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逃走若様 道中記  作者: C・ハオリム
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第40話 「ボクに構わないでくれ」

 「感化の力は為政者を目指す者が喉から手がでるほど欲しい力なのじゃがな。小さいとせいぜい素敵なご主人様程度で終わってしまうからのう」


 ライオネルおじいちゃんは残念な子を見る目(ように見える)でボクを見つめてきた。確かにボクがブッコワース領を継ぐならそれは大きな問題だけど、もう継ぐに継げない身体になったから素敵なご主人様程度で十分なんじゃないかな。


 「感化の力は分かりましたが。ずっと気になっていたのですが、ここが関係者立入禁止島と言われているのは理由があるんですか? 」


 ボクはここに来てからずっと通奏低音のように感じている疑問を訪ねてみた。どうせ、大した理由で名付けられたわけじゃないと思うけど。


 「この島はな、本来は来たい者は来ることができない特性を持っておるのじゃよ。来島したい、つまり関係者は立ち入り禁止となるのじゃな。そして、その神秘性に目がつけられてこの総合神殿が建立されたのじゃ。この島に来るには本来は大きな街には大概ある総合神殿出張受付で来島許可証を申請しなくて原ならん。許可証が無い者が来島するにはロスタ嬢ちゃんのように遭難するしかないんじゃよ。あの海賊どもは海賊故、出張所に行けんかったのじゃろうな」

 来島許可証って神秘性も何もあったもんじゃない気がするのはボクだけかな。そんな僕の気持なんかにお構いなく、ライオネルおじいちゃんはそう言うとワインセラーからボトルを一本取りだした。


 「多分、ロスタ嬢ちゃんが生まれた年に仕込まれたワインじゃ。どうじゃ、いけん口でもなかろう」


 ライオネルおじいちゃんはグラスに赤いのを注いでボクの目の前においてくれた。とてもいい香りがする。でも、ボクは飲んだら、酔っぱらうとボクは装備しているすべてをパージしてしまうらしいから、それは多分ボク以外の男だと嬉しい事だけど、ボクは何にも嬉しくない。逆に後で聞いてボクの中の益荒男が萎れていくのを見届けることになるから避けたいんだけど。


 「なに、これ、うますぎる」


 「ちょっと控えた方がよいぞ」


 やらかしていた。人と言っても白骨死体の酒を散々煽ったらしい。ライオネルおじいちゃんの再三の停止を無視したようで。ガンガンと杯を重ねてしまった。



 「ロスタ嬢ちゃんは着やせするタイプのようじゃのう」


 翌朝、ガンガンと痛む頭を抱えながらタマコさんの用意してくれた素敵な朝食を書き込んでいる時、ライオネルおじいちゃんが目を細めながら(そう見える)ボクに話しかけてきた。


 「お嬢様、随分と飲まれたようでしたからね」


 シュマがジトっとした目で見つめてきた。ライオネルおじいちゃんがボトルを取り出したところまでしか記憶がないがないから多分そうなんだろう。


 「タマコさんにおぶってもらってお戻りになられました。幸い、おもどしはありませんでしたが」


 コレットが冷ややかな目で見つめてきた。タマコさんに面倒をかけていたなんて、誠に申し訳ない気持ちになってきた。


 「タマコさん、ごめんなさい」


 ボクは給仕をしてくれているタマコさん頭を下げていた。そんな僕をタマコさんが冷ややかに見つめてふっと鼻先で笑ってくれた。


 「服を着せるのが大変でした。特に下着をつける時に随分と抵抗されましたから」


 思いっきりやらかしていた。すると、ライオネルおじいちゃんはボクの秘密の花園まで見られていたのか。それを悟った時ボクはカッと顔が赤くなるのを感じた。


 「恥ずることはないぞ、見ただけじゃが、ロスタ嬢ちゃんは見事な名器じゃぞ。アレは男どもをごふっ」


 ライオネルおじいちゃんの後頭部にタマコさんの手刀が炸裂していた。何とかボクの尊厳が最終ラインで守られた。


 「良かったね。ロスタ姐ちゃんは名器だって」


 ジャグが嬉しそうに話しかけ来てくれた。ジャグ、君、多分、名器ってどういう意味か分かってないよね。そして、これは言われて素直に喜ぶような類じゃないと思うんだ。特にボクみたいな複雑な身上がある者にはね。


 「それは軽々に口にするような言葉じゃないんだ。もし、ジャグが誉め言葉として女性にその台詞を吐いたらぶん殴られても文句言えないからね」


 この件についてはしっかり注意しておかないと彼女の今後に何らかの問題が生じるかもしれないから。


 「お嬢様が名器、これはますます見過ごすことができませんよー」


 「お嬢様、最初ぜひこのコレットに」


 「素敵なアイテムがあるんです。これで女性のみであっても」


 猛獣どもが目の色を変えて迫ってきやがった。君らにボクの身体にナニかするような事はできないと思うけど、リナが妙な物を持ってこないとも言えないし、もしそうなるとどんな惨劇がボクを襲うか分からない。この白骨死体は本当にイラナイ事を言ってくれたものだ、とボクは憮然とした。


 「ボクより君たちの方が名器だと思うよ。獣人の女性と一晩ともにしたら普通の女性では物足りなくなるって聞いたことがあるから。兎に角、ボクのこの事は放っておいてほしい」


 これは口から出まかせではなく、屋敷にいた時にちょくちょく来てくれるリナをその手の商売と勘違いした執事たちがだべっているのを聞いたからだ。大体、まだ未使用だったボクが永久にその機会を失った上に名器なんてどんな罰ゲームなんだよ。ご馳走を食べるのではなく、ご馳走として食べられるなんてどんな罰ゲームなんだよ。ボクが何か悪い事をしたのか。


 「お嬢様、涙が…」


 コレットがボクの目に浮いた涙をやさしくハンカチで拭ってくれた。このハンカチがあの白銀のなんたらというろくでもない奴のロゴが入ってなかったらいう事なしなんだけどね。


 「お昼ごろ、ここを出発するって、気持ち悪かった人たちが言ってたよ」


 トーストに齧り付きながらルメラが大切なことを口走った。じゃ、ボクたちが載ってきた船もそれに合わせて動くんだろうな。さっさと準備をしないと。


 「そうだね。食事が終わったら荷造りして、船に向かおう」


 ボクは猛獣たちに準備するように指示を出した。ここにずっといる訳にはいかない、なんせここでお金を稼ぐ手段をボクらは持ち合わせていないからね。


 「………ライオネル様、私を弟子にしていただけませんか。タマコさんには及びませんが身の回りのお世話も致します。何卒、弟子にしてください」


 いきなりエルフの女性がライオネルおじいちゃんの前に跪いて弟子にしてくれって言いだした。確かに彼はすごい魔法を使うけど、人間性というか死体性はそれほど高潔じゃないと思うけど。


 「な、なんと、エルフっ娘が弟子にじゃと。やはり長生きはするもんじゃな。勿論、良しじゃ。」


 ボクの予想通り、ライオネルおじいちゃんはOKサインを出していた。万が一、ボクが弟子入りすると言っても彼はOKしただろうね。彼の弟子になるための要件は女性であることなんだろうから。


 「よろしくお願いします」


 エルフの女性はライオネルおじいちゃんに改めて深く頭を垂れた。しかし、タマコさんと言い彼女と言いこんな白骨死体の元に美人が集まるなんてなんとなく釈然としない。


 「モテる男はつみじゃのう」


 この白骨、絶対に勘違いしている、モテ期が来たなんて思ってやがるに違いない、さっきからちらちらとこっちを見てきているからな。


 「本当にお世話になりました。この御恩は忘れません。どうか、お元気で」


 ボクはライオネルおじいちゃんに我ながらスゴイと思うようなカーテシーを決めてやった。


 「そうか、もう少し居ってもよかったのに、残念じゃのう」


 確かにライオネルおじいちゃんは良い人(?)だけど、ボクの旅の目的地はここじゃなんだからね。


 「ライオネル様、私にあの方をご紹介ください」


 傭兵の女性がいきなりライオネルおじいちゃんの前に額づいた。


 「ゑ? 」


 突然の事にライオネルおじいちゃんのあごの骨が外れそうなっていた。


 「あの、ステゴロの精霊様に弟子入りして鍛えて頂きたいのです。だから、何卒あの方にお取次ぎを」


 なんと、彼女はあのステゴロの精霊に弟子入りしたいらしいのだ。確かに、ブッコワース領の民ならあの破壊力は憧れるだろうけど、彼は精霊であり、人とは違う、人とは違う者の練成が果たして人にも適応されるのだろうか。


 「そうか、ステゴロの精霊に弟子入りか。よいぞ。儂は彼と直接の知り合いではないが、彼のボスの暴力の精霊とはそれなりに付き合いがあっての。紹介してみようかの」


  ライオネルおじいちゃんの人(?)脈恐るべし。流石、腐っても不死者である。彼の場合はもう腐敗のステージはとっくに過ぎていると思うけど。


 「ありがとうございます」


 彼女ははじけるような笑顔を見せた。初めからあんな笑顔を見せてくれていたら彼女に対するボクの印象も随分と変わっていたと思う。ま、彼女の事だから人だとか精霊だとかの垣根は乗り越えるんだろうな、とボクは無責任極まりない事を想像してこの件はここでクローズさせた。何にも引き際が大切なのだ。


 「何か大変なことがありそうですけど。ありがとうございました。さようなら」


 ボクは再度ライオネルおじいちゃんに礼を言うと、名残惜しそうな彼を残して、ボクらは船が漂着した砂浜に向かった。


 「ありませんねー、メアリー・ディアリング号」


 コレットが砂浜と青い海を見ながら頓狂な声を上げた。砂浜には女体の神秘号改めというか、昔の名前に戻って白い砂浜号だけが停泊しているだけだった。


 「あ、あたしの商品がー、財産がー」


 リナががっくりと砂浜に崩れ落ちた。その横でジャグがどうした者かとオロオロしていた。


 「狐のお嬢さん、連絡が遅れて申し訳ありません。貴女方のお荷物は全て、白い砂浜号に移してあります。あの傭兵のお嬢さんとエルフのお嬢さんの荷物はライオネル様のお屋敷に今運んでいるところです。運んでいる者が戻り次第、出発します。さ、あちらのボートにお乗りください」


 かつては気持ち悪いの集団の一人だった爽やかなイケメンがボクらに優しく節目してくれて、しかも巣は生に崩れ落ちているリナの手を取ってそっと立たせてくれていた。この出来事にリナはぽーっとしていた。彼女の顔が毛皮で覆われていなかったら真っ赤になっているのが見られたんだろうな。


 「お、お心遣い、ありがとうございます。とても大切な荷物ですから」


 「連絡がしっかりできていなくて申し訳ありませんでした。貴女方の荷物は全て持ってきていますのでご安心を。あ、あの船に残された思い出は盛ってくることはできませんでしたが」


 船員は白い歯を見せて爽やかに笑いながらボクたちを連絡用のボートまで案内してくれた。


 「あ、あたしの荷物、あったー」


 船員たちへの礼もそこそこにリナは自分の荷物を見て歓声を上げていた。あの荷物はリナの全財産で、金儲けの道具で、そしてボクたちの経済が思いっきり依存している物だから、本当に良かった。


 「リナねえちゃん、この荷物おいらたちのじゃないと思うけど」


 ボクらの荷物は客室の一つのなかにきれいに集められていた。その中に二つほど見知らぬカバンが紛れ込んでいたようだ。


 「これは、特別ボーナスってことでいいですよね。お嬢様」


 リナがニコニコしながらボクに尋ねてきた。道徳的にはこれを自分のモノにするというのは問題ありありのありだけど、これを持ってきたのは海賊だったのだから、ボクらが盗んだもんじゃないし、今更返しにも行けないから。ここは、苦しいけど問題なしとする。


 「いい物が入っているといいですねー」


 「高く売れるものがあれば私たちの食事も良くなりますからね」


 シュマとコレットは全く罪悪感を感じていない。


 「どうすることもできない物だから、ここは有難く頂いておくことにしよう。もし、誰かに盗んだと言われたらボクが貰っておけって言ったと言えばいいよ」


 「貰っていいんですね。良かったー、何かいい感じがするんですよね。………お嬢様、私は商品は売りますが、恩人を売ったりするような女じゃないですから」


 荷物を探っていた手を止めてリナがはっきりと宣言した。でも、コイツのこの手の台詞はあまり信用できないのが定番なんだけどね。でも、ここは彼女の気持ちを受け取ろう。


 「ありがとう。でも、危なくなったら、ボクの事を利用してくれて構わない。これはシュマとコレットも同じだよ」


 こんな姿になり果てて、貴族と言うたった一つの拠り所も捨てたボクに残されているのは彼女らを守るという男としての矜持ぐらいだ。そして、この矜持は簡単に無くすことはできないし、失う気もない、ずっと持ち続けるつもりだ。うん、多分そのつもりだ。


 「これは………」


 思わず転がり込んだボーナスの荷物を開けてリナが絶句していた。そして、彼女は恐る恐るその中のモノを取り出した。


 「お嬢様、この手の類のモノが大量に詰まってます」


 彼女が手にしていたのは、紳士淑女が夜に使うその手の玩具と言うかグッズと言うか、お天道様の高い時に口にするのも憚られるモノだった。


 「随分と立派ですねー」


 シュマがリナが手にしたモノを見つめてため息交じりに呟いた。


 「こんなの使ったらガバガバになります」


 コレットが口に手を当てて嫌そうに言いながらも興味津々でそのグッズを見つめていた。


 「これ、ゴツゴツのイボイボだよ。リナ姐ちゃん、これって何に使うの? 」


 ジャグが凶悪なブツを手にしながら無邪気に尋ねてきた。リナが思わずボクに助けを求めるような視線を投げてきた。しかし、これをキャッチするとこのブツについて説明しなくちゃならないし、こんなモノの説明なんて難しいし、どうしたものかと悩んでいると視界の隅にルメラが入り込んできた。彼女が手にしてい居るのは巨大かつ凶悪なブツが双方向についたマニアックとも思われる一品だった。


 「ルメラ、子供だからまだ使えない。挿らない。挿るようになったらロスタを悦ばすから」


 流石、竜だけあってよく知っておられる。と、言うかボクは君に悦ばして欲しくないから。そんなモノ挿らないから、うん、絶対に無理、コレットじゃないけどガバガバになってしまうから。


 「ルメラ、これ、何に使うの? 知ってたら教えて」


 ジャグが凶悪なブツを振り回しているルメラに純真な目で尋ねた。ヤバい、これはヤバい、この竜にデリカシーとか配慮とかそんなものは一切ないから。このままじゃ、ジャグが望まれない大人の階段を赤ってしまう。


 「ルメラっ」


 ボクは思わずルメラを止めるために声を上げた。彼女はちらりとボクを見て、深くうなずいた。

 良かった。通じた。と、ボクは安堵のため息をついた。


 「これは、殿方の………」


 奴はボクの呼びかけを中止ではなく、続行と受け取ったようでジャグに対して微に入り細に入り説明してくれやがった。と、言うか、シュマ、コレットも何びっくりした表情を浮かべているんだよ。知ってて当然の年代だろうが。そして、リナ、何故メモを取っている。君なら当然知っているだろう。屋敷に行商に来てくれるたびに、周りから「随分とマニアックな趣味をお持ちなんですね」と言われたぐらいなんだぞ。


 「ルメラ、止め………」


 シュマ、何でボクの口をふさぐんだ。コレット、主人が大変なことになっているのにあんなブツに見入っている場合じゃないんだぞ。リナ、ボクに熱っぽい視線を向けるんじゃない。舌なめずりするなっ。

 腐っても竜と言うか、何かが腐っているのか………。それにしても、幼い見た目のルメラがその姿で、クッソ生々しいブツの使い方などを「今日の晩御飯何かなー? 」みたいなノリで淡々と説明するのはとてもとても背徳的に感じられたし。妙な性癖の夜明けを迎えるかもしれない光景だった。


 「ルメラ、この中で一番幼い君が何で詳しいの? 」


 ボクはしれっとしているルメラに前のめりで問いかけていた。ルメラはボクの問いかけに軽く首をかしげた。


 「3代前が随分と爛れた生活をしていたの。竜は記憶を受け継ぐから知っている。ルメラは使ったことがない」


 竜の爛れた生活ってどんな生活なんだろう。ものすごく気になるけど、聞いたらナニカ思いっきり後悔しそうな臭いがプンプンしているから敢えてスルーする事にした。

 ボクが多分、傍から見れば複雑な表情を次々と浮かべているのが観察できるであろう状態の中、ルメラに続いて幼いジャグは黙って何かを考えていた。


 「なるほど、売り方を考えないと難しい商品なんだ」


 ジャグはルメラの生々しい説明を聞き終えると真面目な表情でブツを手に取った。そんなもの手にしちゃだめだとボクが言う前だった。しかし、この中でジャグが一番冷静だという事にも気づいた。


 「リナ姐ちゃん、コレって間違っても露店で売れる商品じゃないよね」


 頭から湯気を上げているリナにルメラが冷静に尋ね、この商品をどう捌くか相談しようとした。


 「スゴイ世界があるんですね。驚きました。なんかワクワクしますよー」


 「お嬢様、一緒に楽しみましょうね」


 シュマ、コレット何にワクワクして、何を楽しむんだ。そんなに楽しみなら君らだけで楽しんでくれ。決してボクを巻き込まないでくれ。頼むから、そんなものを使われたら、一生再起不能になるから。


 「ボクに構わないでくれ」


 思わずボクは叫んでいた。猛獣たちに身も心もぐちゃぐちゃにされ、挙句の果てに女の子であることを思いっきり受け入れされてしまうなんて。ボクの男としての矜持が踏みにじられることになってしまう。こんなのは絶対に耐えられない。


 「ロスタ姐ちゃんの件より、この荷物さっさと捌かないと元の持ち主が出てきたりしたらややこしい事になるよ」


 この中で一番冷静なジャグがリナの袖を引きながら心配そうな声を上げた。


 「モノがモノですから。ジャグが言うように露店で売るわけにはいかないわね。この手の商品は有閑マダームたちに売るのが一番じゃないかな。殿方を相手にするとこっちが色々と危険な目に会いかねませんからね」


 さっきまで茹でられたタコみたいになっていた、と言っても彼女の肌は毛皮の下だから真っ赤になっているのを見たわけじゃないけど、類推するとそうなっていると推測できたからね。シュマの鼻の頭が真っ赤になっていたから間違いないと思う。


 「リナ姐ちゃん、その有閑マダームに伝手があるの? 」


 「一介の行商人がそんな人たちと面識があると思ってるの? 」


 リナ、そこは胸を張るところじゃないと思う。でも、ジャグの言うことは尤もだ。


 「その手のブツを扱うお店に売るのが一番手っ取り早いと思うよ」


 ここは、元貴族として、ブッコワースの唯一の文化人としてアドバイスするべきだよね。


 「元の持ち主とトラブルにならなければいいんですが。海賊からくすねた盗品という事で売りますか」


 リナはボクの提案にうーんと唸りながら賛同してくれた。こんなブツはさっさと手元から無くなって欲しいからね。

 

 「おいらも、こんなややこしい商品は早く捌く方がいいと思うよ。訪問販売なんてしてたら、旅が滞ってしまうし、ブッコワースの連中に、特にあのビキニアーマーの筋肉だるまに見つかるかもしれないよ。レーペさんは良い人だけど、これは別としてさ」


 ジャグはひょっとするとリナ以上のやり手なのかな。リナよりしっかりしている様に見える。この中で一番の成長株が彼女なのだろうな。



 「動き出しましたよー」


 ボクたちがアヤシイ過ぎるブツで騒いでいる時に白い砂浜号はそっと出向していた。ボクらは王都のある大陸に行きたいんだけど、果たしてこの船はどこに行くんだろう。


 「お嬢様、この船、一体どこに行くんでしょうか」


 「このままなし崩しで海賊になるんですかねー」


 このまま海賊になってしまったら、ブッコワースだけでなく世界レベルで追われる身になってしまうではないか。これは、良くない、誰も幸せになれないぞ。


 「女海賊ロスタとゆかいな仲間たちって、私たちで旗揚げしませんか」


 コレット、そんなことをしでかすと二度と街で白昼堂々と買いモノなんてできなくなるぞ。最悪、頭と胴体が物理的に分離させられることになるんだぞ。


 「ゆかいな仲間って誰の事ですかー。女海賊ロスタと美獣とゆかいな仲間たちですよー」


 シュマが勝ち誇ったように口にした。その美獣って君の事なのか、それは如何なモノか。


 「お嬢様方、この船は王都の直近の港であるマッツェの港には寄港せず、離れたツーザの港に寄港します。なんせ我々はお尋ね者ですからね。ツーザもそれなりに大きいので王都に行かれるのでしたら馬車も出ていると聞いています」


 船長がボクたちの船室にやって来て丁寧に説明してくれた。しかし、こんな人が海賊をしてたんだと改めて不思議に思った。


 「何故海賊に? 」


 ボクは思わず船長に尋ねていた。最新鋭の軍艦と優秀な船員、普通なら海軍の中でブイブイ言わせていても不思議じゃないのに。


 「白い砂浜号に頑丈の加護を得るためにキ・アイ様に祈りに行き、馬鹿のおかげで呪いを喰らったところまではご存じですよね。その後ですよ。海軍は呪いによりあんな姿になった我々を任務に失敗したと叱責した後に、こんな気持ち悪い奴は海軍の面汚しだってね。首にしやがってくれました。だから、我々は奴らへの意趣返しとして、この船を奪って海賊になり果てたんですよ。元の姿に戻ってもその気持ちは変わりませんね」


 海軍も結局は見た目が大事なんだ。確かにあの見た目は最悪で気持ち悪かったから彼らが追い出されたのも分からなくはないけど。


 「でも、海賊船から降りてきたのを見られたら捕まるかも………」


 リナが荷物を仕舞いながら不安そうな表情を浮かべた。確かに海賊の仲間と思われて捕縛され、ひどい事をされて口を割らされることになるのは明白だ。


 「夜中にそっと小舟で送り届けます。お嬢様方をひどい目に会わせません。ツーザの官憲の目は昔から節穴なんですよ。彼らは金にならない事はしません」


 船長は見事に言いきってくれた。節穴が伝統とはある意味すごいことかもしれない。それだけ官憲が動いていないという事はツーザの治安なんてブッコワース一族の知性と同じかもしれない。つまり、存在することが疑わしいと。


 「夜中にこんな女子供だけで移動しろっていうの? 」


 リナが船長に喰いついた。普通ならそうなるよね。ボクらはまさしく女子供だけだからね。 


 「人気のない場所に上陸する予定です。誰かに出会う事はないでしょう。そこに我々の隠れ家の一つがありますから。そこでしばらく滞在されてから出発されるの手ですよ。食料などもありますからおすきに使って下さっていいですよ。よき航海を」


 船長は爽やかに言うとボクらの船室から出て行った。前は気持ち悪いだったけど、今は気障ったらしいにランクが上がったようだ。


 「さて、目的地に着くまでゆっくりと身体を休ませよう。何かとバタバタしていたからね。船にしては良いベッドだからこの上で手足を思いっきり伸ばしてさ」


 ボクはベッドに倒れ込んだ。ふかふかがボクを受け止めてくれる。ボクは大の字になろうと腕を開いた。

 「ふにゅ」

 腕に最近になってよく感じる感触があった。以前はなかったけど今、ボクの胸にその存在を主張するモノの感触があった。勿論ボクのモノじゃない。それが両腕に感じられた。


 「ゑっ? 」


 ボクは両サイドを交互に見た左側にはコレット、右側にはシュマがいつの間にか横たわっていた。ボクは慌てて手を引っ込めようとしたら、彼女らはがっしりとボクの腕をつかんで彼女らの胸を押し当ててきた。


 「遠慮なさらなくていいんですよ。コレットの胸はお嬢様のためにあるのです」


 「そうですよー、シュマも同じですからー」


 猛獣たちはこのままの状態をキープしたいらしい。ボクとしてはもっと身体をリラックスさせたいのだが。


 「お嬢様、そのままではお体を冷やしてしまいます。ここはこのリナが」


 リナがボクの上に覆いかぶさってきた。羽毛布団と言うの聞いたことがあるけど毛皮の布団、しかも中身が詰まっているというのは聞いたことが無いんだけど。


 「リナ姐ちゃん、ズルい、おいらも」


 「なんかよく分かんないけど、ルメラも」


 ちびっ子たちがボクに絡みついてきた。両手に花どころではない男としてはなかなか嬉しいシチュエーションじゃないか。もう、男じゃないけど。こんなに女性に囲まれているのに、ボクは何の班のもうできないし、しない。これが余計にボクを苦しめる。確かこんな言葉があったな。


 「蛇の生殺し」


 ボクは毛皮に蒸されながら思わずつぶやいていた。できれば前の身体の時にそんなに毛深くない人たちにしてもらいたかったなーとぼんやり思っていた。ボクがこんな喪失感を何故感じるのだろうか、ふと肝心なことを思い出した。すべての元凶は今、ボクの胸に顔を押し付けている女狐の仕業じゃないか。過失と言うところはあるけど、思わず頭を拳でグリグリしたくなったけど、彼女の嬉しそうな表情を見ているとそんな気も失せてしまった。かわいいは正義なんだな、ボクは改めてこの世界の真実の一つを深く理解することになった。


 「」

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