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ロックワームの残骸を全て回収した後は静かにその場を去った。
他のモンスターに遭遇しないよう抜き足差し足でどうにか地上に出ると外のテントでひとまず休む。
お湯を沸かして紅茶を淹れ、二人で飲んでいる間もさっきの戦いが思い出した。
まだドキドキする。
それくらいあの戦いは死闘だった。
同時にこんな戦いをずっと続けていたフリード達を尊敬する。
モンスターとの戦い。特に大型モンスターは後ろで見てるのと実際に戦うのじゃ緊張感が段違いだ。
それでも俺達はやり遂げた。
倉庫にはレアアイテムである『ロックワームのコアクリスタル』がたしかに収納されていた。
市場には滅多に出回らないからかなりの値が付くことは確実だ。
俺は生まれて初めての達成感に酔いしれていた。
なにかをやり遂げた。倉庫で働いていた俺があんなでかいモンスターを倒しちゃうなんて誰が想像できる? 俺もできない。
いかん。安心と嬉しさで頬が緩む。
俺がニヤニヤしているとリズは眉をひそめた。
そりゃあそうだ。電車で隣に座っていた人がいきなり笑い出すようなもんだ。そうなったら俺も怖い。
「あ。ごめん。気持ち悪かった?」
「え? い、いえ……。……っ」
よく見るとリズは気持ち悪がってるようではなく、痛そうだった。
「どうしたの?」
その問いにリズが答える前に理由が分かった。
リズの手足が血で滲んでいる。特に足が酷い。
そう言えば何度も何度もロックワームを蹴り続けていた。あんな岩を本気で蹴ったら当然怪我をする。
「大丈夫?」
「は、はい……。問題ありません……。……うぅ」
どうやら本当に痛いらしく、リズは取り繕うこともできてなかった。
「と、とりあえず街に戻って治療しないと。いや、ここで休むべきかな? えっと、えっと……」
するとリズは優しく微笑んだ。
「大丈夫ですから気にしないでください。これくらいすぐ治りますから」
そうなの? いや、かなり腫れてるし、重傷な気がする。
「ちょ、ちょっと待ってて! 誰かいないか探してくる!」
「ソーコさん!?」
いてもたってもいられない俺はテントから飛び出した。この辺りには冒険者も多い。治療ができる人が見つかれば診てもらえるかもしれない。
そう思っていると洞窟の中からパーティーが出てきた。
俺はその人達に頼み込んだ。するとカネを払うならという条件で回復魔法が使えるヒーラーの女の子が診てくれることになった。
フリルのついたナース服のようなワンピースに大きな帽子を被り、マスクを付け、杖を持った彼女をテントに連れて行く。
まさか獣人だとは思わなかったらしく、リズを見ると少し困惑してた。だけど負傷して横たわっている姿にすぐ診てくれた。屈むと大きな胸がたゆんと揺れる。
傷口に触れると彼女は難しい顔をした。
「……折れてますね」
「ええ!?」
「とりあえずは回復魔法をかけますけど、少しの間痛みが取れるだけで完治はしないと思います。街でお医者さんに診てもらうしかないですね。どちらにせよ完治にはかなり時間がかかると思います」
「そ、そんな……」
骨折。リズがいないとモンスターなんて倒せない。いや、それよりもそんなことになるまで頑張らせてしまったんだ。
情けなさを感じる俺に彼女は尋ねた。
「できるだけ早く治療した方がいいですね。どうしますか?」
「……できる限りの回復魔法をかけてください。お金は払います。それが済んだら近くの村まで俺が背負っていきます」
「分かりました」
女の子は何種類かの回復魔法をリズにかけてくれた。
すると痛そうだった表情が和らぐ。それでも腫れは引かなかった。
「終わりました。マーティアに着いて誰も診てくれないようならギルド本部経由で連絡をください。割り増し料金でよければ回復魔法をかけに来ます」
「ありがとう。えっと、名前は?」
「ルルです。フリーのヒーラーをやってます。風邪をひいた時とかも是非」
ルルはニコリと微笑んだ。
「ルル。助かったよ」
「いえ。怪我人は怪我人ですから。では」
ルルはそう言うとテントから出て行った。




