第五十七話 卓球
二話目です
ククル商会の遊戯室。
「せいっ!」
カンコン。
「ふっ!」
カンコンコン。
「ふっ!」
「はっ!」
カンカンコンカン。
カンコンコンコン。
カンコンコンカン。
卓球台で専用のラケットを使いピンポン玉を互いに打つ浴衣を着た男達。
先程温泉に入浴したと言うのにもう汗だくだった。
その光景は二人だけではない。
遊具室にあった卓球台は六台。
それぞれ二人一組で遊んでいた。
それだけではない。
人数が多かったので台数が足りなかった。
なので間に合わせで卓球台とラケットを作って屋外にも設置しました。
それで皆に遊んでもらいました。
それでもまだ遊べない方々も多く順番待ちをしている。
見学だけの人も卓球台の周りを囲んで楽しそうだ。
予想以上の人気だ。
待望だったピンポン玉を確保した僕。
それを数個使いククル商会の遊具室で何人かにモニターを頼んだところ……。
凄く流行りました。
卓球が。
僕がドン引きするレベルで。
良いけどさ~~。
僕は溜息を付きつつ手に持ったピンポン球を見る。
カコン。
あ――……。
今、勝敗が一組決まった。
「次は俺だ!」
「まって! 私にやらせてっ!」
その途端に空いた卓球台に順番待ちしていた人達が殺到しました。
順番待ちの意味が無いじゃん。
え?
ミリア達三人と冒険者達は依頼達成後にどうしたのかって?
卓球台の設置前に別の依頼ですでに旅立ちました。
それが何か?
今度はもう少し三人に適した依頼に工夫しました。
というかあの三人共凄く心配を僕にかけます。
僕を助けてくれてから既に四年以上経つのに物凄く弱いのです。
三人共あまりレベル上がってないのかな~~。
冒険者に向いてないんじゃないの三人共?
大丈夫かなあ~~。
あの三人は。
はああああ~~。
※ ミリア達はチート無しでパワーレベリングもしていない状態で、ククル村まで来れる実力者の冒険者達です。
だからカイルの三人への実力評価はククル村で育ったせいで完全に狂っています。
僕は卓球で遊んでる人達を見て溜息を付く。
しかし……結構流行ってるけどそれほど売れないなあ~~。
まあ考えてみれば当然か……。
何しろ卓球台は場所を結構とるからね。
盗まれずに設置出来る場所は限られるから買う人も当然少なくなるよなぁ~~。
だけどまあ倉庫の肥やしになるよりましか。
まあ儲けはトントンという所かな?
そんな事を考えていた僕。
ふいに僕の肩を誰かが叩く。
僕が反射的に振り向くと其処にはマリさんとセリスが居た。
「あらあら流行ってるみたいね」
「ええ。でも予想より売れませんでした」
マリさんの笑顔に僕は苦い顔をしながら答える。
「という事は赤字なの?」
「あらあら~~そうなの?カイル君?」
「いえ。トントンという所です」
セリスとマリさんの質問に正直に答える僕。
「ふ~~ん……なら兵舎で幾つか売れるんじゃないの? カイル?」
「売れますかね?」
セリスの助言に頭を捻る僕。
「兵士の反射神経を鍛えるのに調度良いんじゃないかな~~」
「あらあらセリスちゃん。カイル君の為に色々考えてるじゃない」
「ばっ! ちちちちちちちちっ! 違うわよっ!」
「赤くなったっ」
「う~~~~~~」
「成る程」
マリさんの言葉に赤くなるセリス。
僕は二人に構わず考え込む。
これは盲点だった。
確かに此れは遊具として作った。
だけどスポーツでもあるんだ。
だから確かに反射神経を鍛えるのには適している。
遊びながら鍛えられる。これは大きな利点だ。
「有難うございます! 早速商品を売り込んでみます!」
「そ……そう感謝しなさいっ!」
そっぽを向くセリス。
「あらあら~~セリスちゃんカイル君に失礼よ」
「どうでもいいじゃない。こんな奴」
「セリス……」
素直じゃないセリスを咎めるマリさん。
「良いんですよ。此方こそ新しい顧客先のメドが付きましたのでお礼を言いたいぐらいですし」
「そう?」
「ほらねっ!」
良いけどセリス。
その態度は普通は怒られますよ。
……まあ良いが。
「それはそうと二人共遊ばないんですか?」
「「あ~~」」
僕の言葉に歯切れの悪い言葉を発する二人。
二人は僕に指である方向を示す。
この方向は孤児院のメンバーが居る場所だな~~。
「「「「「「「「「「わああああああああああっ!」」」」」」」」」
歓声が凄い。
その歓声に押されて僕は思わずその方向を見る。
とある一角でそれは行なわてれた。
此方は何故か観客が極端に多かった。
何で?
そんな疑問は直ぐ解消されました。
「きゃはははっははははなの~」
「なのなのなのなのなのなのっ!」
カンカンカンカンカンコンカンコンコンカン。
カンコンカンカンコンカンカンカンカンコン。
キキとキルが高速で打ち合ってる。
最早ピンポン玉の音だけしかしないんだが……。
球とラケットを握ってるはずの手が見えません。
もはや卓上では何をやってるのかすら不明です。
……というか新しい踊り?
「分身打ちっ!」
「何のっ! シスター式完全防御っ! 及びカウンター」
カンカンカンカンカンカンッ!
カンカンカンカンカンカンッ!
明らかに卓球の音でないよね!
最早人の動きでないよねっ!
というかピンポン玉は何であんな速さで飛んで無事なんだっ!
サラが打った球が分身して無数に増えたピンポン玉を全て跳ね返すシスター。
と言うか二人の身体速度が速すぎて残像が生み出される。
実体分身っ!
二人で遊んでいるはずなのに互いに十数人と組んで遊んでるみたいだ。
というか音速を超えてないよね?
それを楽しそうに見てるアカ、クレナイ、ルージュ、シンク、エンの五人。
このドラゴン達五人は参加する気が無いみたいだな。
串焼きと旅人の木に入ってる飲み物を持って観戦モードだ。
何で周りに被害が出ないんだろう?
……こんなの卓球でないやい。(白目)
もう一角を見るとではクリスとサキ姉さんが遊んでいた。
うん。
普通の卓球だ。
普通に打ってる。
なのに何だこの違和感は?
まともな卓球をやってるはずなのに安心できねええええええっ!
「必殺っ! 気功強化弾がな」
ゴスッ!
クリスが叫びながらピンポン玉に気を纏わせ解き放つ。
「腐……甘いの炎熱カウンターっ!」
ガゴンッ!
それを魔力の炎で纏わせたラケットで撃退するサキ姉さん。
「だあああああああがなっ!」
「腐腐腐腐腐腐腐っ!」
ゴンガンゴンっ!
ガゴンッ!
ドオオオオオオオオオオンッ!
速度こそ普通だが威力が違う。
気と魔力の篭ったピンポン球に原型を留めない卓球台。
作ったばっかりなのに……。(泣く)
「すげえええええっ!」
「迫力あるううううっ!」
「ひはははっはははっ!」
「わあああああああっ!」
「良いいいぞおおおっ!」
「ああ、おしいっ!」
「そこだっ!」
「シスターっ! そこだっ!」
「がんばれっ!」
観客の応援が凄いことになってる。
盛り上がってるね。
盛り上がってるのは良いけど……。
「こんなの卓球じゃないよ~~」
涙を流しながらイヤイヤと首を振るだけの僕だった。(虚ろな目)
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