第50話 受付嬢と教授
エルフィアの村に報告に行ってから数日後、
遺跡の調査の日がやってきた。
僕たちは、いつも待ち合わせに使う噴水の前にいる。
護衛対象が来たようだ。
「ダーリン、おはよう♡」
お姉ちゃん?いい加減に仕事モードに入って下さい!
リア充を爆発させる固有魔法でも創ろうかな?
あれ?もう1人来た?
え?・・・何でリリアンさんがいるんですか?
「すまねぇ・・・ギルドマスターから監査を入れたいと申し出があった。
それで受付のリリアン嬢・・・、
職員のリリアン・ハントさんが監査役として、同行することになった。」
「おはようございます。折角、パーティー設立に立ち会ったのだから私が同行しようかと思いまして、父をきょ・・・ギルドマスターを説得して来ました。」
気のせいだよね?
脅迫って言いかけたんじゃないよね?
エンさんが、ヒソヒソ声で話しかけて来た。
「マナミの嬢ちゃん、彼女はな・・・ギルド職員になる前に、確か10歳の頃かな?素行の悪い冒険者に絡まれて・・・」
現在、あれだけの美人さんなら幼い時は可愛かったのだろう。
と言うことは・・・
「嫌な目に遭ったんですね。」
「イヤ・・・全員治癒院送りにしたらしくてな。それを見て止めに入ったギルドマスターや高ランク冒険者達も次々と意識不明に・・・」
え?返り討ちに!?
それよりも、あの筋肉隆々のギルドマスターが意識不明って・・・一体何があったんだろうか?
「何か言いましたか?エンおじ様?」
いつもは受付嬢の癒される笑顔なんだけど・・・今の笑顔に深い意味はないよね?
てっきりギルドマスターの娘だから皆、気を遣ってたのかと思ってたけど・・・、
そういう理由で冒険者達は彼女の窓口を避けていたのかな?
そうは見えないんだけどな・・・。
「風の妖精様、例の件、おめでとうございます。相手がそこにいるからといって、仕事中はイチャつかないで下さいね?こちらも監査の仕事ですので・・・」
「忠告、ありがとうございます。気をつけます。」
ラックさん、既に先程、やらかしてますからね。
自重して下さいね。
門までの道中、リリアンさんの実力がどの位なのかエンさんに聞いてみた。
「他人の事だから断言は出来んが・・・多分Bランク以上だな。ギルマス譲りの物理攻撃と学園長譲りの魔力があるってのは噂で聞いたことがある。」
それって高ランク冒険者の資質があるって事だよね?
「闘技大会に誘ってみますか?」
「私は賛成です。
数日間ギルドでメンバー探しを兼ねて冒険者達の情報を集めて知ったのですが、彼女の二つ名【微笑みの狂戦士】だそうです。強そうですよね〜。」
ここ数日学校が終わったら別行動を取って何をしてたのかなと思ったら情報収集してたんだ。
(真面目にメンバー集めしてたんだ。
てっきり愛しの旦那様の所に行ってるのかと思った。ごめんなさい。)
門に到着すると教授達、調査隊は既に待っていた。
「おお、ブラック君とマナミ君。おはよう。君達がマドリーさんのお孫さんとは知らずに・・・。
ブラック君、おめでとう。
直接話すのは久しぶりですね、ドット。」
おめでとう?まさかね・・・。
「おはようございます。お久しぶりです、教授。パーティーの解散以来でしたか?」
はい、そのまさかでした。
この教授も伝説のパーティーの一員だったんですね。
「そうですね、あの時以来ですね。私の方は帝国の祭典で君の姿を見ているので久しぶりとは感じないですがね。」
エンさんで隠れていたリリアンさんが教授に声をかけた。
「おはようございます。ジェームス伯父さま。」
「おはよう・・・え?リリアン?
君も来るのかい?レジャーとウィズは許したのかい?」
「もう子供じゃないんですよ?
それに今回は仕事です。
あと、たまには帰宅してください。
ウォール伯母さまが、『ウチの亭主は何で帰ってこないの?まさか、浮気?』って呟いていたので・・・」
教授の顔が青ざめていた。そして、
「ちょっと出発時間を遅らしてもらっても大丈夫でしょうか?」
と言った。
僕を含めてその場にいた人は苦笑いをするしかなかった。




