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最終回です。


 お向かいのお宅の母親は化粧品の販売員をしている。たまにお得意様達を自宅に招くことがあり、その時にはうちの庭に車を停めてもいいことは暗黙の了解事項になっていたのだが、其のことで庭が塞がってしまっていて親が車で出かけられなかったり、逆に帰って来たら自分の車を停めるスペースすらないことを、たまに私に愚痴ったりはしていた。無論、お人好しであるウチの親は、向かいの奥さんにとてもそんなことを言える人ではない。また、趣味でやっているガーデニングの鉢を、お向かいのお得意様が車の車輪でひっかけて倒していくことにも、怒ってはいたりもするのだが、そのことも当然、ウチの親は決して本人には言えやしない。全くこの人は人が良いというのか、人が良過ぎるというのか。本当にこの人は優しいというのか、優し過ぎるというのか。

全くもって本当にもう、この人は――

 長女は私より二歳年上である。ということは裏のお宅の長男と同級生ということでもある。この人とも言うまでもなく幼馴染であり、子供の頃はよく一緒に遊んだものである。背が高く大柄で色黒でおっとりとした面倒見の良い子だった。

 次女は私と同級生である。姉とは対照的で背が小さく小柄で活発ではあったが、同じ様に色黒な子だった。私はこの姉妹の色黒が羨ましかった。というのも、私は妙に色白で、肌を陽に焼こうにも、焼いて小麦色になろうにも、ただ紅くなるだけ、ひりひりして痛いばかり――それこそまるで、因幡の白兎である――であった。弟の素黒も羨ましかったが、此方の方が、何だか更に健康的見えた。見てくれからして、私は昔から病弱そのものだったのだから、単純に羨ましかったのだ。あと、彼女はモテた。私から見ても確かに彼女はかわいかった……。

「…うん。そうだ。そうだった。そんなんだったね……」

 そんなことを思い出していたら、何時の間にやら何だか眠たくなってきた。一体何時以来のことだろう? 薬が残っているから眠いとかじゃなくて、自然にちゃんと眠たくなるなんていうのは……。

何時の間にか、そんな風になっていた。

「…寝てみよ……」

私は寝床に着き、頭から布団を被った。

(ちゃんと眠れるといいな……)

自然に眠たくなって、ちゃんと寝られるのならば、眠りに落ちることが出来るのならば、それに越したことはない。うとうとするという感覚も恋しい。あれは本当に快いものだった。今や本当にほど遠く、無縁なものになってしまったのであるが。いくら私が不健康――眠りにつくことすら自力では儘ならない――だとしても、本当は薬になど頼りたくはないのだ。それに其れならば、記憶に無いこと――後から思い出せないようなこと――をして、親にまた迷惑をかけることもないだろうし。

                    



 私は実に色々な種類を薬を而も大量に摂取している。断っておくが、それどれもが非合法では無い。が、総じて最も強力な部類のものであり、而もそのどれもが医者が処方する出来る最上限値である。

 私が「献血をする事が出来ない」というのはつまりそういう事である。変な薬物まみれの血液なんぞ、採血後色々と手を加えたって手術とかの輸血やなんかで使えたもんじゃないだろう。精神科では極めて強力な複数の眠剤と共に極めて抗鬱剤・精神安定剤の類も処方されている。未だに其れ等を服用している(今かでは気休めでしか無い様な気はしているが)親、弟、勿論、其れ以外にも誰に対しても秘密にしている。親しい人間等、抑いやしないのであるが……。





ただ、姉妹編に続く。





尚、此の物語には姉妹篇が存在します。

どういったものこと謂うと……。


…まあ、いづれ。

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