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騙されたのはアナタ  作者: たかを
9/11

現在の話(例の男サイド)

ご無沙汰しております。

今回はついにあの男が動きます。





  ルイーゼ…ルーは本当に結婚して良いのかと、突然聞いてきた。




(……薄々思っていたが、ルーは何か勘違いをしているようだな)



  以前から違和感はあった。

  婚約者だというのに、女友達のような距離感だなと。




  深い翠の瞳を見つめながら、ルーの問いに答えようとした時、ドアがノックされた。



「……」


「……」


  ルーから視線を外し、ドアに顔だけ向ける。


  部屋の外から聞こえてきた声は、控えめなシリウスの声だった。



「——ご歓談中に失礼致します。リベルタお嬢様、旦那様がお呼びです」



  『旦那様がお呼びです』

  この言葉の意味は、そろそろ城に戻る時間だという合図である。



  そう言われたら無視する訳にもいかず、リベルタの声で是と答えるしか選択肢はない。



「今行くわ」

「はい、お待ちしております」



  彼女に再度視線を向けると、どこかホッとしているような表情をしていた。


  何となく面白くなく、その時あることを閃いた。

  それは一番シンプルでわかりやすい、俺からの返事だろう。



「ルー、ごめんなさいね、お父様に呼ばれてしまったから行ってくるわ」


「仕方がないわよ。長居してもお邪魔になるし、私もそろそろお暇させて頂くわ」


「邪魔だなんて、そんなことはないわ。でもまた今度、ゆっくりお買い物でも行きましょう」


  そういうとルーは嬉しそうに頷いてくれた。


  これがデートのお誘いだとわかっているのかは疑わしいが。


  俺が立ち上がると彼女も立ち上がろうとした為、それを手で制すと代わりにルーの顔を覗き込んだ。


  上目遣いで無警戒に小首を傾げているその姿の何と愛らしいことだろう。


  リベルタの声から地声に戻すと、ルーにだけ聞こえるように小さく囁く。


「——ルー、だいすき」


「—えっ」



  言葉の続きを奪うように、俺は柔らかいそこを奪った。


  柔らかいルーの唇が少しだけ冷えていて、熱を分けるように何度か顔の角度を変える。


  振り払われないことをいいことに、じっくりと甘い唇を堪能し、やがて唇を離した。


  本音を言えばまだキスしていたかったが。



  呆然としている彼女に俺は微笑みかけた。



「——今更俺以外の男と結婚なんて出来ないし、させないからな」



  未だに呆けている彼女に言い残し、部屋を後にした。




  部屋を出てから少し歩いた先に、シリウスが待ち構えていた。

  壁に背をつけ、こちらを見ている様子は眉間に深く皺が寄っている。


  それには何も言わず、とりあえず近寄り可愛くリベルタとして謝ってみた。



「待たせてごめんなさいね」



  「いえ」と短く答えたシリウスは、俺の後ろを大人しく着いてきた。


  人払いをしていた為、俺の部屋もといリベルタの部屋がある別邸には俺たち以外の人間はいない。

  赤い絨毯がひかれた廊下は足音も消してしまうので、俺とシリウスは静かな空間の中、書庫へと向かった。

  

  書庫に着くと念のための用心として、シリウスが書庫の鍵を閉めた。

  窓の鍵とカーテンも既に締められていて、俺は書庫の奥に足を進める。

  

  別邸とはいえ高位貴族のトップにいる大公爵家の書庫はさすがに立派だ。


  一番奥の一角にそれはあった。

  

  俺がここにきた時に着ていた男物の服である。

  その隣にはトルソーが一つ置かれてあり、俺が着ているドレスを掛けられるようになっていた。


  俺は早速自分の背へ手を回しボタンを三個外すと、ドレスが少しだけ緩んだのがわかる。


  俺専用に作られたルーお手製ドレスは、脱ぎやすいように改良されている。

  背中にボタンと繋ぎ目に縫い付けられているリボンを外せば、すぐに脱ぐことが出来るという大変便利なものだ。


  首元で結ばれているリボンを解いていると、近くの本棚の影に待機しているシリウスの声が聞こえた。



「嫁入り前のご令嬢に手をお出しになるのは、如何なものかと思いますけどね」


  顔を顰めていたのはそういう理由であったらしい。


  ドレスを手早く脱ぎトルソーに着させると、胸に詰めていたタオルやら小さめのクッションやらを取り出す。


  女装は別に良いのだが、胸元が少々苦しいのが難点だ。


「あまりにもルーが俺の愛に気づいていないようだったからつい味見してしまっただけだ

…それよりシリウス。聞き耳とは悪趣だな」


  着替える手は止めずにシリウスにそう言葉を投げかけると、すぐに不機嫌そうな声が返ってくる。


「これでも密偵なんで耳が良いんですよ。途中で不自然に会話が途切れれば、そりゃあ何となく想像が尽きます」

「大変だな、密偵も」


  思わず呟くとシリウスは「誰のせいだ」と小さくぼやいていた。


「……よくルイーゼ嬢に嫌われませんね」

「ん?」

「女装する理由の大半がふたきりになれるから、なんて俺がルイーゼ嬢だったら絶対引いてますよ」

「そんな不愉快な想像するな。ルーが汚れるだろう」

「ひどい。そして物凄い重いです、殿下」



  後ろからそんな言葉が聞こえたが完全に無視した。

  借りている騎士服に着替え終わると、トルソーに着せたドレスに改めてそっと触れてみる。

  本日のドレスは数日前にルーから送られてきたばかりのドレスで、色は淡いミントグリーンだ。

  

  ドレスの色は黄色か緑とルーにリクエストされた時に答えた。


(この二色はルーの色だから)



  俺はルーに出会った時のことを思い出した。



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