世界最強の魔王に初手で殺されたけど、巻き戻して遊び始めた件
量子演算型VRMMO《Singularity Frontier》の発売初日。
底辺配信者ユウトは、いつものようにテンション低めで配信を開始した。
「……よし。今日も誰も来ないだろうけど、やっていきますか」
視界が白く染まり、ログイン演出が終わる。
次の瞬間、ユウトは、玉座の間のど真ん中に立っていた。
「……え?」
玉座には、黒い炎をまとった巨影。
世界最強と名高い《魔王ルシファリア》。
本来なら、ゲーム中盤以降でようやく対面するはずの存在。
ユウトは、まだチュートリアルすら見ていない。
「ちょ、待っ」
魔王の腕がわずかに動いた。
その瞬間、視界が赤く染まり、ユウトの身体は粉々に砕け散った。
——YOU DIED——
配信画面には、ただの即死。
だがユウトの意識は、なぜか1秒前に巻き戻っていた。
「……え? 今、死んだよな?」
魔王の腕が再び動く。
ユウトは再び死ぬ。
そしてまた、1秒前に戻る。
「……これ、もしかして……巻き戻ってる?」
理解した瞬間、ユウトの顔に奇妙な笑みが浮かんだ。
「いや……これ、めちゃくちゃ面白いじゃん」
魔王の初撃は、理論上“避けられる”。
ただし、フレーム単位の最適化を100万回繰り返せば。
ユウトは死ぬ、巻き戻る、死ぬ、巻き戻る。
その地獄のループを、なぜか楽しみながら繰り返した。
そして、100万回目の死の先で、ユウトは魔王の初撃を完全に回避した。
配信画面には、初見で即死攻撃をジャストガードしたようにしか見えない神プレイ。
コメント欄は爆発した。
「え?今の避けた?」
「反応速度バグってるだろ」
「こいつ神か?」
「切り抜き確定」
「世界一バズるやつじゃん」
ユウトは息を切らしながら笑った。
「……いや、これ最高だろ……!」
だがその裏で、ゲーム世界の自律進化AIはユウトを“観測者”として危険視し始めていた。
死に戻りを繰り返すほど、世界の量子演算は歪み、崩壊が迫る。
ユウトはまだ知らない。
この神プレイが、世界の運命を狂わせることを。
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