【第1話-落ち込んでいる少女】
──ある所に、部屋の窓から外を眺めて、落ち込んでいる一人の少女がいた。
椅子に座っているのに、まだ可愛らしい寝間着姿をしているその少女は、腰掛けていた椅子からゆっくりと立ち上がった。
少女は、机上に置いてあったキャップ付きのりんごジュースをゆっくりと味わい、やがて満足すると、飲みかけのりんごジュースのキャップをしっかりと閉めて、鞄の中に詰め込んだ。
先ほどから『少女』と説明していたが、『少女』といっても、彼女はこの言葉の響きほど若くはない。
見た目で言えば、もうすぐ18歳になるくらいといったところだ。
そんな年齢になっても、何故りんごジュースを飲んでいるのか?と聞かれれば、まだまだお子様だから。としか答えようがないだろう。
麦穂を思わせる淡い金色の長い髪と、宝石のような美しい翡翠色の目をした少女、アリス・ミラージュには悩み事があった。
アリスは、憂鬱そうに窓の外を眺めながら、深くため息をついた。
「はぁ、学園生活もあと1年しかないのに、実技の単位をまだひとつも取れてないなんて、私、本当に卒業できるのかなぁ…」
そう言った彼女の声には、少しの不安が混ざっているように感じられた。
「あっ、いけない遅刻しちゃう」
いきなり焦りを感じ始めたその少女、アリスは学園に遅刻しないために急いで身支度を始めた。
* * *
半寮制のフローティア学園に通っている高等科3年生のアリス・ミラージュは、魔術の名門であるミラージュ家の長女として生まれ、容姿端麗で魔術の才能もずば抜けており、学園内でもトップの成績を………
収めている"はず"だった。
だが、アリスは実のところ落第寸前であった。
もちろん、彼女は魔術の名門であるミラージュ家の人間だ。他の一般人と比べれば、明らかに類稀なる魔術の才能がある。
ただ、問題はそこではない。アリスが落第寸前な理由は別にある。
──彼女は、攻撃魔術が使えないのだ。
それは、魔術師であれば絶対に必要である、対戦相手や魔物を倒すための手段を持っていない。ということになる。
この致命的な欠点は、単にアリスが攻撃魔術に才能がない、という訳ではない。
実は、アリスの過去に起きたとある出来事が、今現在の彼女を縛り付けているのだ…。




