第3章 放浪の二人 秘密の森③
第3章 放浪の二人
2 秘密の森③
「そのナグっていうのは、そんなに恐ろしい
のか?」
(恐ろしいなんてものではない。一目見ただ
けで発狂すると言われておるくらいだ。)
「ってことは、ブーちゃんは発狂してないか
らナグを見てないんじゃないか。」
(ブーちゃんとはなんのことだ。)
「ブラウンなんとかだからブーちゃんでいい
だろ?」
(まさか、我のことをブーちゃんなどと呼ん
でおるのではあるまいな?)
「そうだよ、いけないかい?」
(いいわけがなかろう。我は偉大なる、)
「わかった、わかった、それはもういいよ。
じゃあ何て呼べばいいんだよ。」
(ブラウン=ジェンキン様、とでも)
ロックが踵を返して元来た道へと歩きだそ
うとした。
(まて、様、はよい。ブラウン=ジェイキン
若しくはジェイあたりでどうだ?)
「ジェイか、まあ仕方ない、それで我慢する
か。」
(我慢とはどういう意味だ。)
「そのままの意味だよ。不満か?」
(いや、もうそれでよい。よいから先に進む
のだ。)
「だから、ロックはジェイを虐めすぎだよ。」
「揶揄い甲斐があるネズミくんだからね。」
「でも彼がいないと僕たちもレイラたちを見
つけられないよ。」
そうだった。早く二人を見つけないと、大
変なことになるかも知れない。
(それみろ、この者はちゃんと我の価値を理
解しておる。)
ジェイは木の枝から枝を渡るように、ロッ
クとルークは人が通ったことがないような木
々の間を、森の奥へ奥へと進むのだった。




