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2話 β-quest並びにBarbaroi Online、起動

 β-questの入った箱を開けると、出て来たのはビニールに入った白い本体と黒いケーブル。


 目に入ったのはそれだけ。


 普通こういうものって説明書と保証書が入ってることが多いが、どこにも見当たらない。


 これは仕様なのか?


 電子機器だぞ?


 保証書はまだしも、説明書くらい入っているはずだろ?


 箱を触る。


 異変という異変もない。


 強いて言うなら……。


 ドンドンドン


 箱の底を叩く。


 トントントン


 次に側面。


 ほんの少しだけ音が違う。


 ダンボールはボール紙を折りたたまれて作られる。


 底と側面にそこまで厚さの差は出ない。


 おかしい。


 カッターで底の四辺に切れ込みを入れる。


 そうして判明したお遊び程度の二重底。


 そんな、機密が入ってるわけでもないだろうに。


 二重底に隠されていた紙にはこう書いてあった。


 "故障時にはこちらを会社までお送り下さい。"


 隠す必要性はわからないが、保証書みたいなものか。


 ………。


 説明書は?


 ないじゃん。


 諦めた俺は、ソフトの箱を手に取る。


 念入りに箱を触ってみたのだが、こっちには何も細工がない。


 ソフトの入ったSDと、説明書と、保証書。


 さっきが異常だったのだ。


 二重底とか。


 時計を見る。


 箱を開け始めた時間から約20分経っている。


 つまり、箱を開けるのに約20分かかったということだ。


 ………。


 俺は考えるのをやめてハードにSDをぶっさす。


 そして横になって頭に装着。 


 そしてようやく側面についている電源ボタンに触れる。


 "β-questへようこそ!接続するネットワークを選択してください!"


 耳からではない。


 頭の中から声が伝わってくる。


 ズラッと並ぶネットワークの数々。


 パッと選択する。


 どうやって選択するかって?


 意識するだけでいいんだ。


 ほんとにどういう技術使ってるのだろう。


 脳波ってやつか?


 "ネットワークのパスワードを入力して下さい!"


 キーボードが出てきた。


 これも打ちたい文字のところに意識を向ければすぐに反応する。


 素晴らしい技術力だ。


 "プレイするタイトルを選んでください!"


 そうアシスタント(?)に言われたが、タイトルは一つしか入ってない。


 「Barbaroi Online」だけだ。


 そのアイコンに意識を向ける。


 壮大なBGMが流れ、仰々しい映像が流れる。


 俺はこういう余興は見ない派なので、画面の右上にあるスキップボタンに意識を向けた。


 "生体情報を取得します。電源を切らないでください"


 そう言われても、まだ俺は電源の切り方以前にどうやってこの画面から抜け出したらいいのかもわからない。


 "生体情報を取得しました。名前を入力してください。"


 名前はもう決めてある。


 いつものだ。


 "ザックでよろしいですか?"


 「はい」に意識を向ける。


 "プレイヤー名'ザック'。あなたの人種を選択してください。"


 今のご時世、それは相当ギリギリな発言だと思う。


 出てきた種族は人間、獣人、エルフ、ドワーフの四つだ。

 

 人間・・・何でも出来るが、何かを極めるのには不向き。器用貧乏。

 獣人・・・身体能力が秀でているが、魔法は身体強化系以外使えない。

 エルフ・・・魔法に秀でており、弓の名手でもある。ただし、打たれ弱い。

 ドワーフ・・・生産に秀でおり、力も強い。だが、機動力がない。酒を定期的に飲んでいないと一定時間ごとにダメージ。


 迷うな。


 ドワーフはなしだと思う。


 使いにくそう。


 うーん。


 人間かな。


 生産したいし、作ったもので戦ってみたい。


 魔法も使ってみたい。


 なら人間が妥当なのかな。


 俺は「人間」に意識を向ける。


 "人間でよろしいですか?"


 「はい」に意識を向ける。


 "あなたの特性を5つ選択して下さい。"


 うわぁ。


 めちゃあるじゃん。


 ええっと、4列が1、2、3……49、50行だから200個か。


 しょうもないのも結構ある。


 「食いしん坊」とか、「冷え症」とか、「脳筋」とか、「質より量」とか……。


 意識を向けても、それが選択されるだけ。


 特性についての説明は出てこない。


 うーん。


 どれにしようかな。


 ぱっと見、打たれ強い」とかは使えそう。


 でも、ありきたりな構成にしたくないんだよな。


 悩むなぁ。


 俺はこれに30分もかけた。


 "では、あなたの特性は「手先が器用」、「目がいい」、「酒豪」、「食いしん坊」、「大躍進」でよろしいですか?"


 「はい」に意識を向ける。


 "最後に、あなたのアバターを制作して下さい。"


 めっちゃいじれる。


 スライダーを右へ左へと動かすだけで、そのアバターの印象が変わる。


 スライダーは1024段階ってところか。


 スライダーの項目は、目の位置(上下)、目の位置(左右)、目の大きさ、眉毛の大きさ、眉毛の位置(上下)、眉毛の位置(左右)、まつ毛の長さ、口の位置(上下)、口の大きさ(横)、口の大きさ(縦)、鼻の位置(上下)、耳の位置(上下)、身長。


 選択する必要があるものは、初期の髪型、骨格、目の形、鼻の形、耳の形、輪郭、皮膚の色、虹彩の色、毛の色、髪型。


 スライダーの数値のところに直接数字を入力できたので、全て9999にしてみたら人外が出来上がってしまった。


 それは置いておいて、真面目にアバターを作ってはみたものの、どうも特に顔がしっくりこない。


 どうしようもなかったから、奥の手を使った。


 画面右上にある、「顔スキャン」を使って、自分の顔を読み込ませる。


 そうして、出てきた俺の顔をベースにいじる。


 毛の色を黒から茶に変える。


 学校では髪を染めるのは禁止されていたから、やってみたかったのだ。


 虹彩は蒼く、眉毛と目は少し細めに。


 身長は175cm、俺の身長と同じくらいに、骨格は俺に似せて……。


 そうして出来上がった、俺ではない俺。


 "これでよろしいですか?"


 はい。


 "では、良い旅を!"


 一面が白につつまれた。


 その白さたるや、飛行機が雲の中に入ったかのようだった。

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