第四話 再会
ピンポーン。
「はーい」
「「「お邪魔します!!」」」
「えっ!」
結月はびっくりして玄関で突っ立っていた。
まあ、無理もない。
俺らは結月に言わずに、サプライズで押しかけてきたんだから。
「結月ちゃん、急にみんなで来てごめんね? とりあえず上がってもいいかな」
愛はぼーっとしている結月の肩を軽く叩いて話しかけた。
大学四年生になって、就活も一段落したから、みんなで他県に行った結月に会いに行こうって話になった。
そして、せっかくだから、事前に結月に知らせずにサプライズにしようよって芽依が言い出した。
自分でいうのはあれだけど、なんか俺への恋が実らなかった同士、いつの間にか仲良くなっていたみたい。
まあ、芽依のほうはまだあきらめてないけどね。
高3の時は結月も交えて毎日昼ご飯食べていたから、はるとやれんと結月のわだかまりもなくなっていた。
それもそうか。もう7年も前のことだから。
中三のあの時から……
「やった! 鍋だ!」
急に来客が来たにもかかわらず、結月はテキパキと晩飯の準備を済ました。
冷蔵庫にある肉と野菜を取り出して、皿に綺麗に並べた。
それを見た芽依はまるで小学生のようにはしゃいでる。
「ごめんね、結月。俺はちゃんと連絡しといたほうがいいって言ったけど、芽依とこいつらはサプライズがいいって聞かなくて……」
「ううん、すごくうれしいよ。お兄ちゃん」
そう言う結月はほんとにうれしそうにしていた。
少し俯いてるのは、感動して目が潤んだのを隠すためだって、兄の俺には分かる。
「なに一人していい人のふりしてんだよ! いつき」
「いてっ」
葵は勢いよく俺の背中を叩いて、ツッコミを入れてきた。相変わらずノリがよすぎ。てか痛い。
「うふふ」
そんなやり取りを見て、結月は微笑んだ。
高3の時にみんなが昼休みに集まってバカやってたことを思い出したのだろう。
「ごほんっ、ところでさ……」
急にれんは咳払いして、なにか大事なことをこれから話そうとしているような雰囲気だった。
「結月ちゃん、おっぱいでかくなった?」
……
れんは相変わらずセクハラ魔人だった。
「いてぇよ! 何すんだ葵!」
「てめぇこそなんちゅうことを結月ちゃんに聞いてるんだよ! このボケ」
れんの発言によって顔が真っ赤になった結月は葵のパンチを見て破顔した。
「芽依、いい加減に結婚してくれ! 俺はもう三年半も働いてるから、そこそこ貯金があるんだよ!」
「やだよ。貯金が三億になったら考えてあげる」
はるとと芽依は相変わらず歯がゆいほど進展がない。
でも、はるとはこの三年間芽依のことあきらめずに必死に働いてた。
『芽依のために最高の結婚式を挙げるんだ!』
いつかそう意気揚々と宣言したはると。
きっといつか彼の気持ちは芽依に伝わるんじゃないかな。
「それにしてもここって遠いわね。新幹線の中でいつきくんは思い切り私の膝の上で寝てたよ」
うん? 愛、なぜ今それを言うんだ!?
「ふーん、いっき、私の太ももは愛ちゃんより柔らかいよ? 今膝枕させてくれたら許してあげる!」
ほら見ろ。俺が恥ずかしいのももちろんあるけど、芽依がこうやって過剰に反応するから、言わないでほしかったんだよね。
「芽依ちゃん、そうかもしれないけど、でもいくら柔らかくても使用してもらえなかったら意味なんてないよね~」
「ううっ」
愛の挑発に、芽依は唸り声を上げた。
「その代わりに、私のどこもいつもいつきくんに使用してもらってるわ~」
「いっき……ばか! ばか! ばか!」
「いつきばかりいい思いしやがって!」
芽依、れん、もう勘弁してくれ。
愛の言葉に俺がどれほど恥ずかしくてダメージを受けたのか分からないのか?
「れん、俺のことばかり言うけどさ、お前だって葵の……その、使用してるでしょう」
れんと葵は一年半前に、専門学校を卒業して同じ会社に就職した。
そして、なるべくしてなったというのか、二人はいつの間にか付き合っていた。
まあ、専門学校も会社も一緒で、毎日ボケとツッコミを繰り返していたら、そういう仲になってもおかしくないか。
「いたっ!」
「いつき、お前、私の前でそんなことを言える度胸があるのはほめてあげるけど、死にたくなかったら口を噤むんだな」
忘れてた。葵が近くにいたんだった。
「芽依、結婚したら、俺も毎日芽依の胸使ってあげるよ!」
「はると、帰りは走って帰れ……」
芽依は怒鳴りつける代わりに、死ぬよりきつい罰をはるとに課した。
なんでこういう話の流れになったんだろう……
「ところで結月ちゃんはだれかに使用してもらってるの?」
急に結月に向けられた愛の言葉に、結月は顔を真っ赤にして俯いたまま黙りこくった。
まあ、本人にしか分からないよね。
「俺、てっきりいつきが監督で、姫宮さんが女優になると思ってたな」
「あっ、俺も」
「まあ、大学でいっぱい映画撮れたし、もういいかなって」
はるととれんのつぶやきに、俺は苦笑いしながら答えた。
「お前がそういうなら、それでいいけどよ」
ほんとはそういう道もあるのではないかと思ったが、大学三年生の時に俺が監督を務めた映画は文化祭で大反響だった。
みんなに俺の見せたいものを見せられたから、俺は普通に就職する道を選んだ。
やはり、俺は愛と結婚するつもりだから、愛の幸せを考えるなら普通に就職するのが一番だね。
愛もそんな俺と同意見で、金融系企業の内定をもらっている。
愛ほどじゃないが、俺も大企業の営業職の内定をもらった。
芽依はというと、俺に付いてきて、同じ会社に面接して事務職の内定を取ったし、結月は大学のある県の会社に就職することにした。
あと半年したら、俺ら四人もはると、れん、葵と同じ社会人になるんだな。
そう思うと少し感慨深い。
「わ、私はまだです!!」
ずっと俯いていた結月は急に顔を上げて、意を決したように三十分前の愛の質問に答えた。
どうやら、結月のおっぱいはまだ未使用のようだ。
兄としては安心かな。
高3のあの日、愛に話したように、俺たちは何年経ってもこうやって集まって笑えるのだから。




