第1話 黒虚の顎
すいません(;_;)なんか内容が納得いかないので1話からやり直します。┏○ペコッ
一応、最初の4話も残しときますけど新たなスタートになってます。消した方がいいかとも思ったんですが、なにか勿体なくて( ̄▽ ̄;)でわ、4話分は一気に行きます( * ॑꒳ ॑*)よろしく(*´∀`)ノ
# 第1話 黒虚の顎
黒い霧が、ゆっくりと岩肌を這っていた。
その霧の向こうに口を開く巨大な洞窟を見上げながら、一人の男が地面にしゃがみ込む。
カイル・ヴァンガード。
エルドバルト王国において、彼の名を知らぬ冒険者はいない。
討伐数なら英雄たちに敵わない。
派手な魔法も使わない。
竜を単独で倒した伝説もない。
だが、彼には別の伝説があった。
――カイルと同行した者は、一人も死なない。
それが彼の異名だった。
「風向き、南西。湿度高め。崩落の危険は低いな」
カイルは手帳に素早く記録を書き込む。
その横で若い戦士が呆れたように笑った。
「また測ってるのかよ」
「まただ」
「入口からここまで三十回は立ち止まったぞ」
「三十一回だ」
「増えてる!」
仲間たちが苦笑する。
だがカイルは真顔だった。
「安全確認を笑う奴ほど先に死ぬ」
その一言で全員が口を閉ざす。
実際、その言葉には重みがあった。
十年前。
新人斥候だったカイルは、一度だけ確認を怠ったことがある。
その結果、パーティは壊滅した。
生き残ったのは彼だけだった。
だからこそ彼は誓った。
二度と同じ過ちは繰り返さない。
どんなに急ごうと。
どんなに馬鹿にされようと。
安全を最優先する。
それがカイルの絶対ルールだった。
「では最終確認だ」
長い木製の測量杖を地面へ差し込む。
魔力が広がった。
見えない波紋が洞窟内部を走る。
反応を確認したカイルは深くうなずいた。
「落とし穴なし」
「毒霧なし」
「魔獣反応なし」
「転移陣反応なし」
「崩落危険箇所なし」
「進行可能」
仲間たちが安堵の息を漏らした。
「ようやくか」
「今日は日が暮れるかと思ったぜ」
「実際暮れてるぞ」
誰かが言う。
空は既に赤く染まっていた。
目の前にそびえる未踏ダンジョン。
黒虚の顎。
古代文明の遺跡と噂される場所だ。
数百年にわたり誰も最深部へ到達できなかった。
理由は単純。
挑戦者がみんな死んだからである。
それでも今回は違う。
伝説の斥候カイルがいる。
誰もがそう信じていた。
そしてその信頼に応えるように、一行は順調に最深部へ近づいていた。
***
十時間後。
パーティは巨大な地下空間へ到達していた。
誰も見たことのない光景だった。
天井は見えないほど高い。
無数の青白い結晶が輝いている。
その中心。
巨大な石造りの広場があった。
「……なんだここは」
戦士が息を呑む。
カイルも目を細めた。
異様だった。
あまりにも整然としている。
自然の洞窟ではあり得ない。
誰かが意図的に造った空間だ。
さらに奇妙なのは床面だった。
広場全体に巨大な紋様が刻まれている。
まるで都市の道路網を真上から見たような複雑な線。
幾重にも交差する円。
幾何学模様。
そして中心部には巨大な円盤が設置されていた。
「古代魔法陣か?」
魔術師が呟く。
カイルは首を振る。
「違うな」
「え?」
「こんな構造は見たことがない」
近づいて観察する。
刻印の一つ一つを確認する。
文字があった。
古代語でもない。
神代文字でもない。
未知の言語。
カイルの背中に冷たいものが走る。
危険。
理由はわからない。
だが、本能が告げていた。
近づくな。
「全員、後退しろ」
仲間たちが即座に従う。
カイルはさらに測量杖を伸ばした。
先端が魔法陣へ触れる。
その瞬間。
カチリ。
小さな音が響いた。
「ッ! 総員退避!」
叫んだ時には遅かった。
床面の紋様が一斉に発光する。
青白い光。
眩い閃光。
地鳴り。
空間震動。
魔術師が悲鳴を上げた。
「転移陣だ!!」
「そんな馬鹿な!」
「検知できなかったぞ!?」
カイルも理解できない。
自分の探査魔法を欺く罠などあり得ない。
だが現実に起きている。
巨大な魔力が渦巻き始めた。
広場全体が光に包まれる。
「逃げろ!」
仲間たちが出口へ走る。
しかしカイルは足を止めた。
魔法陣中心部を見つめる。
そこに刻まれた文字が、今だけ読めるような気がした。
壊れた門。
世界を繋ぐ路。
物流網再起動。
管理権限承認待機。
断片的な意味だけが頭へ流れ込む。
「これは……転移罠じゃない……?」
次の瞬間。
爆発的な光が視界を埋め尽くした。
***
落ちている。
そう気づいた時には既に遅かった。
身体がどこまでも沈んでいく。
上下左右の感覚がない。
空間そのものがねじ曲がっている。
耳鳴り。
閃光。
轟音。
無数の景色が流れていく。
知らない世界。
知らない空。
知らない星々。
そして――
真っ青な空。
巨大な鉄の塔。
光る窓の建物。
見たこともない都市。
その映像が一瞬だけ見えた。
「なんだ……あれは……」
最後に。
どこか遠くから声が聞こえた。
まるで機械のような。
感情のない声。
【適合個体確認】
【世界修復候補認定】
【権限付与開始】
【空想具現】
【千変万化】
【森羅翻訳】
【付与完了】
【修復者の到着を確認】
カイルは目を見開いた。
「誰だ……!」
返事はない。
光が弾けた。
世界が反転する。
そして彼は意識を失った。
***
目を覚ました時。
カイルは冷たい石畳の上に倒れていた。
聞き慣れない音が響く。
ブォォォン。
ガガガガガ。
ピピッ。
顔を上げる。
そこには。
巨大な鉄の箱が走っていた。
その数、何百。
夜空の下。
無数の光が街を照らしている。
高くそびえる建物。
眩しい看板。
見たこともない人々。
見たこともない世界。
カイルは呆然と呟いた。
「……ここは、どこだ」
その問いに答える者はいない。
だが彼の物語は、この瞬間から始まる。
世界最強の斥候が。
地球という名の異世界に降り立ったのだから。
――第1話 完――
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