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悪の組織、はじめました  作者: enforcer
静寂! 裏で蠢く者達!?
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静寂! 裏で蠢く者達!? その17


 いきなりの爆発には、対応は難しい。

 そうなると知っていれば、或いは可能だろう。


 だが、知らなければ無理である。


『あ!!』「キャッ!?」


 爆風は凄まじく、愛や博士は飛ばされてしまう。


『危ない!』『博士!』


 愛を橋本が抱え込み、博士はアナスタシアが受け止めた。

 地下基地が揺れる程の爆発。 


 たっぷり30秒の時間が流れた。 


 場に居る者達を襲っていた煙や衝撃。 それは、徐々に止む。  

 

「いたたたた……何なわけ、いきなり……篠原さん!?」

『良さんは!?』


 少女の2人が爆発の衝撃から立ち直る。

 2人は生身とは言え、異能力者である事に変わりはない。

 下手な改造人間よりも、余程頑丈なのだろう。


 そんなに2人の目に、何かが映った。

 

「篠原……さん?」『良さん!?』


 2人が呼び掛けても、返事が無い。

 爆発の衝撃から、吹き飛ばされたのだろう。

 

 装甲によって、身体の原形は保っている。

 ただ、そんな良の身体は、全身が真っ黒に焼け焦げていた。

 

 慌てて駆け寄った愛が手を伸ばす。


「熱っ!?」


 触れはした。 が、触れた途端に引っ込めてしまう。

 ソレ程までに、良の身体を熱が襲った証拠だろう。


『良さん……』


 身体の彼方此方から煙を上げる良を見て、博士が息を飲んだ。

 端から見れば、死んでいる様にしか見えないのだ。


 慌てるを通り越し、気が抜けた様な少女二人。

 そんな二人に構わず、蝦蛄が駆け寄る。


『ええい!? 邪魔だ!! 首領!! 首領!?』


 アナスタシアからしても、どうしたら良いのかと迷う。

 其処へ、橋本が駆け寄ってきた。


『おい! 何でも良い、担架とか無いのか!? ドアでも良いから持ってきてくれ!』


 誰もが焦り、喚く。

 そんな中で、焦げた良だけが静かに横たわっていた。

 

   *


 組織の意匠エンブレムか失われた効果は在った。

 何者かによって遠隔操作をされていた怪人達は、全員が自由を取り戻す事が出来ている。


 が、その代償として、支払われていたのは首領である。  


『退け退け!? 道を空けろ!!』


 基地の中に、アナスタシアの怒声が響く。

 必死に良を載せた板を抱える。

 

 その様は、以前の彼女では有り得ない光景であった。

 前の首領が倒れた時ですら、アナスタシアは大して気にした様子を見せなかった。

 それは、以前の彼女がアナスタシアではなく、大幹部の一人に過ぎなかったからだろう。


 自分では何も考えず、与えられたら指示をこなすだけ。

 

 それが何時しか、アナスタシアは自分で考える様に変わっていた。


 誰かに何を云われる迄もなく、必要に迫られ発想する。

 在る意味、閃きこそが生き物の証である様であった。


 女幹部と蜂に運ばれた先は、基地の医務室。

 元々が自分達の基地である以上、何が何処に在るのかは尋ねるまでもない。

     

「早く! 其処へ寝かせてください!」


 変身を解いた博士が、急いで準備を始める。

 博士にしても、元々が組織の改造担当であり、正に専門家と言える。


 良と出会うまでの彼女は、時折人を怪人へと変えたが、その事に付いて深く考えた事はなかった。

 首領から【やれ】と云われたからしていただけの事である。


 変えてしまった者がどうなろうが、気にしない。

 精々が記録に残す程度であった。


 その博士が、今や必死に良を何とか助けようとする。

 今の彼女は、全く違う性格へと変貌していた。  


 焦る博士に対して、愛はと言えばただオロオロしていた。

 幾多の化け物と戦った少女ではあるが、知人の窮地に関しては無知だ。


 絶大な力こそ持っては居るのだが、それは壊す事にしか使えない。

 壊す事は出来ても、何かを直すという経験が少女には無い。


「えと、私、なんか出来ないかな?」 


 せめて何か出来ないかと愛は尋ねるが、博士は首を横へ振った。


「お気持ちだけで結構! 外へ出て!」

  

 博士にしても、友人へ強い言葉は使いたくない。

 が、其処まで配慮が出来る程の経験が無かった。


 良が倒れた際、何度も世話をしているが、今回は違う。

 以前ならば、良は気軽な声を掛けてくれたが、今は生きているのかすら不明である。


 博士の声に、愛は唇を噛む。

 そんな少女の肩を、変身を解いた青年がポンと叩いた。


「ほら、専門家に任せなって」

「でも……」


 素直にハイと言わない愛に、橋本は苦く笑う。


「お嬢さんだって、戦ってる横で誰か居たら邪魔だろ?」 


 戦士としての青年の声は、愛にも理解できるモノである。

 

 自分が派手に戦っている時、その場に無関係の誰かが突っ立って居れば、邪魔この上ない。


 口惜しさは在るが、このままゴネた所で意味が無い事は少女もわかっていた。


 青年に促され、医務室を出る少女。

 そんな2人を横目で見ながらも、博士は良と向き合う。


 全身丸焦げの改造人間など、博士はまだ見たことも無かった。


「どうしたらいい?」

 

 良を挟んでそう言うアナスタシア。

 大幹部としては、首領の負傷は一大事だが、今の彼女は、女幹部としてではなく、一人の女として良を案じていた。


 深刻な声に、博士は目を細める。


「先ずは、変身を解かせないと……」 

「それはわかってる! どうしたら良いかと聞いてるんだ!」

「私だってわかってますよ!」


 焦るアナスタシアに、博士も同じく焦っていた。

 わかっていないのに、わかっていると想ってしまう程に。


 焦れば焦る程に、思考が纏まらない。


 ふと、博士は少し前の出来事が頭に過った。

 

 変身の起動方法がわからなかったからこそ、最初は良も変身が出来なかった。

 何時しかそれは良が自分で解明した事がある。


 だが、今は逆に変身が解けないという事に博士が頭を痛めていた。


 本人に意識が在れば、或いは出来るかも知れない。

 とは言え、無い物ねだりをしても始まらない。


「どうしよう……」


 良に破壊不能な装甲を与えたのは、他でもない博士である。

 それ故に問題であった。


 通常の改造人間で在れば、外部から強制的に干渉する事は出来る。


 しかしながら、良はソレとは一点が違っていた。


 壊せないという事は、単純にビンの蓋が開けられない事に等しい。 

 蓋が開かなければ、中身に手を触れる事も出来はしない。


 今の博士は、開かないビンを前に悩む心境に近かった。

 無理に叩き割れば、或いは中身を取り出せるだろう。


「ええい! 仕方ない! 博士! どうすれば剥がせる?」 


 先に業を煮やしたアナスタシアは、簡単な解決策を探した。


「首領のお身体に傷をつけるのは不本意だが、今は仕方ない!」


 アナスタシアの提案に、博士は口を閉ざす。 


「そう言われても……道具が」


 良の装甲は並外れた強度である。

 それこそ、物理的に破壊不能であると説明したのは、やはり博士だった。 

 

 そして問題として、基地放棄に際し、道具は持ち出してしまっていた。


「何か在るだろ? レーザーカッターでもプラズマトーチでも、バールでも何でも良いから!」

「ですから、殆どの道具は新しい基地へ持って行ってしまっていて……」


 博士の声に、アナスタシアが目を剥く。


「くっそう! あの時に私が起きていれば!!」


 声を荒らげたアナスタシアだが、悪気は無い。

 基地を放棄する際、彼女は良に腕をもがれて気絶していた。


 彼女からしても、博士を責めるのはお門違いなのはわかってはいる。

 だが、自らの情けなさに、それを出さずには居られなかった。


 博士もまた、ただ呆然としては居られない。

 今、この場で良を何とか出来るのは彼女だけなのだ。


 ふと、在ることを思い出し、博士は女幹部へ目を向ける。


「アナスタシアさん! 良さんをひっくり返しますから手伝って!」

「わ、わかった」


 何かを思い付いたらしい博士の声に、女幹部は慌てて片手を良へと掛ける。

 見た目以上に重い良をひっくり返すのは、楽な作業ではない。

 

 二人掛かりで、何とか良をひっくり返す。

 そうされても、良はまるで焼かれた魚の様に反応を示さない。


「それで、どうする気だ?」

「いざという時の為の、緊急充電ですよ!」


 如何に変身していようが、蓄電が切れれば改造人間は動けない。  

 その為の用意はされていた。


 前にそれをされた際には、露骨に良は嫌がっている。 

 とは言え、本人に意識が無いのであれば差ほど問題には成らない。


「よい……しょ!」


 大きな注入機にも似た充電器を持ち上げる博士。

 

 アナスタシアが恐る恐る見守る先では、博士の手によって充電器の先が首領へとグサリと突き刺されていた。


   *


 爆発の被害は良一人だったが、負傷者はそれだけではない。

 意匠へと辿り着くまでには、多くの怪人達も負傷を免れなかった。


 その為に基地は大忙しである。

 中でも、特に多忙を極めたのは博士だった。


 戦う事は構成員達でも可能だが、他の事となるとからっきしである。   


 次から次へと担ぎ込まれた怪人達で基地の通路は埋まっていた。

 その中で医務室へと運ばれるのは、重傷者のみ。


 腕や脚の一本が無くても改造人間にとっては問題ではない。

 が、主要部である胴体などに損傷を負っている場合は違った。


 そして、運ばれて来たのは大幹部である。


 良が放り投げたお陰なのか、カンナの容態はそう悪くはない。

 ただ、胴体に一発入っているという状態は、如何に改造人間とは言え芳しくなかった。


 医務室へと担ぎ込まれる虎女は、同じく幹部のアナスタシアと目が合う。

 カンナは撃たれ、アナスタシアは片腕。


 大幹部二人は、在る意味酷い状態である。


「なんか、バツが悪いなぁ……」

「……お互いにな」


 言葉少ない大幹部同士だが、お互い何か通じ合うモノは在るのだろう。

 そんな中、虎女はハッとなる。


「ね、アナスタシア……」

「うん?」

「首領は? 何処? ほら、色々云いたいことも在るし」


 虎女の問いに、目を伏せる女幹部。


「むぅ、もう良いよ、自分で探すから」


 アナスタシアの反応が芳しくない事から、カンナは仕方なく首を持ち上げて自分で探す。 

 虎女としては、自らを庇ってくれた事への礼がしたかった。

 勿論その際、放り投げた事への責任を取らせようという企みも在る。

 

 それを元に、並み居る邪魔者出し抜こう。

 そう思った虎の目に映ったのは、黒く焼け焦げた首領だった。


「……首領?」


 カンナは、まるで子猫の様に飼い主を求め声を出す。

 が、良からの返事は無かった。

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