第53話 燃えゆく冒険者ギルド
活動報告にキャラクターヴィジュアルイメージを掲載し始めました。最近ハマってる流行りのAI生成イラストです。作風コロコロ変わると思います。都度更新予定です、もしよければご覧下さい。
炎に包まれた冒険者ギルドを中心に、街はまるで蜂の巣を突いたような大騒ぎになっていた。その喧騒の真っただ中へ、私は転移した。
夕暮れの空気を裂くように悲鳴が飛び交い、誰かが桶を運び、誰かが水魔法を放ち、誰かが必死に仲間の名前を呼ぶ。
煙は黒く立ちのぼり、焦げた木材の匂いが通りいっぱいに広がって、慌てて駆けつけた街の人々や冒険者たちが、半ばパニックになりながら消火に当たっていた。
次の瞬間、燃え盛るギルドの正面に突如現れた私に気づいた冒険者が、ぽかんとした顔で見てきた。
「……エ、エリュシェル様!!」
その声は驚きと歓喜が混ざったような響きを帯びていて、まるで救いを得たかのようだった。その一言で周囲の視線が一斉にこちらへ集まる。
バケツを持ったままの冒険者、袖を焦がした職員、ずぶ濡れの魔法使い――皆が嬉しそうに声を上げた。
「エリュシェル様だ!」
「助かった……!」
「もう大丈夫だぞ!!」
疲労と焦りで歪んでいた顔が、希望に満ちた表情へと変わっていく。期待の視線に包まれて、私は思わず口元を緩めた。
私の威光は鳴り響いてる様ねぇ!オーホッホッ!
これは魅せ場よね!?
「ちょっと下がってなさい」
軽く手を振ってそう告げると、彼らは条件反射のように道を開けた。炎は既に屋根を舐め、建物の大半を飲み込んでいる。
普通なら半日かかっても鎮火できるか怪しい規模だろう。幸い重厚な石造りの建物だから、燃え尽きずに耐えていた。
私は指先を軽く掲げ、魔力を空へと放つ。
「――天泪」
その瞬間、晴れていたはずの夕暮れの空が、ぐにゃりと歪むように暗転する。蒼い空の一点に黒雲が生まれ、それは瞬く間に膨れ上がり、まるで大地を覆い尽くす怪物のように渦を巻いた。
「な、なんだ……?」
「雲が……!?」
「天候操作……!?」
ざわめく声が広がる中、次の瞬間。
――ドォォォォォッ!!!
空から局地的に猛烈な豪雨が降り注いだ。
容赦なく降り注ぐ雨はギルドを包み込み、轟く水音と共に蒸気が噴き上げながら、燃え盛っていた炎はみるみるうちに力を失い、まるで命を奪われたかのようにあっという間に鎮火した。
「す、すげぇ……!」
「火が……消えてく!」
「大雨が……一瞬だぞ!?」
雨に巻き込まれてびしょびしょになりながら、感動と驚愕した表情で観衆らが歓声を上げた。皆の尊敬と憧れの視線を背に、雨の道を潜り抜け冒険者ギルドの扉を開く。
中は修羅場と化していた。
そこには同じように、ギルマスが檄を飛ばしながら屋内の消火活動をしている冒険者と職員が、必死に走り回っていた。屋内はまだまだ火がくすぶり続けている。
「水持ってこい!!」
「二階の火を優先だ!!」
大騒ぎで皆が駆けまわる中、私は神眼を発動させた。
視界に魔力の流れが浮かび上がる。壁の裏、天井の梁、床の奥――燃え残る炎の位置が、まるで灯火のように浮かび上がった。
そして同時に感じる、火にまとわりつく濃密な魔力の匂い。やっぱり、自然火災じゃないわね。
屋内全ての炎の在りかを捉え、その元へと精密に魔法を発動した。
「霊水衣」
燃えている場所に濃密な水のヴェールを一瞬だけ降ろす。
バッシャアァァッ!!
重い水流が炎を叩き潰し、ザバァッと勢いよく大量の水が屋内に流れ込んだ。瞬きの間に屋内の炎は全て消し去った。火事はこれでもう大丈夫だろう。
ぽたぽたと水が落ちる音が響く中、静寂が訪れる。しばらくして、バケツを抱えたまま固まってた冒険者たちが全員、同時にゆっくりこちらをポカーンとした表情で振り向いた。ギルマスも口を開けてポッカーンと見てる。男が見るな、金取るぞ?
そんな時だった。
「な、なによ……あんた……!?」
「ん?」
震える女の声が聞こえた。炎に気を取られてよく見てなかった正面の受付に、何者かが居た。
おっ!?
――そして私は、思わず目を見開く。
おっおっ、おっほお!!?
美女な魔女ちゃんがいりゅ!!!
三角帽子の下から流れ落ちる黒髪は腰まで真っ直ぐ伸び、光を受けて絹のように艶めいている。毛先だけがほんのり赤く染まり、炎を思わせるグラデーションが妖しく美しい。
その下で輝く瞳は、深い紅。ルビーのような光を宿した切れ長の気の強そうな吊り目が、驚愕の瞳で私を見ている。
豊かすぎるほどの胸元はローブの開いた襟から大胆に覗き、きゅっと締まった腰から長い脚がすらりと伸びる。ドレスのようなスリットから覗く太腿はしなやかで、成熟した乙女の色気がこれでもかと溢れていた。
そんな魔女ちゃんが――呆然とした表情で立ち尽くしていた。
「私の炎が……全部消えた……?」
ぽつりと漏れた声には、信じられないという色が濃く滲んでいる。魔女はゆっくりと周囲を見回し、つい先ほどまで燃え盛っていたはずのギルドの中を、まるで理解が追いつかないまま確認していた。
「一瞬で……?そんな……あり得ない……!」
自分の魔法を疑うように呟きながら、その場に立ち尽くしている。普段はきっと堂々としているであろう魔女ちゃんが、あまりにも綺麗に固まっている様子はどこか微笑ましいものがあった。
そして、ようやく現状を理解したように震えながら魔女ちゃんが叫んだ。
「あ、あ、あんた一体何なのよ!?」
焦った顔が、キャッワイイ!!!
瞬時に気の強そうな美女な魔女ちゃんを気に入った私。
だが――
「えっ……エリュシェルさぁん……」
「!!」
弱々しい声が、その後ろの方から聞こえてきた。
魔女から少し離れた所に、赤く腫れた頬を押さえ床に座り込んだミィちゃんがいた。
白い肌は痛々しく腫れ、涙で潤んだ大きな瞳が恐れを抱きながら私を見上げていた。倒れた拍子に何か当たったんだろう、服が破けて腕に擦り傷がある。
何で気付くのに遅れたんだ。一瞬で魔女の事など、どうでも良くなった。
「やっぱり、あんたなのね!エリュシェル・フォールン!!」
何か言ってる魔女を無視してすぐにミィちゃんに駆け寄り、見上げてくる彼女をそっと抱きしめた。
「ミィちゃん遅れてごめんね、大丈夫?」
「はぁい……大丈夫ですぅ……」
華奢な体が、安心したように私の胸へと嬉しそうに抱き着いてくる。私は小さく息を吐きながら、そっと彼女の頬に触れた。
「天癒恩寵」
聖なる光が私達を中心に煌めいた。ギルドの建物のみならず周辺一帯を包み込むように、柔らかな大きな光が大きく広がっていく。
淡い金色の粒子がふわりと舞い、まるで夜空の星屑が降りてきたかのように空間を満たしていった。
光はミィちゃんの体を包み込むと、腫れていた頬はみるみるうちに元の白さを取り戻し、腕の擦り傷も跡形もなく消えていった。
さらに大きく広がった光は、ついでに周囲にいた人たちの火傷や疲労まで優しく癒していく。余りにもオーバーヒールである。
「わぁ……すごく綺麗……!痛みも引いて……!ありがとうございます!」
「ふふっ、怪我は綺麗に治したわ」
ミィちゃんが目を輝かせながら、降り注ぐ光を見上げた。その表情は安心しきったようにすっかり元気を取り戻していた。
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