周栗医むうに関する報告
周栗医むうは、シュークリームにストローを差して中のクリームだけを飲む。
中のクリームを吸い尽くし、皮だけになったシュークリームの残骸は冷蔵庫に入れておく。それはあとで父親が食べる。
むうの父親は血糖値が高く、数年前から甘いお菓子を控える生活を送っていた。しかし少しくらいなら食べても良いので好物のシュークリームの、その皮だけを食べて我慢している。
むうも本当はシュークリームをまるごと食べたいのだが「わたし皮きらいだから」と嘘をついて、いつもシュー皮を父親に譲っていた。
深夜、残業を終えて家に帰ってきた父親が冷蔵庫を開ける。シュー皮がラップにくるまれて冷やしてあり、小さな紙が添えてある。娘からの手紙だった。
「パパへ。しごとおつかれさま。きょうもクリームすっておいたよ。あとでたべてね。」
父親はシュー皮を肴にして缶ビールを飲む。ビールの苦味と、シュー皮の裏側に少し残ったカスタードクリームの甘さが疲れている体に染み入る。
娘がクリームをチュウチュウ吸っている姿を想像して、彼はふふっと優しく笑う。
この家ではシュークリームが父と娘の絆を深めている。




