湖畔会議(5) side:スワン
そういうことか。一連のクリスの不可解な行動の意味を理解する。が、一瞬ひやっとした。体調不良でなくて、よかった。
「皆様もご存知の通り、スクイレル産のベリーは鉄分豊富で、見事なまでの真紅の果実です。私も昔、怪我で出血をした際、よく食べるようにと勧められたのですが、どうにもあの血液に似た果汁が苦手でして……。ですが、今はそのようなことを言っている場合ではありません。どうでしょう、スクイレル国の外交官であるジョルチ殿。持参してはいませんか」
それとなくベリーの特徴を知らせると、ルカン様とマスティフ様が察したように目を細めた。
「も、持っているわけないだろう……!」
「本当かねえ? ベリーくせぇんだがな、さっきから」
否定するジョルチ殿を、逃さないとばかりにマスティフ様が追及する。
ここは畳みかけるべきだろう。そう判断し、私はアレクトールに視線を送り、箱を持ってくるように告げた。
心得たとばかりに円卓に歩み寄ってきた彼から箱を受け取り、私はそれを卓上に置く。
「いただけるベリーがお手元にないようで、残念です。ところで、傷はどれほど深いのでしょうか」
「な……か、関係ないでしょう! まだ出血が止まらなくて、早く帰国したいのだ、こちらは! 下手にごまかさず、さっさと真実を話していただきたいものですな!」
手負いの獣ほどよく吠える。
「失礼しました。ですが、心配しているのです。と、言うのも、実は私共もここへ来る途中、奇襲に遭っていましてね」
「ふ、ふんっ、不利な立場になった途端、被害者になりすます魂胆か! 見え透いた嘘を、よくもぬけぬけと……」
「賊徒は護衛官が仕留めましたが、問題はやつらが乗っていた乗り物です。やつらは、この大陸では存在しないはずの飛竜に乗っていました。飛竜相手の戦闘は、我々としては想定外。そのため、会議内で情報共有し、注意喚起するつもりだったのです」
説明しながら、私は手元の箱を開け、中身を掴んで掲げる。
「飛竜の脚です」
「ほう、禍々しいな」
ルカン様がじっくり見たそうだったので、手渡す。焦げてはいるが、鋭利なままの爪を指先でなぞりながら、彼女は三国の代表者を見やる。
「まさか、おぬしらを奇襲した者も、飛竜に乗っていたのか」
「……え、ええ、そうです」
「飛竜を仕留めることはできなかったが……」
「ほう? では、その怪我は飛竜に?」
「…………い、一瞬のことだったので、はっきりとは……」
仮面と黒髪の設定は、もういいらしい。




