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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第6章 街道の要所エンセナーダ 暗躍⑩

 グロウス男爵家に戻ってルークはまた一から全てを説明することになった。


 ダークはミロを救出することには同意していたが、ロック=レパードや確認は取れていないがルーク=ロジックはまだしも素性の知れないミロを公太子と同席させることに難色を示したがグロウスが一蹴した。ロックの同行者だから、という理由だった。


「公太子様にお目に掛れるなんて想像もしていなかったわ。ロックって本当は偉い人なの?」


「俺はたまたま公太子とはセイクリッドで学校が同じだっただけで偉くもなんともないさ。今となればアゼリア公の養子であるルークの方が偉いかもな。」


「ロック、からかわないでよ。」


 ルークは心から謙遜していた。自分がヴォルフ=ロジックの養子だと今でも信用できなかったし、その立場を利用しようとも思っていなかったからだ。


「いや、ルークと言ったか、お前の身元は確認した。確かに狼公の養子として御触れが出ているそうだ。父上の所にはつい最近に来たみたいで俺の所にまではまだ届いていなかったがな。」


「なるほど、それで私の所にも情報が届いていなかったのか。ルークとやら、アゼリア公のご養子とあらば私とグロウス先輩と同格、いや私とも同格と言っても過言ではない、以後よろしく頼むぞ。」


「公太子、滅相もありません。僕は素性が判らないただの一般人です。縁あってロジックの名を名乗らせていただいていますが、それは苗字も名前も無かったから、というだけなのです。」


 確かにウォルフ狼公を救ったとはいえルークの素性が明らかになったわけではない。ロックも同行していてルークの性質が善良であることは疑いないが素性の背景に何があるのかは判らない、と感じてい

た。


「まあよいではないか。ロックの話では剣の腕も確か、魔道も上位魔道士と祖難色ない、となるとうちの騎士団に入らないか?」


 グロウスがガーデニア騎士団に推挙しようと申し出る。


「身元は俺が保証するとして、すぐに中隊長くらいにはにはなれそうだしな。」


「待ってくださいよグロウス先輩。ルークは俺と修行の旅をしているんですから。ルークの本当の身元を探すことも旅の目的に入って居るんです。ガーデニアに居つくわけには行かないんですよ。」


「それは残念だな。」


「いや、もし出来るなら私の親衛隊に入ることがいいのではないか?色々と便宜も図れるだろう。ダークの部下という事でシャロン公国中を巡検使として巡るのはどうだ。」


 公太子も提案するが、勿論そんなことを易々と受けるわけには行かない。


「折角ですが、そんな恐れ多いことを僕なんかが受けさせていただくわけにも行きませんし、しばらくはロックと自分探しの旅をするつもりをしています。グロウス男爵様も公太子様もお許しください。」


 そう言われると二人とも引き下がらざるを得なかった。確かに一方の提案を受ければ、もう一方を断ることになってしまうのだ。ルークとしても二人が同時に提案してくれたことで両方断ることが出来たので、逆にありがたかった。


 もしかしたら、そう思って提案を重ねてくれたのか?とルークが公太子を見ると片目を閉じてルークに合図を送っていた。やはり判った上で申し出てくれたようだ。公太子なんて立場の人間は、高圧的でいけ好かないのではないかと思うのだが、ちゃんと気の使えるいい人なんだ、と思った。ロックも公太子の立場を押し付けてくるような人とは友達にならないだろう。


「判った、判った、公太子を差し置いて我が騎士団に来てもらうこともできまい。」


「そうだな、グロウス先輩。彼らの行動の保証を我らがしてあげればいい。ガーデニアに居る間はグロウス男爵家を頼ればいいし、他の州に滞在するときは狼公の養子であり私の友人でもある、と申し出ればいい。」


「いえ、そんな、公太子のお名前を出すことなど憚られます。何か厄介ごとに巻き込まれたときは御頼りするかも知れませんが、出来る限り自分たちで解決できるよう、それも含めて修行の旅をしていきます。」


「まあ、俺に任せておけば大丈夫さ。」


「この男は剣術馬鹿だから、当てにしない方がよいぞ。」


「公太子、剣術馬鹿はないでしょう。剣に真摯に向き合っている、と言ってください。」


 三人は青年学校時代、仲が良かったのだろうな、とルークは微笑ましく様子を見ていた。


「そういえば、グロウス先輩はソニー=アレスという男をご存知ですか?」


「ソニー=アレス?ああ、アレス家の嫡男だな、一度会ったことがある。確かお前たちと同年じゃなかったか?」


「そうです。公太子や俺と同年の様でした。御前試合には出てこなかったので実際の年齢は判りませんが本人はそう言っていましたね。あと、アーク=ライザーという青年も。」


「ライザーと言うならアストラッド騎士団の騎士団長るルネア=ライザーの息子か何かか。」


「多分そうだと思います。彼も同年のようでした。」


「それで、そのソニーがどうした?」


 ロックはロスでのことを掻い摘んで話した。そして、そのソニーとエンセナーダで再会したことを話した。その際、情報では影のガルドと同行しているはずだという事も。


「判った。ソニーのことはこちらで少し調べてみよう。この街でもし何か良からぬ事をしようとしているのなら俺の責任でなんとかしよう。」


 ロックはソニーが良からぬことをおこそうとしている、とも思わなかったが、アークを返して自分だけ残った理由も気になっていたのだ。


 ロックたちがエンセナーダを出て修行の中心地であるマゼランに向かうのにはもう少し時間が必要のようだった。

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