第58話 パーティー
「そうです。私がギルドマスターです。」
いや、間違いなく変な・・・触れるのはやめておこう。
「絶対、変態です!」
「いろんな国を渡ってきたが、あんな服は見た事ないぞ。一体どこの民族衣装だ?」
「ダーリンはあんな格好しないですよね?」
ヒソヒソとそう言う3人のギルドマスターへ向けている視線は冷たかった。
「遺跡に行くなら今は通行止めになってますよ。」
変なお・・・もとい、ギルドマスターの後ろから女性が現れた。
「申し遅れました。秘書のストレンジと申します。以後お見知り置きを。」
「イースの冒険者ギルド職員兼Cランク冒険者、リリアンです。先程の通行止めの話ですが、何かあったのですか?」
「何でも、影の狼が出たとか。この皇都にも討伐できるパーティは居るのですが、現在、遠方にて依頼をこなしていまして・・・。」
「私たちで討伐に行きましょう。」とラックさん。
「駄目です。Cランク冒険者では行かせられません。」
そうなりますよね。
「お嬢ちゃん達、おじさんと遊ばない?」
言い方が完全にセクハラです。
「マスター、セクハラです。」
「違う、違う。アリシアたんが1人だけFランクだと不都合が多いいからCランクまで引き上げようと。」
「たん」って彼女は大人なんですが・・・。
「あのおっさん、気持ち悪りぃな・・・」
流石に、アリシアも引いている。
これだけセクハラが酷いので、ストレスによる怒りで狂戦士が目覚めてもおかしくない。
ブチッ
あ、キレたな。
「あのおっさんをシバきたい。手貸してくれ。」
狂戦士さんが目覚めました。
「そうだな・・・お嬢ちゃん達は集団で模擬戦闘とかやった事ないだろ?試験内容はそれにしよう。」
試験を受けさせて貰えるのは有難いが、陽が沈み始めていて本日の試験官はもう帰宅している筈なんですが・・・。
「それなら、おじさんとそこのストレンジが相手をするから。」
4対2なら何とかなりそう。
「おじさん、分身が得意でね。」
そう言って彼は4人に増えていた。
・・・更に増えないよね?
「よし!的が増えたな。さっさと殴らせろ!」
ちょっと待ってください。建物を壊す気ですか?
こっちのリリアンさんは血の気が多くて困る。
「魔法で試験場を作るので、暫しお待ちを。」
そう言ってストレンジさんは何かの呪文を唱え始めた。
「空間魔法ですかね?あの秘書さん、相当な魔導師ですね。」
魔法を使う事に長けているラックさんがそう見立ているので、間違いはないと思う。
そうなると、かなりの実力者で厄介な相手になる。
「出来ました。準備が整い次第こちらからどうぞ。」
と言ってストレンジさんがドアを出した。
「準備はいいですか?」
ラックさんが僕たちに確認してドアに入る。
「アタイの試験だし先に行くな。」
「この先に的があるんだな。」
的ではなくて試験官です。
そして最後に僕がドアに入った。
ドアを抜けると、そこは誰かの執務室だった。
「ラックさん?リリアンさん?アリシア?」
辺りを見渡したが誰もいなかった。
「これより模擬戦闘を開始します。」
集団での模擬戦なのに、いきなり分断からスタートとは、かなり意地悪な試験だ。




