第六十二話 砂糖
今日の分です
「おいしいの~」
「甘いなのなの」
キキとキルは饅頭を食べている。
「最初から甘いの食べて大丈夫なの? 他の御飯を食べられなくなるよ?」
僕は山と積まれた饅頭の前で喜ぶキキとキルに近づき忠告した。
「甘い物は別腹なの~」
「それに甘い砂糖味は数年ぶりなのなの」
砂糖は手に入りにくいからね~~。
しかも高いし。
仕方ないだろうね~~。
ククル商会では輸送用に【転移】を使える専門の冒険者を雇ってる。
だから大抵の商品は安く設定出来る。
とはいえ砂糖は流石に希少で高級品だからそうはいかない。
なので砂糖を使ったこの饅頭は高額過ぎて売れないだろう。
ならなんで試食品として今出すかって?
砂糖を使った料理の皆の反応を聞きたくて出しました。
それはそうと何か忘れてる様な~~。
僕は頭を傾げ、その忘れている何かを思い出そうと考え続けていた。
その時だった。
「砂糖?」
ゾクリッ。
悪寒がした。
殺意にも似たナニカ。
それが僕の背後から多数感じられた。
僕は嫌な予感を感じながらも恐る恐る振り返る。
「「「「「「「砂糖ううううううっ!」」」」」」」
「ぎゃああああああああああああああああああああっ!」
砂糖という単語を聞いただけで絶叫する皆の衆。
幽鬼の如く垂れ流される溢れんばかりの涎。
爛々と輝やき、正気が失われていく目。
そこにはただ、甘味を欲する女性陣という名の餓鬼達がいた。
「食わせるがなあああああっ!」
「腐……甘い物なんて久し振りね」
「シスター的には五十年ぶりね!」
「久し振りの砂糖なの!」
「取れないのっ!」
「なのなのっ!」
「忘れてたあああああああああっ! 甘い物が皆の大好物だったという事をっ!」
絶叫する僕。
「「「「「「寄越せえええええええええええっ!」」」」」」
「はいいいいいいいいいっ!」
僕は思わず僕は饅頭を差し出す。
あっという間にクリス、サラ、サキ姉さん、シスターとキキ、キルの争奪戦になる。
なんだろう……目の前で大怪獣戦争になってるんだが……。(唖然)
僕はその現場から一歩引き茫然としていた。
「う~~わ~~餓鬼みたいに取り合ってるよ」
「そらぁ会長、砂糖は貴重品というか贅沢品ですから」
「それにしても皆、酷くない?」
というか酷いというより怖い。
僕は命の危険を感じた。
「そらあそうでっしゃろ。砂糖なんて王族でも年に数回口に出来れば上出来なんですから」
「ふ~~ん」
シャルの言葉に思わず感心する僕。
チラリと五人のドラゴン組を見ると彼女達は無関心だった。
後日五人に何故饅頭を食べなかったのかと聞いたら意外な言葉が却ってきた。
『『『『『甘すぎるの嫌いだから』』』』』
……だそうだ。
不自然に甘い物は苦手なんだとか。
蜂蜜はまだ良いとさ。
……別に良いけど。
少し離れたところではセリスとマリさんが物欲しそうに見ていた。
女性陣が狂喜乱舞する、砂糖という味に興味津々なんだろう。
なので僕が確保していた分の饅頭を二人に上げる。
「良いの?」
「あらあら」
「どうぞ、どうぞ」
僕から渡された饅頭を大切に受け取る二人。
そして口にした瞬間、その顔は驚きに染まっていった。
「「美味しいいいいいいっ!」」
これ以上ないという満面の笑みを浮べる二人。
「おやまあ~~女の子は甘い物に目が無いから社長、良い仕事しましたね」
「まあ、僕の将来の嫁達だからね」
「ふふっ優しいですなあ~~」
「まあね」
「機会があればうちも甘味を所望します。好物ですので」
「その割にはシャルは食べて無いね~~」
僕はシャルが饅頭に手を出さない事に疑問を抱く。
「あの争いにウチが加われと? 死にますでっしゃろ」
「うん。聞いた僕が馬鹿だった。御免」
シャルが指差した方では熾烈な饅頭を巡る争いが繰り広げられていた。
あそこに加わったら幾らなんでも死ぬ。
というか死なない方がおかしい。
僕でも死ねるんだから、シャルなら言わずもがなだ。
「だったら後で内緒で作ってあげようか?」
「遠慮しますわ」
「なんで?」
「砂糖は一キロ当たり、小金貨十枚が相場どす。私如きに使うものやあらへんでっしゃろ?」
「ふ~~ん」
などと言ってシャルは僕に遠慮している。
僕の懐を痛めないように。
他の皆もシャルを見習って欲しい。
ビシッ!
シャルの僕への配慮した返しを聞いたセリスとマリさんが固まる。
おや?
「どうしたの?」
僕は小首を傾げながら二人に尋ねる。
「今何て言ったのかな?」
「あらあら~~~少し気になる言葉を聴いたんだけど……」
「ふえ?」
僕は二人の言葉の意味が分からず首を捻る。
「今此れに使われてるのが砂糖って聞いたんだんだけど? 私の気のせい?」
「……セリスちゃん気のせいではないよ。カイル君、本当に砂糖を使ってるの?」
恐る恐る僕に尋ねる二人。
どうしたの?
顔が真っ青だよ。
饅頭に砂糖を使うのは当たり前でしょうに~~。
「使ったけどそれがどうしたの? まあ、高すぎて商品にはならないね~~一応作ってみたけどさ」
僕の言葉にふらつく二人。
本当にどうしたの?
「「何考えてるのおおおおおおおおっ!」」
「ふえ?」
二人の絶叫に僕はキョトンとする。
何が?
「ふえ? じゃないっ! 小金貨十枚って……」
「そうよ……ああ……」
二人は食い残しの饅頭を見て項垂れる。
というか本当にどうしたの?
「ああ~~そおいう事やね」
「どうしたのシャル?」
得心がいったというシャルに僕は疑問をぶつける。
「二人共、村での貧乏暮らしが長かったから、砂糖の値段を知って腰を抜かしたんだでっしゃろ」
「ふ~~ん。そんな事気にする必要無いのに」
シャルの返答で二人の驚きの中身を僕はやっと納得した。
「「気にするわあああああああっ!」」
「おおう~~」
二人のあまりの迫力に僕の腰が思わず引ける。
「二人共、そこまで気にしなくても良いですよ」
「「……」」
二人はジト眼でシャルを見る。
シャルの言葉を疑ってるみたいだ。
なんかその態度はシャルに失礼でない?
そう思う僕だった。
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