第73話 謁見
「奥様、マナミ様、旦那様がお呼びです。」
バトさんがやってきた。
「マナミさん、行きましょう。」
ドアを開けるとバトさんと大蛇解体の侍女さんが佇んでいた。
「奥様、そのドレスは・・・?」
「マナミさんが治してくれたんです。」
「いや、血が付いた筈何ですが・・・それに穴も開いてしまって・・・一体何をしたのですか?」
別に秘密というわけではないのだけれど、僕は一度ラックさんの方をチラッと見てラックさんは頷いたのを確認した。
「固有魔法を使って血を落としたり、ドレスに付与魔法で固有魔法を付けました。」
侍女は、え?という表情になりバトさんは何かを考えていた。
「マナミ様、その会得した付与魔法も固有魔法なのですね?」
ん?どういう事なのだろうか?
「私が説明します。付与魔法は難しいですが、努力すれば誰でも会得できます。しかし、固有魔法は付与できません。バトさんの仰る通りマナミさんの付与魔法は固有魔法であり通常の付与魔法で付与することができない固有魔法のみを付与する事ができます。」
へぇ〜そうなんだ。
「マナミ様、今なら巻物を造れるのでは?」
僕は、どういうこと?となってしまった。
「あ、成る程。それは私から後で説明します。ありがとうございます。バトさん。試してみる価値はありますね。」
今のでラックさんは理解したようだ。
後でゆっくり聞くとしよう。
王座がある部屋の前までやってきた。
扉が開き先程呼ばれていたリリアンさんとアリシアが騎士に連れてやってきた。
「妹エルフ、後で話がある。詳しくは紙を見てくれ。」
アリシアはすれ違い様に、そう言って周りには気付かれないように僕のズボンのポケットに何かをねじ込んできた。
「陛下、御二人をお連れしました。」
「そうか、入れ。」
王座の間に入ると騎士と侍が通路の脇に並んで剣を構えていた。
西洋風なのか和風なのかよくわからないカオスな空間と化していた。
「我が婚約者とその妹のエルフよ。よくぞこの城に参られた。私の名はワンフォー・スリー・ドット。一応、二人の名を聞いておきたい。」
(ちゃんと皇帝陛下してるんだなぁ。)
僕とラックさんは皇帝陛下とは初対面だ。
(え?城まで一緒に来たって?アレは先輩冒険者のエンさんです。)
「Cランク冒険者のブラック・ネームです。騎士の皆様、今後共、よろしくお願いします。」
「お初め御目にかかります、陛下。私は彼女の妹(設定)でCランク冒険者の固有魔導書、マナミ・クロセです。」
僕たちが名乗り終えると騎士や侍、大蛇解体の侍女さんの紹介がされ、いよいよ本題に入る。
「ここからが本題なのだが、妻になるに当たり冒険者を辞めてもらいたいのだが・・・」
やらかしたな。そう思ってラックさんの方を見ると怒っているのが解るくらいの笑顔になっていた。
「貴方がそんな事を言うとは思いませんでした。さようなら。」
そう言ってラックさんは出て行ってしまった。
バトさんと侍女は呆れて通路の脇に居る騎士や侍達は笑いをこらえていた。
「謝ってきた方が良いですよ?お義兄様。」
心配なのは解るんだけど、彼女は冒険者をやりたくてやっているのでいくら婚約者と言えども止める権利はない。
「・・・そうだな。謝ってくるとするか。」
頭を掻きながら狼狽えている姿は皇帝陛下ではなく、いつも気軽に接している先輩冒険者であった。




