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第六十八話 属性

 魔術操作の訓練が始まってから、俺は『娯楽』の神ボードから借りている眼を使って色々なものを見ていた。

 と言っても、ずっと透視能力を使って半ば覗きのようなことをしていたわけではない。

 本心を言えばその景色が一番見ていて楽しいとは思うのだが、他の眼の能力を使って別のものを見ていたのだ。

 どうやらこの眼、力の込め方を変えると見えるものも変わってくるようなのである。

 初めは透視能力が発動して遮るものの向こう側を見ることができたが、他には他人の目線がレーザーポインターのように見えたり、様々な力の流れがより詳細に可視化できたり、感情の種類や大きさがオーラとして見えたりする能力もあった。

 だから勇者たちが皆頑張っているのは見えていたし、徐々にだが上達しているのもちゃんと見ていたのだが、神の眼をもってしても俺の後ろで薄く赤黒いオーラを放っているであろう二人に目を向けることはできなかった。


 そうして俺が勇者たちとは別のところで大きなプレッシャーを感じながらも勇者たちの訓練風景を眺めていると、特徴と言うか、さすがに上達速度に差があるということに気付いた。

 一番進んでいるのはユウカ。

 これは魔術師をやっていて普段から魔力というものに触れる機会が多かったからと考えるのが妥当なのだろうが、それにしても、他の勇者パーティのメンバーや俺と比べても早いので、勇者として才能があるという証明にもなっているのかもしれないと思った。

 逆に一番苦戦しているのはブルー。

 これは案の定といったところで、ブルーはそもそも魔術に興味がなかったようだし、今も魔力をはっきり認識できているのかも怪しい動きをしている。

 正直戦闘時に魔術を使おうとするのは無理そうだというのが今のところの感想だ。

 だが、この技能は魔術を受ける時にも役に立つ技術である。

 時間はかかるだろうが、敵の攻撃を多く受けるであろうブルーには是非習得してもらいたいものである。


 それから十数分、勇者たちの集中が徐々に薄れてきていたので、一旦切り上げて休憩、次の訓練に移ることにした。


「今のところ、魔力操作に関しては不十分だというのは理解しているな? これは短期間で習得、上達するような技能じゃない。毎日少しずつでも練習するようにしてくれ」


 それから俺は座って休憩している勇者たちに魔術の種類や属性についての話をしながら、実演用の小さな魔術を手の上で転がしていた。


 まず説明したのは、基本属性の六つが実は二つに分類されるということだ。

 世間では「火」「氷」「雷」「風」「水」「土」の六属性と言われているが、その本質の部分を抽出してみると、「火」「氷」「雷」の三つと「風」「水」「土」の三つに分けることができるのだ。

 前者の共通点は「エネルギー」

 特に魔力のような不可思議パワーではなく、物理的なエネルギーが関係している。

 詳しく説明すると「火」「氷」は熱エネルギーを操ることができ、「雷」は電気エネルギーを操ることができる魔術なのだ。

 他の三つは、すべて生成系と呼ばれ、物質の生成ができる魔術である。

 三つに分かれているのは、物質の三態が関係しているらしい。


 ここまで説明した時、レイジから疑問の声が上がった。


「熱変動だけじゃ火は出ないんじゃないのか? 氷にしたって水が必要になるはずだし……」


 この疑問はもっともである。

 俺だって最初に聞いた時は変だと思ってヴォルムに訊いた。

 だが、聞いてみれば簡単な話で、要はそれを組み合わせて分かりやすくしたのが現在使われている基本属性の六つなのだという。

 火なら燃える物質を生成して温度を上げる。氷なら水を生成してから温度を下げる。生成系の魔術を使った時にそれを操ったり飛ばしたりできるのは、無属性魔術の重力操作などがあるからだ。


「お前らは知らないかもしれないが、組み合わせを変えれば今までになかったような魔術だって生み出せるってことだ」


 今までの常識を覆すような情報が立て続けに入って来たからか、勇者たちは首を傾げて整理が追いつかないといった様子である。

 それは仕方のないことなので、夜寝る前か何か暇な時間にでも飲み込んでもらうとして、今日の内にある程度教えるべきことは教えておきたいと思った俺はまだ理解しきれていない勇者たちを置いて話を進めた。


「無属性魔術のことも話しておくぞ。これは属性分けをする時にどの属性にも属さないと判断された魔術の総称だ。よく勘違いされがちだが、無属性というのはそう括られているだけで、一つ一つに関連性があるわけじゃない。超常的な現象を起こすという点では共通しているが、その根本まで辿ってみると、重力操作だったり、時間や空間の操作だったり、単なるエネルギー利用だったり、種類は絞れるにせよそこに統一性なんてものはないんだ」


 基本属性の話の時にも言ったがこれは後付けの分類で、本質の部分を見てみると、無属性と基本属性の本質の部分が組み合わさって発動する魔術なんてのも珍しい話ではない。

 ここまで来ると分類分けすることに意味があるのかということが疑わしくなってくるわけだが、そういう文句はもう二つ残っている『特異属性』の話をしてからにしよう。


「完全に理解できてから話を進めたら日が暮れそうだから一通り説明だけしておくが、属性にはあと二つ、それと例外的な扱いのものがいくつかある」


 それは「光」と「闇」の二つ、それから今までに説明した属性を混ぜた『複合属性』だ。


 前者の二つは、他の属性に比べると使い手が極端に少なく、普及していないことから世間にはあまり詳しく知られていないのだが、幅広い術が属する大事な属性なのだ。

 俺としては無属性と統合しても良いのではないかと思うのだが、これに関してはヴォルムも学会に賛同していて、「光」と「闇」には明確な対立構図があるのだとか。


 というのも、単純に「光属性」「闇属性」というのが光を操るだけの魔術ではなく、「善」「浄」や「悪」「汚」にも通じているということらしいのだ。

 使ってみないことには分からないと言われたが、これを理解するには「複合属性」の知識が必要になる。

 問題の「複合属性」というのは二つ以上の属性を混ぜて一つの魔術を発動させルという技術のことである。

 本質の部分を掛け合わせている時点でこの技術に特別名前を付けることに何の意味があるのかと問いたいところではあるが、まだ解明されていないことの多い技術として学会が言っているので黙っていることにする。

 この技術を使って「光」や「闇」属性を混ぜると、例えば「水」と「闇」なら汚水が出てくるように単純に光を操るという魔術ではないことが分かるのだ。


 というところまで語り、勇者たちが最早俺の話を耳に入れていないと気付いたので、今日の訓練は終了することにした。

 だが、勇者たちは全員終わりを告げてから数十分ほどその場から動かずに頭を抱えて唸っていた。


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