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俺は走りながらリズに叫んだ。
「リズ! 一度こっちに来てくれ!」
リズはこちらに振り返ると意外そうにしながらも跳躍してきた。
「ソーコさん!? 大丈夫ですか!? そ、それになんで逃げないんです?」
「生憎過労死するくらい逃げるのは苦手なんだ。それよりよく聞いてくれ。今からあいつを倒す」
リズは驚きながら俺の話を聞いてくれた。
その間もロックワームは俺達を追いかけてくる。なんとか走って距離を取っているけど、だんだん息が上がってきた。
「分かった!?」
「は、はい……。でもそれじゃソーコさんが……」
心配そうにするリズへ俺は笑いかけた。
「大丈夫。二人ならなんとかなるよ。じゃあ、頼んだ!」
俺はそう言うとリズから離れていった。
「ちょ、ちょっとソーコさん!?」
リズは不安そうにしながらも走り続ける。すると予想通りロックワームはリズの方を追っていった。
当然だ。今戦力になるのはリズだけ。俺の攻撃なんて気にもしないだろう。
でもそれが命取りになる。
俺は落ちている岩の後ろに隠れた。そして様子を窺う。
リズはロックワームの攻撃を躱しながら俺の方をチラリと見た。
俺が頷くとリズも頷いた。そしてロックワームの尻尾を躱し、再び蹴りを放つ。
凄まじい衝撃にロックワームの体の一部が砕け散る。
『ガグオォ!』
叫び声をあげながらもロックワームはまだまだ元気だった。
怒りの形相でリズを追いかける。
そこでリズは一転して退いた。俺のいる岩の方に走ってきた。
俺は小さく息を吐いた。手に汗が滲む。
タイミングは一瞬。あいつが口を開けた瞬間。
全ての行動が少しでも遅れれば食い殺される。
そんな極限の状態でも不思議と気持ちは昂ぶっていた。
よく分からないけど、今すごく生きてるって感じがする。
こんなの感覚あっちの世界じゃ味わったことがない。
死ぬかもしれない今が、人生で一番生の実感があった。
ロックワームはもうすぐそばまで来ていた。
するとリズが逃げる速度を落とす。
それとほぼ同時にロックワームは大口を開けて飛び込んできた。
今だ――
「今です!」
リズがバックステップをするのと同時に俺はロックワームに向かっていった。
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
でかい口が視界を覆う。恐ろしいけど、ここで退いたら全てが終わる。
生き残るには前しかない。
ただ、前へ。
『グロロロロオオオオォォッ!』
咆哮を上げながら俺を食べようとするロックワーム。
その口の中に入った瞬間、俺は倉庫からある物を取り出した。
それは先程収納したロックワームの尻尾とさっきの戦いで捕獲したローリングストーンだった。
ガキンッ!
大きな音がすると俺が出した物に阻まれてロックワームの牙が頭上で止まった。
「よしッ!」
俺はロックワームの口の中によじり登った。
なにかを悟ったのかロックワームは体を捻りって俺を吐き出そうとする。
振り落とされそうになる中、俺は牙に突き刺さったロックワームの尾を足がかりにしてなんとか留まった。
もう一度体を捻ろうとするロックワーム。そこにリズの跳び蹴りが飛んでくる。
「させませんッ!」
『ゴガアアッ!』
一瞬だけどロックワームの動きが止まった。
これが最後のチャンスだと思った。
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉッ!」
俺は棚の少し高いところにある商品を取る時の要領でロックワームの口の中をよじ登っていった。
そしてクリスタルの目の前にまで来ると思いっきり右手を伸ばす。
「いっけええええええええええええええぇぇぇぇッ!」
クリスタルに触れた瞬間、ひやりとした感触がした。
それと同時に収納する。
「どうだッ!?」
するとロックワームはピタリと動きを止めた。
少しの沈黙。
そしてそのあとガラガラと音を立ててロックワームは崩れていった。
「やばっ!」
「ソーコさんっ!」
後一歩でロックワームの残骸に押しつぶされそうになった俺だったけど、間一髪でリズが助けてくれて外に出られた。
地面に着地すると俺とリズは顔を見合わせ、ホッとして息を吐いた。
生き残った。それが分かると全身の力が抜けた。
「し、死ぬかと思った…………」
「本当ですよぉ……」
リズも随分緊張していたらしい。加えて戦いの疲労からかぐらついてしまう。
「わ! わわ!」
「うおっ」
リズが倒れ、力が入らなかった俺はそのまま上に覆い被さってしまった。
目を開けるとそこには二つの柔らかな物体があり、俺の顔はそれにめり込んでいた。
や、柔らかい……。
なんてことを思っているとリズと目が合った。
リズは顔を赤くしながら苦笑していた。
「すいません……。転けちゃいました……」
「ご、ごめん!」
俺は慌てて体を起こした。顔にはまだあの感触が残っている。
お互いに顔を赤くする背後では、先程まで動き回っていたロックワームの残骸が静かに積み上がっていた。




