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紫陽花が咲いたら
飴野おとねは、雨が大好きだ。
そんな彼女にとっての天国・・・『梅雨』が、今年もついにやって来た。
おとねは毎日カッパを着込んでは公園に出掛け、紫陽花といっしょに雨を待つ。
おとねは昔、父親から「キミがそんなに雨が好きなのは、前世がカタツムリかカエルだったからなのかもしれないなァ」と言われたことがあり、自分でも「そうかもなァ」と思っている。
先日も、母親がスーパーで買ってきたニラにくっついていたカタツムリと、すぐに友だちになれた。
雨は、まだ降らない。
おとねとカタツムリと紫陽花が、雨はまだかと空を見つめる。
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大人はあまり、雨を喜ばない。
おとねもいつか大人になるけど、彼女はきっと、雨が好きな大人になるのだろう。




