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伝説の系譜

【鉄壁の数式 タウエンツェーン】



 兵とも呼べぬ新兵を率いて、タウエンツェーンが合流してきたのは休戦明けすぐだった。


「あんたの言う通りだ、王太子。精神論だけではナポレオンは止められん。外縁は削られ、我らの背後はもうない」


 泥だらけの外套を脱ぎ捨てる彼を見て、ビューローは懐の遺稿を強く握りしめた。


 弟ハインリヒが崇拝した伝説の戦略家・ハインリヒ親王。

 その副官として「戦わずして勝つ算術」を最も近くで学んだ右腕こそが、このタウエンツェーンだった。


「ビューロー、弟君の遺稿を見せてくれ。あの日、ハノーヴァーの夜に理解すべき事を、徴兵をして始めて納得した。兵士一人一人にも人生があると。親王が損害を嫌った理由に心から同意した。そして君の弟が、親王の知性を誰よりも正しく受け継いでいたのだと気付いた」


 タウエンツェーンの瞳から、かつての憎悪は消えていた。


「アウエルシュタットの追撃戦で、私は王太子に美しく『詰まされていた』。だからこそ認められなかったのだ、己の無力を……!」


 彼はふっと息を漏らし、自嘲を交えた晴れやかな微笑を浮かべてベルリンの空を仰いだ。


「だが、親王の算術を知る者は我々だけではない。あの参謀本部で猛獣どもの手綱を握るミュッフリンクも、親王に仕え同じ数式を解いた仲間だ」


「あいつはブリュッヘルらの『気合』を作戦に翻訳するため、今も胃を痛めているでしょうな」


 ビューローが同情するように言うと、タウエンツェーンも目元を優しく和らげた。


「あいつの胃薬代を、無駄にするわけにはいかん」


 親王の頭脳を「実務」で継いだタウエンツェーンと、「軍事幾何学」に昇華したビューローの弟。

 二つのハインリヒの魂が、いまベルナドットを中心に完璧に組み合わさった。


「アウエルシュタット後のあの完璧な包囲を、今度はフランス軍相手にお願いしたい。親王の遺志を、あんたの描く『盤面』に組み込んで頂きたい」


「はじめからそのつもりだ。タウエンツェーン閣下よろしく頼む」


 ベルナドットは力強く頷き、広間に集った将星たちを見渡した。


「これからは私が計画を立て、貴公たちが軍を指揮することになる。だが、完璧な連携による勝利以外は認めん。──諸君! 親王の、あの『軍事幾何学』の続きを、ここから始めよう」 

 タウエンツェーエンはビューロー以上に無名ですが凄い戦歴です。大概にバグっている北方軍ですが、その中でも最強のキルレ比を誇ります。

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