狂気 4
突然のこともあり、その少年が何者なのか。二人は分からなかった。二、三秒経ち、脳の中の記憶からようやく引っ張り出し、思い出す。
魔術師の恰好をした、少年。それは、トーゼツが魔獣から救い出した冒険者パーティの一人。
「お前はエルドか!?」
トーゼツもまた、こんな所で再開出来たことに驚きの声を上げる。
自分のことを覚えていてくれたこと。そして思い出してくれたことに喜び、「はい、そうです!」と満面の笑みをするエルドであった。
「久しぶり……って感じでもないな。あの街から去って一か月もないし」
「そうですね。まぁ、刃の厄災侵攻に、厄災から出る狂気の影響で多くの魔物が暴れたり、僕の仲間も死にかけたり、色んなことがありましたからね。とっても遠い昔のように感じますよね!」
再びトーゼツに会えたことに、とても嬉しそうにしている。
やはり、彼から見ればトーゼツは信頼出来る冒険者で、命の恩人であり、『職』を与えられなかったという不幸の中、足掻き、剣聖にも認められるほどの実力を持つ者。つまりは最も尊敬している冒険者もしくは自分の将来、こうなりたいという姿そのものでもあるのだ。
トーゼツとメユーは旅をしながら冒険者活動しているということは知っていた。だから、あの街から去ってしまった時、もう会えないかもしれないと思っていた。だが、すぐに、こうして会うことが出来たのだ。それが嬉しくないわけがない。
「でも、どうしてここにいるの?私たちはともかく、エルドって旅しながら冒険者活動しているわけじゃなかったでしょ?」
そのように疑問をぶつけるメユー。
「いやぁ、俺も冒険者になった時には特段、旅をしようなんては思ってなかったですよ。でも、厄災の件で自分は仲間すら守れない弱いと思い知らされました。だから、俺もあなたたちみたいに強くなろうと思って一人で旅に出たんです!」
口にして言うのは誰でも簡単だ。だけど、実行する、一歩踏み出す、少しで前進しようとすることが出来ない人間も存在する。
彼のその決意にあふれた顔、強くなると覚悟した声。彼がやりたいこと、成らなければならない事を見つけ、少しでも理想の自分へと進み始めたのだと二人は感じ取る。
「いわゆる武者修行ってことね?」
「そうです!」
「だったら、今後も旅の道中、何処かで会えるかもしれないな」
「だと良いですね!その時は、強くなった自分も見てほしいです!」
そのように会話している最中、トーゼツはレーデルに訪れた目的を思い出し、エルドに質問する。
「そういえば、お前はこの街を訪れてどれくらいだ?」
「えーっと、三日前にここに来ましたね。でも、街も小さいし、依頼の量も少ないのである程度、旅の資金とか、飲み水、食料なんかを準備出来次第には出ようと思ってるんですけど」
「んー、じゃあ分からないかもしれないけど、死神の鎌みたいな武器を持った男を見たことはないか?俺たちは今、ソイツを探しているんだが」
トーゼツの言葉に対し、エルドの反応は悪く、「申し訳ないですが、会った記憶はないですね」と役に立てなかったことでしょんぼりする。
「しかし、何故、そんな人物を探しているんですか?何かの依頼?」
そう聞いてくるその時、「トーゼツさん、メユーさん!書類の確認が終わりましたので、カウンターの方へと来てください!」と受付の呼ぶ声がギルド内へと響く。
「おっと、話はあとで。それに話を聞かれた無駄な混乱を生むかもしれないからな。続きは別の場所で話そうか」
そういって、トーゼツとメユーの二人は受付のカウンターへと向かい、エルドは二人がギルドの外で出てくるのを待っているのであった。




