第11章 プレトリアの真実 魔道の国Ⅳ⑨
「ここに数多くの魔道書があります」
プレトリア州魔道研究所にはシャロン公国全土から集められた数多くの魔道書が収められていた。
シュタールのそれと比べても遜色ない規模で他の追随を許さない圧倒的な蔵書量だった。
「そのなかに、いくつか気になる記述のある魔道書があるのです」
リロン所長がシェラック、ユスティ、ルークに向かって説明をしている。他のものたちは興味が無いのでそれぞれ自室か応接室にいるようだ。
「気になる記述ですか?」
「そうです。過去様々な魔道士たちが不老不死について研究を行っています。それは実は成功していることもあるのです」
「成功例があると?」
シェラックとユスティが前のめりになる。そもそも二人は各々の主人から不老、若しくは不死についての情報を探すように言われてきているのだ。ルークはただ単純に興味があっただけだった。
「いくつかの方法が確認されています。たとえば時を渡る魔道。これはただ時を渡るだけなので不老でも不死でもありません」
別の時代に行けても本人は歳を普通に重ねてしまうのだ。
「そして時を止める魔道。これについてはルークさんが実際に体験されたことと思います」
確かにサイレンは屋敷の中限定だが歳を取らなかった。空間魔道の一種かも知れないが、その掛け方は数字持ちの魔道士序列第9位氷のノルンが知っている筈だ。
「いずれにしても、その存在についての記述はいくつか散見されます。ただの具体的な魔道についてはその詠唱も含めて記載は見受けられません」
なるほどあることは判っても使えない、ということらしい。
「ノルンさんはシェラックさんの師匠なので、その伝手でご教授いただくわけにはいきませんか」
リロン所長はノルンとシェラックの関係もちゃんと把握している。
「それは師匠次第だが、その方法はと無駄だと私は思いますよ。屋敷などの閉ざされた空間のみに有効な魔道であって、そこから出られないことには意味がないのですよ」
シェラックにしてもユスティにしても為政者からの依頼であって、屋敷や部屋から出れないことに加えて別の入って来た者が中での記憶を失ってしまうような魔道は使えなかった。
「確かにいくつか欠陥がありそうですね。そこは今後の課題という事でしょうか」
リロン所長は淡々と話を進めていく。
「そして、これはただの伝説ということなのかも知れませんが、時を止める魔道は空間魔道でなくとも個人として自分だけに掛けることが可能ではないか、ということです」
それが可能であればシェラックやユスティが求めるものの正解の可能性が高い。
「伝説というと?」




