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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
007 / ユア・愛ズ・オンリー

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40/40

#40 レクセルの選択

「……なんかコーヒーくさくないですか?」


 帰って一言目がそれであった。

 社長はため息をついた。

 

「原因は君なんだがな……」


「は……?」


「こちらの話だ。まあ、なにはともあれ――――」


 にやりと笑って、社長は立ち上がる。


「――――お帰り、レクセル君」


「! ただいま帰還しました」


 びしっ。

 慌てた挙句、慣れない敬礼までしてしまうレクセル。

 ほほう……と社長は興味深げにそれを見て、頷いた。


「……どうやらいろいろ経験を積んできたようだ。どうだったかね、遊便の仕事は」


「お察しの通り、波乱万丈な旅でした……。略奪機やら封鎖破りやら、遊便狩りやら――――」


「ほうほう」


「――――ピンク幼女とかツンデレとか肉食系レディとか……」


「…………ん?」


「まあ……悪くはなかったです」


 レクセルはざっくりまとめた。

 〈悪くはなかった〉がなにを指しているのか、割と誤解を生みそうなセリフだったが、幸い社長がそこに気付くことはなく。

 そうかそれなら――――と本題に入る。


「――――では正式に、君に遊便を任せるということでよいかね?」


「はい……とその前に。1つ、条件をお願いしたく」


「……言ってみなさい」


「原則として、1週間に一度は家へ帰らせて頂きたいのです」


 ふむ、と社長はひげを弄った。

 

「……それはすなわち、1週間で帰ってこれる範囲でなら遊便をするということかね?」


「はい。……無理でしたら、残念ですが遊便はお断――――」


「……いいだろう!」


「いいんですか」


「断られるよりましだ、ハッハッハ! 交渉術まで身につけてきおって!」


 レクセルは苦笑する。

 すこーし脅すのは、ラヴジョイを引き受ける時にやられた手口。


「ちなみに理由は、同居人絡みかね?」


「まあ……ですがなぜそれを」


「君が出発した後にここへ来たのだよ。ハレー、といったか」


「え、ハレーが会社に来た? なんで……?」


 頭をぽりぽり掻いて、社長は記憶を探る。

 君がどこへ行ったのか、何をしにいったのか、根掘り葉掘り尋ねてきたか――――と説明してから、ぐいっと身を乗り出した。


「……そもそも君は説明していかなかったのか? 1ヶ月も家を空けるのだぞ?」


「一応、置き手紙をしてきましたが」


「……それでは駄目だ。妻子持ちの男にならともかく、未成年の少女に説明するのも変だと思うが――――家族への報告は口でするものだよ。伝える情報が同じだとしても、それが大事だ」


 諭すように社長は言って。

 成長の余地はまだあるな、と小さく笑った。






 契約書やら報告書やら、後処理を終わらせて会社を出ると、太陽はすっかり落ちていた。

 仕事帰りの人々が行き交う、夕日に照らされたソフィアの街――――。

 

 猫背気味な人混みの中を、足早に歩く少女が1人。

 脇目も振らず、歩き慣れた道をすたすた進んでいた。

 

 彼女はレクセル。主人公である。


 風に引かれるプラチナのロングヘア。

 うっとおしそうに払い除け、レクセルは角を曲がる。

 そして足を止めた。


「…………ハレー……?」


 前を歩いていた、ツンツンの黒髪がぴくりと揺れる。

 振り返った緑色の瞳が、じわじわ大きくなり。


「……レクシー?」


 掠れたような声で聞き返した。

 レクセルは頷いて駆け寄りかけ――――はっとなって、ぽそぽそと歩調を落とした。

 

 そういえば仲直りしてないまま、出発しちゃったんだっけ……。


「あーハレー……あのさ――――ひっ!?」


 バツが悪そうに言いかけたレクセルへ、ハレーは。

 ばたばたばたと駆け寄って、がしっと手を掴んだ。


「……ほんとにレクシーなの?」


「そ、そうだよ」


「ボクのこと大好きなレクシー?」


「ま、まあそうだよ」


「最近ようやく一緒に寝てくれるようになったレクシー?」


「そう…………んん……?」


「毎晩ボクのこと愛してるって囁いてくれるレクシー!?」

 

「なにそれ知らない誰?」


「レクシーだああっ!」


「待って怖い怖い怖いって!」


 もう1人の私がいるのか?! 家に?!

 聞くか逃げるか、判断しようとした時には既に遅く……。

 がっちりハレーに腕を取られ、レクセルは家へ連行された。

 

「――――おかえり、レクシー!」


「た、ただいまハレー……ごめんちょっと先に確認させて」


 すすすとすり足で廊下を進み、レクセルは自分の部屋へ。

 扉をそーっと開けて覗き込む。


 ほっとする、いつもの匂い。

 家具も、荷造りした時と特に変わりはない。

 ベッドだってそのまま――――。


「――――なんか膨らんでる……」


 レクセルはぐっと目を細めた。

 敵をいち早く見つけるために、パイロットは視力が命である。

 レクセルもその例に漏れず、2.0の視力を活かして慎重に観察し始めた。


 ……幅50センチ、長さ1.5メートルってとこか。

 枕にしては大きいな。

 ちょうど人間が1人、寝ころんだくらいのサイズ――――。


 ――――やっぱり人間じゃないか!


「ちょっとハレー! 私がもう1人いるんだけど!?」

 

「あー……大丈夫だよレクシー。レクシーが帰ってきたから、アレはもういらない!」


「もういらない!? 人をか!? どうしたんだよハレー、なんでサイコパスみたいになってるんだ?!」


「レクシーのせいだよ?」


「あ…………」


「…………レクシーのせいです。なにも言わずに出張行ったレクシーのせいだもん」


 むすっと口を尖らせて。

 ハレーはレクセルの胸に顔を埋めた。


 言葉に詰まるレクセルはおずおずと、ハレーの背中を抱きしめる。

 久しぶりのハレーは、震えていた。

 押し付けられた顔から伝わる熱が、胸をツンと焦がす。


 その時、言葉にされずとも。

 レクセルにはハレーの気持ちがわかった。


「――――ハレー……ごめん」


「…………いいよ。レクシーが女心わかってないのはいつものことだし」


「ぐ…………」


「でもレクシーはこの1ヶ月でそれを学んできたんだよね? 女の子をナンパしてね? 手紙に書いてあったもんね?」


「それはその」


 ハレーが顔を上げた。

 ずずず……圧が増していく。

 初めてレクセルは、ハレーに冷や汗をかいた。

 

「今のレクシーは、ボクの気持ちを理解できた?」


「……ああ。わかったつもりだよ」


「じゃあお返事ください――――ボクの、告白の」


 今更ながら真っ赤になって、ハレーは言った。

 潤んだ緑色が、真正面からレクセルを見上げる。


 ゆっくり、瞬きを1つして。

 レクセルは真っ直ぐに、ハレーを見つめた。


「――――ハレー」


「……うん」


「私もハレーが好き。親友としてだと思っていたけど……恋愛対象としても好き」


「……うんっ!」


「だから――――」


 レクセルは、大きく息を吸って。

 おやつを前にした犬のようになってるハレーへ、しっかりと宣言した。


「――――結婚しよう」


「付き合うのが先だよ!!!」






 (おしまい)

最後までお読み頂き、たいへん感謝!

百合ものは初めてなのでいろいろ粗があったとは思いますが、いかがだったでしょうか……?

よければ感想や批評など、よろしくおねがいします!



次回作は王道の異世界ファンタジー……

またはSFでも書こうかと思っております(プロジェクト・ヘイル・メアリー観て脳を焼かれた奴)。

またお立ち寄り頂けると嬉しいです:-)

ありがとうございました!

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