第2話 誕生
目が覚めて、感じたのはただ闇に揺蕩うような感覚だった。
声を出そうとしても出ない。体を動かそうとしても動かない。何も見えない。深呼吸も出来ないが、酸素に困る、というようなことは無い。
(何があったんだ......思い出せ!)
そうだ、いつも通りの部活をしていたら急に空が暗くなって、靄が僕達を飲み込んだのだ。
しかし、記憶はある。
あの靄が原因で死んだ、という線も考えられるだろうが、記憶はあるのだ。
ということは、ここは死後の世界ではない......と信じたい。
だが、案外死んでしまっても記憶は残っているのかもしれない。
そんな事を考えていると、急に僕のいる空間が歪みだした。
そして頭を締め付けられる感覚。
(痛い......頭蓋骨が割れるッ)
激痛を感じて数秒後に頭の締め付けは無くなり、光を感じた。
そしてあの拘束されているような感覚は消え、動けるようになるが、動きは緩慢だ。
そして、息苦しくなり、僕は思い切り息を吸いこんだ。
「ぷはぁぁぁぁっ」
息苦しさからは解放されたものの、目が開かない。更に、僕は誰かに抱えられているらしい。
「〜〜〜〜〜〜〜〜?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!」
そこまで理解すると同時に、誰かの声が聴こえた。何語だろうか。理解は出来ない。
初めて聞く言語だ。
ひとまず、なんだか体がだるい。
頭もあまり働かない。
僕は、そして意識を手放した。
次に目が覚めると、今度はなんとか目が開いた。
ぼやけてはいるが、僕は女の人に抱えられているらしい。
更に、徐々に鮮明になっていく視界の中で、学校の備品のようなものは一切ない。
ここまでくれば、認めるしかない。
僕は、あの靄のせいで異世界に飛ばされた。
赤ん坊となって。
......もしこれが産まれてくるはずだった子供の体を乗っ取るかたちでの誕生だったら嫌だなぁ、なんて思ってしまう。
まぁ、ひとまず僕の母親なのだろうこの女性とコミュニケーションをとらねば。




