3 「豊かなまま絶滅」しかねない/結婚や子育てをどう考えたら良いのか?
◇現在の日本は「豊かなまま絶滅」しかねない状況
質問者:
しかしながら、世の中は技術革新によって発展・繁栄しているはずなのに人口減少に悩まされるようになっているだなんて皮肉な話ですね……。
筆者:
世の中意外と「満たされた世界」というのは人口増加には繋がらないのかもしれません。
1968年から1972年にかけて、アメリカの動物行動学者ジョン・カルフーンが行った「ユニバース25」と言う実験があります。
この実験は、ネズミにとって外敵もいない「理想的な楽園」を作り出し、食料や水、住環境が無限に与えられた場合に社会がどう変化するかを観察したものです。
その際に最初8匹のマウスから600日目までには最大2200匹まで増えたものの、その後は行動上の異常が多く発生し、最終的には絶滅してしまったようです。
行動上の異常としては、子離れの前に子を追い出したり、子の負傷の増加、同性愛行動の増加、支配的な雄が縄張りと雌の防衛を維持できなくなる、雌の攻撃的な行動、防衛されることのない個体間攻撃の増加と非支配的な雄の無抵抗化などが起きたそうです。
特に600日以降は雌は繁殖をやめ、同時期の雄は完全に引きこもり、求愛動作、戦闘を行うことはなく、健康のために必要なタスクだけに従事したそうです。
質問者:
なんだか600日目以降は一部の現代の日本人に似ている様相になっていますね……。
筆者:
外敵(特に他生物)から攻撃されないと分かれば同種族同士の争いになると”マウント合戦”になり、それに飽きると自分だけの世界に引きこもるのかもしれませんね。
今の人間社会も先進国であればあるほど、そのような様相になっているものと思われます。
質問者:
確かにSNSでのマウント合戦、保護者同士のマウント合戦、職場での収入のマウント合戦――そのようなことは無限に続きますから一部の人以外はついていけなくなりますよね。
それで多くの方がそれに興味を無くせばマウントを取り合う事すらなくなる……。
筆者:
将来的にはどうなるか分かりませんが、その可能性は十分あると思います。
「ユニバース25」に関してはまた別の視点も僕はあるんですけど、話が逸れるのでここら辺で終わりにしておきます。
◇コスパ思考とミクロの視点
筆者:
そのような破滅的なことにならずとも今現状「結婚」に対してコスパと言う視点で見た際には非常に良くないという評価が若者世代で広がっており、25年のマシェラボと言う調査では49歳以下の未婚男女を対象にした調査では74%が「コスパが悪い」としています。
SNSで失敗が可視化されているという状況も相まって中々踏み込みずらいという事や趣味が多様化していたり、独身だとしても社会的ステータスがあまりマイナスにならないといった要素もあると思います。
質問者:
動画の倍速視聴をはじめとした「コスパ」「タイパ」思考はそう簡単には終わりそうにはならないですよね……。
筆者:
恋愛も労力とお金と気力がかかりますからね。それが「3年で冷める」とまで言われているわけで、
その上で数十年関係を維持しなくてはいけないというのは「コスパが悪い」と思われても仕方ないでしょうね(離婚するにも労力や慰謝料などの問題が発生しますし)。
でも意外と「困難」に直面すると関係は長続きするものです。
その最たるものが「子育て」だと思うんですよね。
子供は中々いう事は聞かないし、他の子もいますからその人間関係の調整でも悩むことにもなる……。
ただ、子供が親離れした後の「熟年離婚」という事もよくあることなので「寂しいから結婚」みたいな考え方だとちょっと危険なのかなと思いますね。
質問者:
結婚関係が継続しても家族の中で孤立したり、先立たれたりした場合は最終的には「一生独り身」と変わらない状況とも言えますからね……。
筆者:
結局のところ自分の価値観に合わせて「お金を超えるものがあること」が重要だと思います。
つまり、忙しいことや大変なことがやりがいに感じるかどうか? が最大の焦点になると思います。
それはパートナーの笑顔だったり、子供の頑張りであったりそういった「お金で測れないもの」にどれだけ価値を感じることが出来るかが焦点だと思うんですね。
逆にそう言った結婚や子育てがお金や投入時間を超えない、もしくは負担になるのであれば「結婚をしない」という選択肢を取る方が無難であるというのが僕の考えです。
質問者:
その意見は普段の筆者さんの発言からすると何だか意外な気もしますけどね……。
筆者:
ただ、現在の日本の政策はこれまで見てきたように総合的なパッケージで見た場合は「日本人絶滅」へ向かって邁進しているわけです。
国民負担率も10%以上増えているわけですからね。
要は下りエスカレーターを登るぐらいの困難と言うのはあると思うんです。
日本全体の社会風土も子育てに合っているような気もしませんしね。
よほどの高いモチベーションか財力が無ければ難しいのかなと言うのが個人的な感覚としてはありますね。
しかも「共働き強制社会」ともなれば子供に対して割ける時間も減ることになりますからね。
あくまでもこの状況下で結婚や子育てが幸福度が増えるか? と言う視点で考えていくべきなのかなと思います。
一人一人の「正解」を導き出すことが大事で、絶対的な正解は無いと思います。
質問者:
筆者さんはマクロの政策と個々人の選択と言うのはミクロで別個に考えるべきだというお考えですよね……。
筆者:
そうですね。
不十分でヘッポコな政策であるとは言え、昭和よりも子育て支援が手厚くなったという事実はありますからね。子育て支援を享受することと、不十分であることを指摘する事。これらは両立すると思っています。
政策を評価するときに僕がマイナスの側面を指摘し続けているのは、僕たちの世代と言うよりもどちらかと言うと将来世代のためにそう言っているだけであって、自分自身のミクロで見る場合はプラスの要素を見ていく必要があるんですね。
日頃、暮らしていく上においてはマイナス側面を見るよりもプラスの側面を評価した方が精神衛生上良いですからね。
質問者:
子育ての支援が無かった時代の方が遥かに長いために支援があるだけで大変ありがたい制度とも言えますからね……。
筆者:
一番大事なことは自分で選んだ結婚、未婚でも何でも構わないですが「自分の決断に後悔をしないこと」
「他人の芝を青く感じないこと」が非常に重要になると思います。
結婚している側が未婚者をうらやんだり、未婚者が子供をうらやんだりするのは本当に不毛でしか無いです。
そんなことをしても自分の現状は何一つ改善しませんからね。
しっかり考えた上で自分の決断に責任を持つことが一番生きやすい道なのかなと僕は思いますね。




