微睡む
「…あなたがこのセカイの主人?」
聞かれた瞬間にパッと体が動いた。
「澪!!」
「うん!」
澪の手を取り逃げ出す。
年上そうとはいえ相手は女性2人組。勝てないまでも澪を逃がす時間くらいは取れたはずなのに
あの2人は危険だと心が警鐘を鳴らす。
こんな事は初めてだ。
いつも妹と過ごしている町を見慣れた道を息を切らして全速力でかけていく。
「家に入ればー」
「お兄ちゃん!!!」
突然見知ったはずの帰り道からコンクリートの壁が伸びてきた。
壁に手をつきながらブレーキをかける。
「ごめんね。ここは行き止まり。」
白衣を着た女性が壁の上に立っていた。
ゆっくりではあるが来た道からももう1人が来ている。
まずい、どこか逃げ道、いやない。戦う?危険だ。走り抜ける?近づきたくない。どうする?どうする?どうする?
今度こそ澪を守らないと
「お兄ちゃん!」
澪からの呼びかけに意識を戻す。
いつの間にか壁の上にいたはずの女性は飛び降りて反対側にいる。追い詰められた。
「何か誤解してるみたいだけど私たちは話をー」
「うぉぉぉぉ!」
話しかけてきた隙に飛びついてー
「…っかはぁ!!」
声が出ない。白衣の方に殴られた。警棒みたいな物を持ってる。気が付かなかった。壁まで吹っ飛んで目眩がする。澪が泣きながら心配してる。
だめだ。
「大丈夫。大丈夫だから」精一杯体を起こして笑う。
だから泣くな。
「やっぱりダメだ栞。こいつも今までのレベル3と一緒だよ。話なんて聞かずに襲ってくる。」
「…そうね。あなたはとっても例外だったのかしら?」
「私は天才だから。…じゃあそろそろ起きてもらおうか。」
白衣の女がいつの間にか持っていた拳銃をこちらに向ける。
「お兄ちゃんをいじめないで!」
澪が震えながら俺の前に立ち塞がった。
「あれ?実は君が主人だった?そんなはずは…」
なんでもいい。今はここから逃げないと。
「逃げるぞ、澪。」
「…うん。」
途端に住宅街の家や壁が崩れて女性たちとの間に入るように動く。
「!?これは…」
「改変よ!聞いていたデータと違う!気をつけて!」
壁に囲まれて、気がつくと自分の部屋にいた。
「お兄ちゃん!大丈夫?お兄ちゃん!」
澪が泣いている。
「大丈夫だって。」まだ痛むがだいぶマシになってきた。頭を撫でて澪を落ち着かせる。
「ほら、昔よく遊んだろ?ヒーローごっこの続きだよ。お兄ちゃんはヒーローだから、あんな悪い奴らには負けないんだぞ。澪の事は俺が守るんだから。」
ーあの時思っていても言えなかった事を口に出す。
「何それ。そんな状態で言われても説得力ないよ…」
「嘘じゃないぞ。変身ベルトだってまだどっかに…」
言い終わる前に大きな音と振動が来た。部屋が揺れ本棚から本が落ち棚が崩れる。
「大丈夫か?澪」「大丈夫?お兄ちゃん?」
壁に一部穴が空き外がよく見える。二、三軒先の屋根の上に2人組がいた。
白衣の方はバズーカみたいなものを構えている。
今にも2発目が来そうだ。
「おいおい。マジかよ…」
「お兄ちゃん!これ!」
澪が差し出したのは、古いおもちゃ。記憶の中にある。ヒーローになりきって遊んでいた頃の物。
でも、なぜかはっきりとわかる。
変身できる
轟音と共に2発目がくる。
「…私を守ってくれるんでしょ?約束。」
「あぁ、約束だ。今度こそ守るから。」
ベルトを巻き、叫ぶ。
「変身!」
着弾し、爆発。見慣れた部屋は吹き飛んだように見えた。
煙が晴れるとー
赤いヒーローがそこにいた。
ようやく力を使い出しました。




