Ch.1 雲の影
頬杖をつきながら、私はきれいに磨かれた窓の向こうをぼんやりと眺めていた。
澄み渡る青空には黄金色の太陽が輝き、まるでふわふわの綿菓子のような白い雲が浮かんでいる。40階から見下ろすと、視界を遮る高層ビルは一つもなく、ただまだら模様の緑と灰色の街並みが遠くへと広がり、やがて青々と茂る深い緑の中へ溶け込んでいく。
ここで働き始めてから、もう三年になる。この間、当然のようにこの風景を何度も目にしてきた。しかし、こうして真剣に眺めたのは、これが初めてだった。灰色と緑が広がる大地に、陽の光が温かみのある黄色い輝きを落としている。以前はただ「見下ろす景色が綺麗だな」としか思わなかったのに、今この瞬間は、この景色のどこかに、自分には決して手に入らない美しい何かが隠されているような気がしてならなかった。
地上に、ひとつの巨大な影が落ちていた。それが雲の影だと気づくまでに、少し時間がかかった。雲の影は遠くの緑を飲み込んでいく。そして、私はその深い緑の中に、一頭の象がいることに気がついた。
象? 私は目をこすった。こんな場所に象がいるはずがない。しかし、それは確かにそこに存在していた。やがて雲の影が通り過ぎ、先ほどの象がただの青々とした樹林へと戻ったとき、ようやくそれがただの錯覚だったのだと知った。さっきまで美しいと感じていたこの景色が、今は急に悲しく思えてきた。雲の影の下に閉じ込められているのは、私という一頭の社畜も、同じだったからだ。
けれど、私は三年前、親友と一緒に見たあの一頭の象を思い出した。私にとって、あれは自由の象徴だった。嵐が訪れる直前にあの象に出会えたということは、きっと、何かが変わる前兆に違いない。
ピコン――
会社のチャットツールが、新着メッセージの通知音を鳴らした。私は、その時が来たと悟った。
『二十分以内に手元にあるすべての業務進捗をレポートにまとめろ。お前の仕事の成果を確認する』
案の定、上司からのメッセージだった。
昨日、彼と言い争いをしたばかりだ。今日になって早速嫌がらせをしてくるあたり、あまりにも予想通りすぎて、思わず笑ってしまった。
だから私も、昨日から用意していた返信を素早く打ち込み、躊躇うことなく送信ボタンを押した。
『退職いたします。引き継ぎの担当者を決めてください』
自作の短編小説をAIの補助を得て日本語に翻訳し、投稿してみました。お読みいただきありがとうございました!




