第60話 試験の意図2
開始が宣言されると誰かが話しかけてきた。
「皇都アールツー、冒険者ギルドマスターの執務室へようこそ。改めまして私がギルドマスターのーーーーーです。」
その声の方を向くとーーーーーが居た。
「君とはゆっくり話そう。」
そんな暇はない。パーティー丸ごと試験中なのだから。
「まぁ、直ぐには失格にしないよ。君は勘がいい方だね?いつから本体が私だと気がついてた?」
やっぱり、目の前にいる人物が変な人の本体なのか。
「おじさんが4人になった辺りですかね。」
「本当はその前じゃないか?」
「ええ。」
実を言うと違和感があった。
ギルドマスターが出てきたのにギルド内が騒ついでいなかった。
イースの冒険者ギルドではトレジャーさんが受付に来ると少しだけでも騒がしくなる。
けれど、このギルドではそれが全くなかった。
そこから考えられる事は、ギルドマスターが偽物か、既にそこにいたか。
または、その両方か。
「そんな些細な事で見破られるとはね。
ラックちゃんはエルフの森に遊びに行った時に会った事があるけど名乗りもしなかったし、人の姿を見せていなかったから助かったよ。」
人の姿?という事は人じゃないのかな?
「ギルド共有の資料はウェスティンの街で作られてた。つまり、マドちゃんが作ったから何らかの情報は伏せている筈だから情報通りではないと睨んでいたけどここまでとはね。一体君は何者だい?」
当然、その問いには答えられない。
「まぁ、大方の見当はつく。それより仲間の様子が気になる?なら水晶玉でみようか。」
そう言って何かの呪文を唱えた。
水晶玉には森にいるアリシアが映っていた。
「あれ?おっちゃんの得物がいつの間にかないな。」
アリシアはおじさんが出す全ての武器を奪っていた。
そして、それらをどこかへ消している。
「魔法は一通りできるが、やっぱり空間魔法だけは苦手だな。武器だけ回収しようとすると前もって準備が必要になるからメンドーだ。」
どうやら僕のスキルの収納と同じ様に空間魔法を使い何処かにしまっている様だ。
盗賊として生きてきた彼女は、その技術を使いかなり善戦している。
「さて、問題は勝ち負けじゃない。彼女の強さはCランクを超えているだろう。彼女への課題は、君たちと共に戦えるかだ。知り合って間もないのだろう?」
鋭い所を突いてくるな・・・。
ラックさんと僕は互いに背中を預けて戦える程の信頼関係だが、他の2人は・・・。
特に僕らを襲ってきたアリシアを信用していいのだろうか?
個々がどんなに強くても背中を預けられなきゃパーティーはやってられない。
「彼女自身がそれに気がつけれは合格かな。それじゃ、次はリリアンちゃんを映すよ。トレ坊とウィズちゃんの娘みたいだけど・・・職員から冒険者になったんだっけ?さてさて、どのくらいの強さなのかな・・・え?」
目の前のギルドマスターの表情は驚きに満ちて言った。
水晶玉に映ったのは、大量に山積みになっているおじさんであった。




