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「ランキング1位をとれる話を考えて」「よろこんで」  作者: gramgram


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第11章:微笑の暴力

王立教院に編入が決まったとき、母は「これで、あなたも認められる」と言った。

“誰に”とは言わなかった。言えなかったのだと思う。

父の名は、書類の端に小さく記されていた。

正式な家名は与えられなかった。

私は母方の姓――カスティエルを名乗ることになった。


学園の門をくぐった初日、私は制服の襟を整えながら、周囲の視線を受け流す訓練を始めた。

彼らは私の名前を聞いて、すぐに察する。

“どこかの妾腹だ”ということを。


誰にも話しかけられなかったし、話しかけようとも思わなかった。

昼食は一人。課題は一人でこなす。

それが私の“平穏”だった。

代わりに、私は勉強にすべてを注いだ。

成績は常に上位。誰よりも早く、誰よりも正確に。

それだけが、私の存在意義だった。

“家名”の代わりに、“学業”を背負っていた。


そんな私の前に、リアナ・ヴァルモントが現れた。

当初の彼女は、典型的な貴族令嬢だった。

高慢で、華やかで、周囲を従わせることに何の疑問も持たない。

同じ教室の彼女を、私は遠巻きに見ていた。

“ああいう人間には、私のような存在は見えない”と、そう思っていた。

ところが、彼女は変わった。

ある日を境に、誰にでも笑顔を向けるようになり、成績も急激に伸び始めた。

教師は彼女を褒め、生徒たちは彼女を慕った。

私は、自分の何かが削られていくような感覚に襲われた。

“学業”という唯一の拠り所が、彼女の笑顔と称賛の光に溶けていく様を、ただ黙って見ているだけ。

それがお前の運命だと、言われているような気がした。


ある日、図書室で本を読んでいた私に、彼女が声をかけてきた。

「あなた、ミレイユ・カスティエルでしょ?生徒会に入らない?」

唐突だった。

私は即座に断った。

彼女の目が、私を“記号”ではなく“人”として見ていることが、何よりも耐えられなかった。


それなのに。

ある日、机の上に生徒会の活動予定表が置かれていた。

その隣には、なぜか私の名前入りの名札。

そして、議事録のテンプレート。

……いや、待って。私、断ったんだけど。

「ミレイユ、今日の会議は三時からね!記録係よろしく!」

リアナが笑顔で言い放った瞬間、私は悟った。

この女は、まごうことなき貴族であると。




エーデル辺境伯領へ向かう船は、王立教院が誇る豪華客船《セレスト号》。

三層構造の甲板には白磁の階段が螺旋を描き、天井には夜空を模したシャンデリアが煌めいている。


深紅の絨毯が敷かれた廊下を踏みしめながら、私は金箔の装飾が施された船室の扉へと向かった。

そして、ほとんど蹴るようにしてそれを開け放つ。

蝶番が悲鳴を上げ、室内の空気が揺れた。

「騒々しいわね。船が沈むのかと思ったわ」

リアナ・ヴァルモントは、窓辺のテーブルでティーカップを傾けながら言った。

向かいにはアルウェル王子。彼は見開いていたが、カップは落とさなかった。

「旅行管理責任者ってなに?」

私は『旅のしおり』を握りしめたまま、リアナに詰め寄った。

「研修旅行が計画通り円滑に進行するよう、管理監督する責任者のことよ」

リアナは涼しい顔で答える。

その口調が、私の怒りに油を注ぐ。

「なんでそこに私の名前があるの? 署名した覚えがないけど」

「だって計画の監督は、計画の具体的な立案をした人間がやるのが一番でしょ」

彼女はさらりと言って、ティーカップをソーサーに戻す。

その音が、私の理性の最後の一枚を剥がした。

「……っ!」

つかみかかろうと踏み出した瞬間、アルウェル王子が慌てて立ち上がり、二人の間に体を滑り込ませる。

「落ち着いて、ミレイユさん! お茶がこぼれます!」

「したんじゃなくて、させられたのよ。あんたに!」

「粗暴な物言いはお里が知れるわよ、カスティエル嬢」

リアナは微笑を崩さずに言った。

「元市民がこのまま平穏無事に卒業したところで、お偉いさんの二号三号が関の山じゃない。お母さまみたく」

「今、母のこと言った!? 言ったよね!? 聞き逃さないわよ!?」

「私はあなたの能力を見込んでるの。先生方にはよしなにしてもらうから」

「偉くなったら、クーデターであんたを真っ先に国外追放よ!」

「お願いだから僕の前でそういう話はやめて……」

アルウェルが泣きそうな顔で言った。






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