絵魔女のクイナに関する報告
描いた絵を、魔法で本物にすることができる魔女のことを絵魔女という。
立派な絵魔女になるため、絵魔女の専門学校に通う子どもたちがいる。
そのなかのひとり、絵魔女一年生のクイナはエビフライを描くのが得意な女の子だ。
彼女が描いたエビフライは、とってもおいしいとクラスで評判だった。だからランチタイムになると、クイナのエビフライを食べたい子たちが周りに集まってくる。
「クイナ~、エビフライ下さいな~」
「わたしにも描いてくれ~」
「おっけ~。そこに整列して少々お待ちくだされ~」
クイナはスケッチブックにスラスラとエビフライを何本も描いていく。
「よし、完成~♪」
あとは、描いた絵に魔法をかければ本物のエビフライができあがる。
「ではみなさん、お口をあけて下さーい。行きますよ~」
エビフライが、みんなの口に向かって飛んでいく。
「はふっ、揚げたてや~」「なかみプリっプリ」「ころもサックサク」
「ナニコレ、うっま!!ちょっとクイナ、お代わりお代わり」「おっけ~」
クイナは、自分が描いたエビフライをみんなに喜んで食べてもらえることが何よりもうれしかった。
自分が描いた絵でみんなが喜んでくれる。絵魔女にとってこんなにうれしいことは他にない。
クイナはしあわせ者である。
ちなみに、誰が描いても同じ味のエビフライになるわけではない。クイナのエビフライに対する偏愛が絵に込められ、それが隠し味として機能するからこそ彼女のエビフライは特別においしくなる。




