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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
静寂! 裏で蠢く者達!?
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静寂! 裏で蠢く者達!? その16


 劣勢から優勢へと戦況は変わる。


 数の面だけを見れば、怪人達の方が多い。

 

 が、彼等は戦いたくてこの場には居ない。

 何処かの訳の分からない輩に無理やり操られているだけだ。

 それでも、不意打ちにて一旦は良達を追い払ったのも事実ではある。

 

 しかしながら、それは不意を突いたからの結果でしかない。


 今度は、良達も戦う覚悟が出来ていた。

 で在れば、如何に数の不利が在ろうとも、それは問題ではない。


 嫌々動かされる者と、自らの意志で動くのでは動きからして違った。


 先ずはと、橋本が切り込む。


『悪く思うなよ!!』


 そう言いながら、蜂は怪人達を自慢の針で突き刺す。

 ただ、決して急所は狙わず、肩の関節や膝といった、動くのに必要な部分だけを的確に突いていた。


 蜂型改造人間である橋本は、篠原良に破れはした。

 だがソレは、良が異様に硬かったという点がある。

 

 その一点さえ除けば、本来の橋本の力は、決して良に引けを取るものではない。

  

 そんな蜂に、蝦蛄も続いた。

 片腕という不利こそ在るが、それを感じさせないアナスタシア。


 元々が白兵戦重視の改造人間故、彼女もやはり怪人程度では止められない。


『邪魔をするな!! 首領が御通りだ!』


 あくまでも、良の露払いに徹しようとするのは、アナスタシアの性格故なのだろう。

 が、実際には並み居る怪人達を殴り飛ばしていた。

 とは言え、流石に頭部を殴り飛ばすという事はしない。


 派手に暴れる改造人間とは違い、魔法少女は戦い方から違った。


 愛の前に立ち塞がるのは、良が助けた三姉妹である。

 ただの人間で在れば、3人もの怪人には為す術もないだろう。


『あんた、誰だか知らないけど逃げな』

『そうだよ、もう、殺し合いは嫌なの』

『お願いだから』


 三姉妹は挙って愛に【逃げろ】と促す。

 が、その身体は少女をバラバラにせんと近づきつつあった。


「たくもぅ、女の子に無理やりとか、最低だよ」

 

 良が首領として運営している組織を知っている愛からすれば、今見ている運営の形はその真逆に位置していた。


 以前ならば、改造人間だろうが、生身の人間だろうが、それとは別の何かで在っても、和気あいあいとして居られた。 

 悪の組織を名乗ってこそ居るが、少女からすると【何処が悪なのか?】という疑問すら抱いた程である。


 対して、今見える組織の姿は、愛に取っては正しく【悪】であった。


 個人の思想心情などは一切合切が無視される。

 組織に取って、属する者は全てがただの消耗品としての扱いしかされない。

 それとは反対の良を知っているからこそ、少女はこの場に居た。


「はい、マジカルロープっと」


 実に軽い声と共に、愛は手に持つ杖を振るう。

 すると、杖の先から青白い光が縄の如く伸びた。

 

 その光が如何なる物理特性にて動いているのか、それは定かではない。

 ただ、少女の意志によって自由に動かせた。 


 あっという間に、怪人三姉妹を光の縄が縛り付けてしまう。


 身体の自由を奪われ、その場にバタンと倒れてしまうが、姉妹の顔は驚きと安堵が在った。


「縛るとか趣味じゃないんだけど、ゴメンね?」


 詫びる少女に、長女のカマキリが首を横へと振る。


『いいよ、ありがと』


 それは、自分達を止めてくれた事への礼であった。


 改造人間、大幹部、魔法少女と、それぞれが戦う中。

 良を守る様に立つ博士は、動けない。


 ろくに喧嘩の経験も無ければ、如何に力が在った所でそれを振るうのは難しい。

 ブルブルと震える博士に、良は細い肩に手を置いた。


『博士、退いてろ』


 変身しただけでは、戦いには成らない。

 その事を良も身を持って知っているからこそ、博士の前に出ようとする。


 が、この時の博士は良の動きを遮っていた。


『下がっててください!』


 意気込みだけでは戦いには成らない。

 それでも吠えるのは、高橋リサという少女の意志の現れだろう。

 馬鹿げている事は誰よりも本人が知っていた。

 

 原理不明のスーツを纏って居ても、怖いモノは怖い。


 元々が数字と科学によって裏打ちされたモノしか信じて居なかった。 

 それでも、今の博士は見えない奇跡に身を預ける。 


『あ、クソ! 博士、退くんだ!』

 

 良と博士の二人が言い合いをしているとは言え、怪人が話し合いを終わるのを待つ筋合いは無い。


 迫り来る怪人。


 そんな窮地に、博士のスーツが呼応する。

 何処からその質量が出されて居るのかはわからないが、博士の手にポンと何かが現れた。


 ソレは、敢えて形容するならば釘バットだろう。

 先が太い棍棒に、ふんだんに盛られた突起物スパイク


『嘘……も…何コレ』


 急に現れた鈍器に戸惑いつつも、博士はそれを握った。

 

 窮地に追い込まれた際、人は戦うか逃げるかの選択を迫られる。    

 そして、この時の高橋リサは、戦いを選んだ。


『やぁ!!』


 打者バッターの如く釘バットを振りかぶり、思い切り怪人を叩く。


 鈍器と触れ合う怪人。

 すると、金属バットで硬球を叩いた様な澄んだ甲高い音を鳴った。


 弾丸の如く、怪人がすっ飛ぶ。


『……うそ』


 自分で相手を飛ばした割には、博士はその事実を受け入れられない。

 だが、その手には確実な手応えが残っていた。 


『すっげーな、リサ』


 思わず感想を語る良の声に、博士は背中を押された気がした。

 たった一度とは言え事が上手く行けば自信も生まれる。

 

 鈍感を構え直す博士には、脅えが消えていた。


   *


 基地に侵入したのは、良を含めてたったの5人である。

 だが、そんな5人を怪人達は止められない。

 

 戦力的な差も在ったが、戦う気があるか無いかがその差を埋めていた。


 邪魔が居なくなれば、先へ進める。


 そして、ようやく良達は基地の大広間へと辿り着いた。

 以前ならば、良が首領としていた場である。


 が、其処には良以前の首領を彷彿させる様に意匠エンブレムが在った。

 近づく気配を察知したからか、意匠の一部がチカチカと光る。


─やはり、怪人程度では異能力者は止められんか─


 響く声に、今や恐ろしさは無い。 端から見ていれば、裸の王だろう。


 住むべき城を奪われ、かしづく兵も居らず、身を守る盾もない。


『お生憎様だったな、そろそろ負けを認めたらどうだい?』


 散々云われた事を、意趣返しとして良は云う。

 問われた意匠は、相も変わらず一部が光っていた。


─生き物を御するのは難しい。 篠原良。 貴様は本来ならば、異能力者に対する対抗策として造ったモノだ─


 そんな声に、良は鼻で笑う。


『ああ悪いね? せっかく造って貰ったわりにゃ、期待外れだったろ?』


 現実問題として、篠原良は本来の役目を果たして居ない。

 大首領としては、良を用いて世界の異能力者を屠る手筈であった。


 だが、屠られる筈の異能力者は、良の為に戦ってくれる味方ですら在る。


─篠原良。 貴様が失敗作である事は我々も認めよう─


 尊大な声に、博士と愛が前に出る。


『もう良いです!』

「そうだよ! こんなのサッサと壊しちゃおうよ!」


 2人の少女の苛立ちも限界に近かったのだろう。

 

 友人を操られ、無理やりお互いに戦わされた。

 その事に関しては、良も腸が煮えくり返る想いである。


 それでも、良は2人を止めた。


『待ってくれ、まだだ。 まだ聞かなきゃいけない事がある』


 2人を止めた良は、意匠の前に立った。

 今の良でも、ガラクタ同然のソレを壊すことは難しくはない。


『さぁてと? 聞こうか? テメェは何処の何奴だ? 居場所と名前を教えろよ。 そしたら……命ぐらいはなんとかしてやるぜ?』

 

 意匠を指差し、相手を探る。

 そんな良の問いに対する反応は、大仰な笑いであった。


 何処からそれだけの音量が出るのかは不明だが、耳を塞ぎたくなる程に汚い音である。


─慈悲深いな? しかし、貴様等如き矮小なる生物が、勝った気になっているのか?─


『あん!? どう見たってそっち負けだろうが?』


─本当にそう思っているのか。 なる程、やはり失敗作だな─


 急に声を抑える意匠を、良は踏み付けた。

 本来ならば、動けない相手を嬲るという趣味は無い。

 

 だが、そうしたくなるほどに、恨みも在った。


『喧しい! 女を盾にしたり武器に使ったりやりたい放題しやがって。 悪党なんてのは腐るほど居るだろうけどよ、テメェみたいな腐った野郎は他に居ないだろうぜ』


 踏まれた所で、意匠から漏れ出るのは呻きではなく抑えた笑いであった。

 その笑いは、負け惜しみどころか勝ちを確信した様な含みすら在る。


─教えた筈だ。 勝ちの側に立つ者は全てが自由だと、な。 雌だろうと、駒に出来る。 貴様の価値観にいか程の価値が在るという? 仲間や友情などという存在しないモノに縋り付く、それは敗者の理屈だ─


 饒舌に喋る意匠。 

 ソレを、良は何度も何度も踏みつけた。


『うるせぇアホが! 理屈ぶっこいてんじゃねぇや!』


─それほどまでに会いたいか? 良いだろう、いつかはやらねば成らないと計画は立てられては居たが、時期も頃合いだ─

 

『頃合いだぁ!? 訳のわかんねー事ゴチャゴチャ云ってないで、サッサと居場所を教えろよ!』


 良が叫ぶと、意匠はフゥムと鳴った。


─ならば、近くに寄るが良い、答えよう─ 


『あ? 随分と素直に成っちまったな』 


 睨み合う首領と大首領。

 そんな中、橋本だけが在ることに気づく。


 組織から離れて、独りきりで戦い続けた彼だからこそ分かる事。 

 敢えて長話をする事にも、実は意味を持たせる事が出来るのだ、と。


『首領! 其奴から離れろ!!』


 急に叫ぶ橋本に、その場の全員が振り向く。

 誰もが、良の勝ちを信じていた。


『ちょ、橋本さん?』


─篠原良。 貴様はただの愚か者だ。 首領の器ではない─


『はぁ!? 別に好きでしてる訳じゃねーよ』


─王と云う者は、自ら先陣を切ったりはしないモノだ。 最初に死ぬからな、この様に─


 そう言うと、意匠は突如として爆発した。

 一番近くにいた良を巻き込んで。


 

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