞ぎ始める。赤血球や鉄分もまたすぐに生成され、体内をすさまじい勢いで循環していく。浅くなっていた呼吸も落ち着いた呼吸に戻っていく。
口の中に残った嫌な鉄の味をぺっ!と唾と共に吐き出す。
さらに、肉体に大きな変化が起き始める。
(このままではこのエネルギーに俺の肉体が耐え切れないのは明らかだ。故に、得られたアナトに肉体情報を元に、俺の肉体情報、遺伝子情報を書き換える!クククッ、あともう少しで我々の悲願は成される!暴走するアナトすら倒し、俺が神として──)
その時だった。
「……ッ!!」
何か、得体の知れないナニカが体の中へと入っていく。それは決して実体のあるものではない。しかしそれは確実に、シャルチフ会長の精神を蝕んでいく。
「誰だ……俺の肉体を…奪おうとしてる奴はッ!!!」
そう言いながら、彼はうずくまる。
これはアナトのような肉体の暴走ではない。明らかに第三者によるモノ。




