その1
時刻は7時32分。あまりにも朝の陽射しが眩しくて、目が覚めてしまった。
俺がゆっくりと体を起き上がらせようとしたその時、
「お兄ちゃ~んっ!朝だよ~!!」
バンッとドアが勢いよく開いた音から少し遅れて制服姿の少女がベッドに転がっていた俺の上にドアよりもすごい勢いでダイブしてきた。
「桜、痛い。重い。お兄ちゃん死んじゃう。あと、ドアはもう少し優しく開けてくれ。」
「お兄ちゃん、女の子に重いとか言わないの。いくら妹だからって傷つくんだからね?」
むぅ、と頬を膨らませながら少女はベッドから降りた。
この少女の名前は高坂桜。俺の一つ下の妹だ。
「悪かったよ桜。許してくれ。」
「うんいいよ。妹の顔に免じて許してあげる。」
桜はしょうがないなと言わんばかりの表情をしている。
あれ、なんで俺だけ謝ってんの?おかしくない?傷ついたのはドアなんですけど。
あと俺もね?むしろ俺の方が大事。
いや、ドアかもしれない。
「そんなことより桜、時間は大丈夫なのか?」
桜は横にある俺の目覚まし時計を見る。時刻は7時45分。
「あっ、いっけなーい!桜もう行かなくちゃ!お兄ちゃんも今日入学式でしょ?早く支度して学校行くんだよ?あ、朝ご飯はもう作ってあるから、食べ終わったら食器は水につけといてね。お弁当も置いてあるからちゃんと持って行ってね!それじゃ、お兄ちゃん、行ってきまーす!」
嵐のように去っていった妹を見送りながら
「さて、俺も支度をするか。」
と立ち上がった瞬間、妹が俺の部屋に戻ってきた。
「あ、お兄ちゃん。今日のお弁当は愛情をたくさん詰め込んだから、残さず食べてね♡」
そういうとまた嵐のように行ってしまった。
え、それだけ?それを言うためにわざわざ戻ってきたの?てかいつもの弁当は愛情こもってないみたいな言い方やめて。シンプルに傷つく。
時間を忘れかけていた俺は、時計を見て我に返った。
相変わらず元気な妹がいなくなったところで、俺は支度に取り掛かった。