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8、転校生

あれから二ヶ月。

あの日の葛西先生の涙の意味は、結局の所わからず終いだった。


あの後も何事もなかったように、葛西先生の態度は相変わらず事務的で、

毎日、車で家まで送ってくれていた。


休みの日に、二人で会ったり……


なんてあるはずも無く、個人的に電話やメールが来たりすることさえ、


ただの一度もなかった。




そんな所は葛西先生らしかったけど、


あの日のことは、夢だったのかも?

っと、さえ感じてしまいそうになった。




12月7日。


私のクラスに転校生がやってきた。

ほっそりしてて、身長170センチくらいはある背の高い男子だった。


「水城の隣が空いてるから、そこを使ってくれ」


広瀬くんが使っていた席だ。

私は葛西先生に言われ手を上げて合図した。


長身の彼はこちらをちらっと見ると

黙って座った。


四時間目の終わりのチャイムが鳴り、今から昼休みだ。


「あ!思い出した!麗ちゃんだ?!」

隣の転校生が私を指差して叫んだ。


「俺だよ、羽島健一はしまけんいち。覚えてない?

小児病棟で一緒だった、ほら、俺は喘息で麗ちゃんは…」


「もしかして、あの、健ちゃん?!」

私は最後までいい終わらないうちに、彼のことを思い出し口を挟んだ。


「俺はすっかり治ったけど、麗ちゃんの方は治ったん?つーかなんでここにいるの?」

「健ちゃん、その話は……ちょっとこっちきて」


私は他の子に聞かれないように、

健ちゃんを人通りの少ないとこまで引っ張っていった。


「健ちゃん、ごめん、学校では歳が違うこと内緒にしてて」


私は長身の健ちゃんに少しかがんでもらい、耳元で小さな声で話した。


「そうなん?!マジ?!知らなくて、ごめん、麗ちゃん」


健ちゃんは一緒の小児病棟に入院してた時、話し相手になってくれた子だ。


「大丈夫だよ。……それにしても健ちゃん、背、伸びたね~。前は当時の私とおんなじくらいか、むしろ低いぐらいだったのに」


私が知ってる健ちゃんは、今より30センチ以上は低かった。


「まあ、あの頃は小学生だったしな。

……俺、中学入ったら急にぐんぐん伸びて、気がついたらこんなん」


私と健ちゃんが二人で話をしていたら、

向こうから葛西先生がやってきた。


「水城、ちょっといいか?……」


葛西先生は遠慮がちに言いながら、

隣にいた健ちゃんのことをチラッと見た。


私は直感的に他の人には聞かれたくない話なのだと悟った。


「麗ちゃん、昼飯一緒に食おうぜ!俺、先に教室戻って待ってる」

健ちゃんは気を利かせたのか、そう言い残すと教室の方へ走り去った。



私は先生と進路指導室にいた。


「水城、すまないんだが、俺の事情で、明日からしばらく電車通勤することになってな、これからは帰り車で送ってやれなくなった」


この前、家の前でお父さんと話してた時は、卒業まで続けますって言ってたけど、

急に事情が変わったのかな?


葛西先生と帰れなくなるのは寂しいけど、

私の都合で、わがまま言って甘えてばかりいる訳には行かない。


「葛西先生……。私、もう一人でも大丈夫です。

今まで本当にありがとうございました」


私は深々とお辞儀をして出て行こうとしたら、

葛西先生に腕を掴まれた。


掴まれた私より、掴んだ葛西先生の方がビックリした表情をしていた。


「葛西先生?」


「いや……何でもない。頑張れよ」


葛西先生のその時の表情が少し寂しそうに見えたのは、

先生も私と同じ気持ちだったらいいなって、

私が思ってたからだったのかな?



「健ちゃん、おまたせ」

私は落ち込んでる気持ちを吹き飛ばそうと、

少し大きな声を出した。


「麗ちゃん?……どうした?先生になんか言われた?」


バレバレの空元気になってしまったようだ。


「何でもないよ。進路早く決めなさいだって」

「そっか、麗ちゃん悩んでるんだね。特にないなら、俺と同じ高校行く?」


高校かぁ。

現実的には、もう就職って歳だしなぁ。

でもこんな体じゃ誰もやとってくれないかなぁ。


そういえば……

葛西先生……なんかまた今日も様子変だったな~。



「それも、いいかもね」

私は半ば上の空で、なんとなくその場ののりで返事をしていた。

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