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一歩、二歩

 大学で知り合った彼女。


 卒業して、僕と彼女は長い間、遠距離恋愛をしてきた。

 

 結婚してください。


 遠距離になるとわかっていたのに。


 僕はその一言が言えずに、また、一日が終わろうとしている。


 その一言を伝えたら、彼女はOKしてくれるのだろうか。


 それが怖くて、言えなかった。


 僕が遠くへ行くと知っても、別れるという選択肢を選ばなかった彼女に。


 いつ帰るかもわからないのに。


 寂しい思いをするとわかっていて、待っていてくれる彼女に。


 僕は臆病なのだ。



 




 そんな彼女から一通の手紙が来た。


 いつもはメールとかLINEなのに。


 久しぶりに見る彼女の字は、前よりきれいな気がした。








 優一くんへ


 久しぶりに手紙を書くと緊張します。


 優一くんは今、どの辺りを歩いていますか。


 私はまだ、人生の半分も歩いてません。

 

 年齢的なことじゃなくて、気持ち的なものです。


 優一くんと、すぐにでも一緒に走れるように、私はゆっくりゆっくり歩いています。


 いつでも走れるように準備しながら歩いているのです。




 そして、歩きながら想像します。


 天気がとても良くて・・・。


 想像してみてください。


 ふたりで手をつないで、目を合わせて。


 気持ちの良い風が吹く丘で。


 マットを敷いて横になるの。


 


 この手紙を書くことを決めてから、全然眠れませんでした。


 病気なのかもしれません。


 私は、あなたのことをとても好きなんだなと実感しました。




 あなたが私から一歩、二歩遠くに行くなら。


 私は三歩近づきます。


 私たちの距離がこのままずっと離れませんように。


 もしも、あなたが一歩、二歩近づいてくるなら。


 私はそこから動かないで、立っています。


 私たちの愛が早く感じられないように。


 


 どうか、躊躇わないでください。


 私に近づくことを。


 あと少し、ほんの少しでもいいの。


 これ以上遠くに行かないでください。


 私たちが一緒になるには、これ以上離れないで。


 もっと近くに来てほしい。


 


 私が優一くんのことを好きだということ。


 今すぐにでも私の口からあなたに伝えたい。


 そのことを忘れないでいてください。


 






 僕はいますぐにでも彼女の元へ走っていきたかった。


 けれど、彼女との距離は遠くて、走っていくには時間がかかりすぎる。


 僕は急いで飛行機に乗った。


 彼女に伝えなければならない。


 彼女にこの気持ちを今すぐにでも伝えたい。


 彼女も同じ気持ちなのに。


 どうして僕はもっと早くに気づけなかったのだろうか。








「結婚してください。」



















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